結局はベテラン勢が「中心」に…
10月に入りペナントレースも最終局面に突入し、両リーグとも順位が確定しつつある。セ・リーグを見ると、広島が球団史上初の3連覇を達成し、黄金時代到来を予感させる戦いぶりを見せた。
広島の野手を見ると、精神的支柱でもあったベテランの新井貴浩は今シーズン限りで引退を決意。しかし、丸佳浩、鈴木誠也といった若手・中堅どころがしっかりとチームを支えてきた。投手陣も同様に、2016年に黒田博樹が引退してから大瀬良大地というエースが育った。もちろんその他にも勢いのある選手は多く、投打とも、みごとに「世代交代」を果たしたと言っていいだろう。
一方で苦しい戦いを強いられたのが阪神だ。現時点でまだ3試合を残しているが、すでに単独最下位が決定。これは実に、2001年以来17年ぶりのこと。今シーズンは大砲候補のロサリオが完全に不発。糸井嘉男、福留孝介といったベテラン勢が野手陣を引っ張ってきたが、568得点、チーム打率.253はともにリーグ5位と得点力不足に泣いた。
▼ 今季の先発出場試合数上位4名
136試合:糸原(25歳)
119試合:糸井(37歳)
118試合:梅野(27歳)
112試合:福留(41歳)
投手陣を見ると、616失点、チーム防御率4.04はともに巨人に次ぐリーグ2位と奮闘した感がある。しかし、メッセンジャー、藤川球児、能見篤史、桑原謙太朗と30歳以上のベテランに頼っている部分が多かったこともまた事実だ。
このように、今シーズンの阪神は野手、投手ともにチームの中心はベテランだった。金本監督の就任1年目にどんどん起用された若手選手たちも思ったほど機能せず、若手の突き上げはあまり見られなかったというのが、正直なところだろう。
2017年ドラフト組への期待
しかし、来シーズンに向けて明るい話題もある。ドラフト4位ルーキーの島田海吏が、10月に入りスタメンで起用され初安打、初打点を記録。また中堅の守備でも俊足を生かし、守備範囲の広さも見せてくれた。今シーズン、金本知憲監督は中堅を固定することができなかっただけに、赤星憲広の後継者として期待がかかる島田の活躍は嬉しいだろう。
▼ 今季の先発センター
38試合:俊介(31歳)
35試合:中谷(25歳)
30試合:高山(25歳)
また、矢野燿大二軍監督が指揮を執るファームがウエスタン・リーグを制しファーム日本選手権に出場、一発勝負のその試合で巨人を倒し12年ぶりのファーム日本一に輝いた。
MVPに輝いたのは、大卒ルーキーの熊谷敬宥、優秀選手賞にも同じく大卒ルーキーとなる馬場皐輔だった。仙台育英高時代のチームメートが、ファームとはいえ日本選手権で結果を残し来シーズンへのアピール。
島田、熊谷、馬場と昨年のドラフトで獲得した大卒ルーキーたちがシーズン終盤に結果を残したことは、来シーズンに向けた収穫と言えるだろう。秋季キャンプ以降、これまでチームを支えてきたベテランたちとレギュラー争いを繰り広げ、実力でポジションを勝ち取りたいところだ。
阪神の若手選手にとっては、定位置確保に向けたこれ以上ないチャンスであり、それは終盤に入って存在感を見せ始めた2017年ドラフト組だけではない。“超変革”の名のもとに、金本監督の就任1年目に新人王を受賞した高山俊や板山祐太郎、江越大賀。昨シーズン20本塁打を放った中谷将大など、期待されていた若手は他にもいる。
前日の試合で自打球が目に当たり負傷交代を余儀なくされたが、プロ入り2年目の糸原健斗はここまで全試合に出場し、打率.292と結果を残している。大山悠輔も一時の不振を脱し、8月(.343)と9月(.415)は好成績を残した。投手陣も藤浪が苦しみながらもかつての輝きを取り戻そうと奮闘している。2017年ドラフト組に加え、これまでに育ちつつあった選手たちもしっかりと戦力として機能すれば、選手層は必ずや厚くなるはず。17年ぶりの最下位という悔しさを糧に、逆襲を見せる阪神に期待したい。