丸の行方は…?
日米野球も終わり、いよいよ本格的なオフシーズンが訪れた野球界。各チームの視線はすでに来季へと向けられている。
ストーブリーグの目玉といえば、やはり“FA移籍”だろう。中でも今オフの目玉候補として注目を集めているのが、広島の丸佳浩だ。
2007年の高校生ドラフト3巡目で広島に入団した左の外野手。来年4月で30歳になる。プロ4年目の2011年から頭角を現すと、ここ3年は中軸としてチームを牽引。今季は打率.306にキャリアハイを大幅に更新する39本塁打を記録。長打率と出塁率をあわせたOPSは驚異の1.096をマークしており、球界を代表するスラッガーへと成長を遂げた。
2年連続リーグMVPも有力視される男だが、今オフにFA権の行使を宣言。原辰徳監督が3度目の登板となる新生・巨人や、丸の地元・千葉に本拠を構えるロッテが早くから熱心な姿勢を見せている。来季は一体どこでプレーをするのか、その決断に注目が集まっている。
選択肢の中には広島残留というカードも残っているのだが、これまで多くの選手を“見送ってきた”チームだけに、ファンの中には「(残留という)期待は持たないで待つ」というスタンスの方も多い。むしろ早くも来季に目を向けて、「丸の移籍を機に野間(峻祥)の一本立ちを」や「外野の枠が空けば(サビエル・)バティスタを使う機会も増える」といった前向きな意見も多く見られたのが印象的だった。
▼ 広島をFAで退団した選手
<国内移籍>
川口和久(巨人/1994年)
江藤 智(巨人/1999年)
金本知憲(阪神/2002年)
新井貴浩(阪神/2007年)
大竹 寛(巨人/2013年)
木村昇吾(西武/2015年)
<海外移籍>
黒田博樹(ドジャース/2007年)
高橋 建(ブルージェイズ・マイナー/2008年)
※()は移籍先と移籍した年
人的補償が揃ってブレイク
優秀な選手を育成して送り出し、すると空いたポジションにまた優秀な若手が出てくる...といったサイクルを続けてきた広島というチーム。特に良く育つ素材を見つけてくるスカウト陣の“眼力”はよく取り沙汰されるが、実はFA移籍の補償を選ぶ際の“眼力”も優れている。
過去のFA移籍の際に、広島が「人的補償」を求めたのは2度。新井貴浩(→阪神)の時と、大竹寛(→巨人)の時だ。新井の時は一軍出場が30試合ほどだった赤松真人を獲得し、大竹の時には一軍出場13試合で未勝利だった一岡竜司という若い選手を指名した。
すると、赤松は広島移籍初年度の2008年からいきなり128試合に出場。打率.257で7本塁打、24打点に12盗塁とブレイクを果たすと、そこから3年連続で100試合以上に出場。2010年にはゴールデングラブ賞も受賞した。特にその年の8月に見せた「フェンスをよじ登っての本塁打キャッチ」は大きな話題を集め、その映像がアメリカのスポーツニュースでも紹介されるなど、一気に赤松真人の名を世に知らしめるキッカケとなった。
以降は代走・守備要員としての起用が増え、昨年胃がんの手術を受けた影響からここ2年は一軍出場なし。それでも、今季はファームで55試合に出場を果たすなど、完全復活へ向けて着実に歩みを進めている。
巨人からやってきた一岡も、加入初年度の2014年から31試合に登板。プロ初勝利含む2勝を挙げて負けなしの2セーブ、16ホールドで防御率は0.58という素晴らしい活躍を見せた。
以降もリリーフ陣の一角として定着し、昨季・今季と2年連続で59試合に登板。広島移籍後の5シーズンで200試合以上に登板を果たし、リーグ3連覇中のチームに欠かせない存在となっている。
「人的補償」として獲得した2名がいずれもブレイク…。こうした成功例があるだけに、もし仮に丸が移籍を決断した場合、広島は“どんな補償を要求するのか”という新たな注目ポイントが浮上してくる。
なお、今季の丸の推定年俸は2億1000万円。Aランクと見られており、他球団への移籍となった場合、広島は金銭補償か、金銭プラス人的補償を選択することができる。人的補償を求めない場合は「旧年俸の80%にあたる金銭」、すなわち1億6800万円(推定)を受け取ることになり、人的補償を求める場合は28名のプロテクト名簿から漏れた選手1名と「旧年俸の50%にあたる金銭」を受け取ることになる。
丸に限らず、浅村栄斗や炭谷銀仁朗(ともに西武)、西勇輝(オリックス)といった注目株の多い2018年のFA市場。人的補償も含め、選手の“移動”から目が離せない。
【FA補償おさらい】
▼ Aランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位1位~3位)
・人的補償 + 年俸の50%相当の金銭
or
・年俸の80%相当の金銭
▼ Bランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位4位~10位)
・人的補償 + 年俸の40%相当の金銭
or
・年俸の60%相当の金銭
▼ Cランク(外国人選手を除くチーム内の年俸上位11位以下)
補償の必要なし