ニュース 2018.09.17. 11:30

選手生命に影響する身近な「成分」の怖さ【深澤弘のショウアップナイターヒストリー】

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楽天のアマダー

アマダーのドーピング


今週は、ドーピングがどういうものかをお話していきたいと思います。

だいぶ前になりますが、アマダー選手(楽天)の体内からクロルタリドン、フロセミドという利尿剤が検出されました。これがドーピング違反ということで、8月9日から来年の2月8日まで、6カ月間の出場停止となりました。

6月13日に仙台で行われた楽天-中日戦後に採尿して検体を採って、7月23日に分析機関から2種類の薬物が検出されたという報告がありました。7月30日に楽天球団の立会いの下でNPBはアマダー選手の弁明を聞きました。

アマダー選手は、「絶対俺は何も、そんなものは飲んでいない。全然心当たりがない」と必死に弁解したんですが、とにかくこれは一切もう弁明の余地がないんです。こういうものが出てしまった以上はどうしようもない。


利尿作用がNG!?


アマダーはメキシカンリーグでプレーしていて、2016年に楽天に入団。今年シーズンは春先不調でしたが、7月に月間11本塁打を放ち復調気配を見せた矢先、この検尿の騒ぎですから…。『やっぱりやっていたのか』、『だからホームランが出たんだ』といった声もあがり、アマダーの好調と検尿騒ぎが重なってしまいました。

球団としてはアマダーを現在のところ自宅謹慎処分にしております。アマダーの体内から検出されたクロルタリドン、フロセミド、この2つの薬は直接筋肉を増強、あるいは興奮剤ではないんですけれど、利尿作用がある。

つまり興奮剤とか筋肉増強剤の作用を消す力があるんですね。以前もやっていて、それを消すためにこの薬を飲んだんではないかというような疑いもあるわけです。


薬物検査の裏側は?


NPBのアンチドーピング調査委員会は、薬物の使用がないかを常に監視しています。いつ来るのかは分からないんですが、3人くらいの検査チームが球場を訪れます。球場に着いてからは目立たないように静かにしていますが、5回にゲームが成立したのを見て、その球団のその時の対象になっているチームの責任者のところへ調査委員が行って、薬物検査の対象になっているということを宣告します。

試合終了後に、全選手の検尿をして、それを国が監視している部門に出して検査を行います。オフィシャルにやるので、絶対に避けることはできません。

滅多なことでクロというのは出ないんですが、今回は7年ぶりにアマダーが引っかかったわけです。本当に悪意があって、この薬物を摂ったかどうか、まったく悪意がなくて知らない間に摂ったかどうか、これもあるんですけれど、知らない間だから許すというわけにはいかないんです。


ペナルティは!?


譴責処分、出場停止10ゲーム以下、出場停止1年以下、あるいは無期限出場停止、主な処分があってまだ正式にはアマダーには下されていないんですが、この内の1つが下されると思うのです。

また、球団の管理が不十分の場合は、球団に対して1000万円の罰金を科すこともあります。NPBはこういったことを新人研修会、あるいは春のキャンプに、NPBの薬物担当している人たちがキャンプを回って全部知らせます。

新人研修会の時に新人に渡す禁止薬物のリストを私も見たことありますが、『へーこんなものがある』というよりは、『何だこりゃあ?』という知らない薬ばかりです。ですから余程薬というものを飲む時には慎重にいかないと、アマダーがどうか分からないけれど、こういう結果が出て来てしまうんです。


かつてはガトームソンも…


またアマダーとは別に、2007年8月に当時ヤクルトのピッチャーだったガトームソンから禁止薬物が出ました。

ガトームソンは「絶対に飲んでいない。サプリも飲んでないし、何にも飲んでない。何で出るんだ?」ということで、本当に…。これはもういかにも彼の弁明を見ていると、本当に何でだろう?という風に、彼も必死に弁解しました。

薬事委員会が根気良くすべてを検査して分かったんですが、彼が日常で使っていた養毛剤の中に、その成分が発見されました。養毛剤でもとにかく体内に入ればそれは罪となるんです。


ロス五輪の悲劇


野球とは関係ないんですが、ロサンゼルスオリンピック、日本の男子バレーボルチームの選手が1人、風邪を引いてしまった選手がいました。『少し熱もある』と言って、簡単に風邪薬を飲むと、禁止薬物が入っているといけないので、日本から一緒に着いて来たトレーナーと相談。これなら大丈夫だろうということで、トレーナーが持って行った漢方薬を使ったんですね。

そうしたら、それに入っていた成分が引っかかって、選手とそのトレーナーはロサンゼルスのオリンピックの選手村を追放されるという事件が起きました。

2020年の東京オリンピックを前に、世界中が薬物について非常に神経質になっています。トレーナー、選手、ドクター、まったく隙なく念には念を入れて、薬物を扱う必要があると思いますね。

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