レイズのヤーブロー

◆ “最初に投げるリリーバー”

 現地時間9月8日(日本時間9日)、本拠地でオリオールズに10-5で勝利したレイズ。これで今季の成績は77勝64敗。決して恵まれているとは言えない財政状況のなか、資金力と戦力に長けたレッドソックス、ヤンキースに次ぐア・リーグ東地区3位と奮闘を見せている。

 そのレイズだが、今季はある“起用法”が注目を集めている。それが「救援投手を先発させ、1~2イニングで本来の先発投手に継投する」という戦略だ。

 今季のレイズは16人を先発マウンドに送っているものの、その半数近くが本来リリーフの投手。たとえば、5月のエンゼルス戦ではセルジオ・ロモの“2試合連続先発”が話題に。1試合目は初回を三者凡退に抑えて降板し、翌日は1回1/3を無失点で切り抜け、“本当の先発投手”へとバトンを渡している。

 ロモ以外にも、今季49試合に登板しているライン・スタンエックはほぼ半分の24試合が先発登板。最長イニングも2回と、“最初に投げるリリーバー”として定着している。

◆ 新人王候補も…?

 レイズのエース格は25歳のブレーク・スネル。今季は18勝5敗で防御率も2.06とサイヤング賞クラスの活躍を見せている。しかし、このスネルに続く先発投手がなかなかおらず、そこで採った策がリリーフ投手の先発起用だった。

 特徴的な傭兵術が光るレイズのなかで、新人王候補に名乗りを挙げている投手がいる。26歳ながら今季がメジャー1年目のライアン・ヤーブロー。今季は34試合に登板して14勝5敗、防御率3.78という成績。数字だけで見ればミゲル・アンドゥハー(ヤンキース)や大谷翔平(エンゼルス)らとともにア・リーグ新人王候補と言えるだろう。

 しかし、このヤーブローも14勝をマークしていながら先発したのは6試合だけ。残るは試合序盤からのロングリリーフとなっている。27試合のリリーフ登板のうち、10試合は5イニング以上を投げており、実態は2番手で投げる“先発リリーバー”なのだ。

 ヤーブローは今季開幕からこの起用法で勝ち星を重ね、ここまでの投球イニングは133回と1/3。14勝のうち7勝は5回未満の投球回で挙げたものとなっている。もちろん働きぶりとしては評価されて然るべきなのだが、前例がないだけに難しいところだ。

 奮闘するチームのなかで、1年目から難しい役割を託されているヤーブロー。今後も白星を重ね、新人王争いを盛り上げる存在となるか。注目が集まる。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

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