◆ 16年目での一塁挑戦、2位躍進の立役者
75勝66敗2分けで、リーグ2位に食い込んだ今季のヤクルト。クライマックスシリーズでは3位・巨人に屈したが、球団ワーストの96敗(45勝2分け)を喫した17年シーズンから、劇的な変化を遂げた。
光ったのは力強さを増した攻撃陣。チーム打率.266はリーグ1位、658得点も広島に次ぐ2位だった。山田哲人、青木宣親、バレンティンらとともに、相手投手の脅威となった坂口智隆。今年34歳を迎えたリードオフマンは、16年目にしてキャリア最高のシーズンを過ごした。
チームが低迷した過去2年、2シーズン連続で155安打を放った坂口。しかし今季の開幕前は、レギュラーが確約されているわけではなかった。外野陣は中心選手であるバレンティンと雄平に加え、青木が7年ぶりに古巣復帰。坂口は2月の春季キャンプから、本格的に一塁コンバートに着手した。
キャンプ中は「中学生時代以来」と言うファーストミットを手に、日々奮闘。小川淳司監督は当初「何かあったときの準備」と話していたが、坂口は高い適応力を発揮しながら実戦を積み重ねた。
そしてDeNAとの今季開幕戦。坂口は「6番・一塁」でスタメンに名を連ね、5打数4安打2打点の活躍でチームに初勝利をもたらした。以降も一塁、外野と複数ポジションを兼務。チーム戦術の幅を広げるユーティリティー性を発揮しながら、チーム3位の139試合に出場した。
◆ 打率、出塁率、OPSはキャリアハイ
守備の不安もありながら、打撃成績は悪化するどころ良化した。打率.317は、オリックス時代の09年と並びキャリアハイ。出塁率は16年目にして初めて4割を超え(.406)、OPS(出塁率+長打率).800も自己最高だった。
オリックス時代は11年に175安打で最多安打のタイトルを獲得。レギュラーに定着した08年以降は、4年連続でゴールデングラブ賞を受賞した。しかし、12年以降は故障に苦しみ低迷。15年オフの契約交渉で古巣と折り合いがつかず、自ら自由契約を申し入れる形で16年からヤクルトのユニフォームに袖を通した。
新天地で輝きを取り戻し、16年155安打、17年155安打、そして今季161安打と、3シーズンで471安打を積み重ねた。逆境に立たされながらも、見事に蘇った不屈のバットマン。その復活劇に、改めて賛辞を送りたい。