ニュース 2018.08.25. 11:00

100回目の夏に幕…近年の「優勝投手」と「準優勝投手」のその後

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98年の甲子園閉会式後、ナインから胴上げされる横浜・松坂(C)KYODO NEWS IMAGES

夏の甲子園優勝投手のその後


 大阪桐蔭が高校野球史上初となる2度目の甲子園春夏連覇を成し遂げ、幕を閉じた第100回目の夏の甲子園。史上最多56チームが参加した節目の大会は、メモリアルにふさわしい熱戦の連続であった。

 中でも脚光を浴びたのが、秋田の公立校・金足農の快進撃だ。下馬評はさほど高くなかったなか、大黒柱・吉田輝星の快投もあって強豪校・名門校を次々に撃破。最後は“最強世代”と謳われる大阪桐蔭を前に屈して準優勝となったものの、その戦いぶりは旋風を巻き起こした。

 そこで今回取り上げたいのが、「甲子園優勝投手は大成しない」というジンクス。いつからかポッと湧いてきた説は、毎年のように甲子園の前やドラフト会議の前に取り上げられるものの、何がキッカケでどうして広まったのかは定かではない。

 というわけで、ここでは過去20年の「夏の甲子園・優勝投手」のなかで、その後NPB入りした投手に注目。通算成績をまとめてみた。


【夏の甲子園・優勝投手のその後】
▼ 1998年 松坂大輔(横浜→西武)
[NPB通算] 214試 113勝63敗1セーブ 防2.95
[MLB通算] 158試 56勝43敗1セーブ・3ホールド 防4.45

▼ 1999年 正田 樹(桐生第一→日本ハム)
[通算] 123試 25勝38敗4ホールド 防4.70

▼ 2001年 近藤一樹(日大三→近鉄)
[通算] 249試 37勝52敗2セーブ・42ホールド 防4.55

▼ 2005年 田中将大(駒大苫小牧→楽天)
[NPB通算] 175試 99勝35敗3セーブ 防2.30
[MLB通算] 126試 61勝32敗 防御率3.61

▼ 2006年 斎藤佑樹(早稲田実→早稲田大→日本ハム)
[通算] 76試 15勝24敗 防4.33

▼ 2010年 島袋洋奨(興南→中央大→ソフトバンク)
[通算] 2試 0勝0敗 防0.00

▼ 2012年 藤浪晋太郎(大阪桐蔭→阪神)
[通算] 122試 47勝40敗 防3.24

▼ 2013年 高橋光成(前橋育英→西武)
[通算] 39試 13勝18敗 防4.18

▼ 2014年 小笠原慎之介(東海大相模→中日)
[通算] 54試 12勝20敗 防4.22

▼ 2016年 今井達也(作新学院→西武)
[通算] 9試 3勝3敗 防5.33

▼ 2017年 清水達也(花咲徳栄→中日)
[通算] 2試 0勝0敗 防御率9.00


 『大成しない』というのをどこで線引きするかにもよるのだが、よくその理由として挙げられるのが「甲子園優勝を経験した200勝投手」が野口二郎と平松政次の2人だけであり、100勝でも尾崎行雄、野村弘樹、桑田真澄、松坂大輔、日米通算で田中将大の5人しかいないという点が挙げられる。

 そこで新しい力に期待したいところではあるのだが、近年の甲子園史のなかでも鮮烈なインパクトを残した斎藤佑樹や藤浪晋太郎といったところでさえも、いまひとつ物足りない成績となっている。将来のエース候補たちが台頭してくるまでは、このジンクスを払拭するのが難しそうだ。


“準優勝”投手は…?


 では、決勝戦で涙を飲んだ“準優勝投手”だとどうなるか。「優勝投手は大成しない」説から派生して「準優勝投手の方が大成する」といった向きもあるが、果たして結果は…。


【夏の甲子園・準優勝投手のその後】
▼ 1999年 岡本直也(岡山理大附→横浜)
[通算] 13試 0勝0敗 防12.66

▼ 2001年 竹内和也(近江→西武)
[通算] 一軍登板なし

▼ 2001年 島脇信也(近江→オリックス)
[通算] 一軍登板なし

▼ 2003年 ダルビッシュ有(東北→日本ハム)
[NPB通算] 167試 93勝38敗1ホールド 防1.99
[MLB通算] 139試 57勝45敗 防3.49

▼ 2004年 福井優也(済美→早稲田大→広島)
[通算] 109試 29勝36敗 防4.51

▼ 2006年 田中将大(駒大苫小牧→楽天)
[NPB通算] 175試 99勝35敗3セーブ 防2.30
[MLB通算] 126試 61勝32敗 防御率3.61

▼ 2007年 野村祐輔(広陵→明治大→広島)
[通算] 147試 64勝43敗 防3.26

▼ 2010年 一二三慎太(東海大相模→阪神)
[通算] 一軍登板なし

▼ 2015年 佐藤世那(仙台育英→オリックス)
[通算] 一軍登板なし


 こうして振り返ってみると、「準優勝投手の方が大成する」とは言い難い成績。球界のエースとして海を渡ったダルビッシュや、3年夏が準優勝だった田中のインパクトが強いため、その印象が独り歩きしてしまった感が強い。

 高校球界を席巻し、聖地でどれだけ輝きを放ったとしても、プロの世界で成功できるかどうかは分からない。栄光を掴んだ男たちはプロでも再び輝かしい実績を残すことができるか。そして、今年聖地を沸かせた大阪桐蔭の柿木蓮と金足農の吉田輝星はこれからどんな道を歩むのか。「甲子園優勝投手」と「準優勝投手」の“その先”に注目だ。



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