エンゼルス・大谷翔平
 “アメリカン・ドリーム”をその手に――。
自由の国・アメリカは野球選手の年俸もケタ違い。
毎年オフの時期になると、注目選手に対しては
複数年で総額100億円を超えるような“超大型契約”も珍しくない。
 “野球とお金”をテーマに展開してきた“グラゼニ特集”
今回はそんなMLBの“お金事情”に注目。
球団の考え方や近年のトレンドから、
日本とはまるで違う年俸のヒミツに迫る。

◆ 大谷の契約、安すぎ…?

 2017年の12月、日本の新たな怪物が世界への第一歩を踏み出した。大谷翔平がロサンゼルス・エンゼルスと契約合意――。あれから1年、アメリカでも“二刀流”旋風を巻き起こし、日本人史上4人目となる新人王にも輝く。

 1年前、大谷がエンゼルスと契約を結んだ時、話題になったのがエンゼルスと結んだ契約が格安だったこと。契約金は231万5000ドル(約2億6000万円)、年俸はメジャー最低年俸の54万5000ドル(約6100万円)。日本ハムでの最終年には3億円に迫っていた年俸が、メジャー移籍でまさかのダウン。“格安すぎる!”とたちまち話題になった。

 これは、『新労使協定』によって25歳未満の海外選手の契約に上限が設けられたため。このような規則がなければ、大谷は長期契約を結び、総額2億ドル(約225億4640万円)近いお金を手にできるだろうとみられていた。

 何とも不条理なルールだが、メジャーリーグ機構と選手会側に立てば、無茶な規則を押し付けているというわけではないことが分かる。

◆ 3年目までは“抑えめ”?

 “メジャーリーガー”が高額な年俸を手にしていることは事実だが、実は最初の3シーズンまではその額は抑えられていることが多い。

 メジャーでは、アクティブロースター(ベンチ入りできる25人の登録選手)または、メジャーの故障者リストに入った日数が3年分に到達すると、初めて年俸調停を申請することができる。それまで、年俸交渉において選手の立場は弱いままなのだ。

 大谷と同じ1994年生まれのカルロス・コレア(アストロズ)を例に取ってみる。ドラフト一巡目1位でアストロズから指名され、480万ドル(約5億3900万円)で契約。20歳でメジャーデビューを果たし、新人王を獲得するも、オフの契約では33万ドル(約3700万円)が51万6700ドル(約5800万円)になった程度の増加に留まった。

 3年目のシーズンだった2017年も、年俸53万5000ドル(約6000万円)で打率.315、24本塁打、84打点の大活躍。素晴らしいコストパフォーマンスでチームのワールドチャンピオンに大きく貢献し、ようやく今季の年俸が100万ドル(約1億1200万円)というところだった。

▼コレアの年度別成績と年俸
2015年(20): 99試 率.279 本22 点68 <33万ドル>
2016年(21):153試 率.274 本20 点96 <51万6700ドル>
2017年(22):109試 率.315 本24 点84 <53万5000ドル>
2018年(23):110試 率.239 本15 点65 <100万ドル>

 ところが、年俸調停申請の権利を得ると話は変わる。今度は今季ア・リーグMVPに輝いたムーキー・ベッツ(レッドソックス)の成績と年俸の推移を見てみる。

▼ベッツの年度別成績と年俸
2014年(21): 52試 率.291 本 5 点 18 <50万ドル>
2015年(22):145試 率.291 本18 点 77 <51万4500ドル>
2016年(23):158試 率.318 本31 点113 <56万6000ドル>
2017年(24):153試 率.264 本24 点102 <95万ドル>
2018年(25):136試 率.346 本32 点 80 <1050万ドル>

 上述したコレアと同じような推移で来ていたが、突然今季の年俸が1050万ドル(約11億7500万円)に跳ね上がっている。その理由が年俸調停の権利を得たためで、ベッツと球団はなかなか年俸交渉で折り合うことができず、なんと公聴会が開かれるまでに発展。最終的にはベッツの希望額が認められ、約10倍もの年俸アップを勝ち取った。

 その分、大きなプレッシャーも背負うことになったベッツだが、今季は打率・本塁打でキャリアハイの数字を叩き出すなど、チームのワールドチャンピオンに大きく貢献。リーグMVPに輝く大活躍を見せ、メジャー屈指のスター選手への階段を駆け上がっている。

◆ 年俸を上げるために大事なこと

 このように、メジャーリーグは階段状に年俸が増えるシステムとなっており、最後にFAの権利を得ることで大きくジャンプアップする。正確には、丸6年間のメジャーリーグ在籍でFAになり、その時に複数球団を巻き込む争奪戦を起こすような“価値”を得ていることが重要になる。

 2018年のメジャーリーグにおける年俸No.1はマイク・トラウト(エンゼルス)で、その金額は3410万ドル(約38億4800万円)。これはトラウトがエンゼルスと2014年に6年総額1億4450万ドル(約161億7000万円)という超大型契約を結んだからだ。

 この時、トラウトにはFAの権利はもちろん、年俸調停の権利もなかった。それでも、エンゼルスはこの若きスーパースターを他球団に獲られることを避けようと、早くに長期契約を結んだ。メジャーでも異例の契約だった。

▼ 2018年MLBの年俸トップ5
3410万ドル マイク・トラウト(エンゼルス/6.1年)
3230万ドル クレイトン・カーショー(ドジャース/9.1年)
3200万ドル ザック・グリンキー(ダイヤモンドバックス/13.1年)
3000万ドル ジェーク・アリエッタ(フィリーズ/6.3年)
3000万ドル デービッド・プライス(レッドソックス/8.2年)
3000万ドル ミゲル・カブレラ(タイガース/14.1年)

※参考:USA TODAY&ベースボール・リファレンス
※カッコ内はメジャーリーグサービス(登録年数)
※2018年1月時点

 もちろん、FAになる前に球団から長期契約のオファーがあっても、自らの市場価値を試したいという理由でFA権を行使する選手も多い。

 ここ数年は特に、球団側が選手を評価するためのデータを重視する傾向が強くなっており、リスクのある長期契約を避ける流れにある。さらに、昨オフはFA市場が停滞し、年が明けても所属先が決まらないFA選手も多数いた。

 そこには、球団がぜいたく税(選手に支払う年俸総額が一定額を超えた場合、超過分に課徴金を課す「課徴金制度」)の支払いを避けるために総年俸を抑えようとし、翌年のFA選手争奪戦に備えて契約を控える傾向があったようだ。そうはいっても、ダルビッシュはカブスと6年契約推定1億2600万ドル(約141億円)で契約した。NPBでは考えられない金額である。

 重要なのはメジャーに定着して試合に出続ける中で、自身の価値を上げていくこと。“アメリカン・ドリーム”を掴むためには、一朝一夕ではいかない。逆に言えばどの球団からも手が挙がるような選手になれば、年間数十億を手にすることだってできてしまうのだ。

◆より良い選手をより安く

 一方、巨額の年俸を支払う球団側に立てば、調停権を手にする3年目終了までは年俸を低く抑えられるため、最も費用対効果が良いのは、優れた選手をドラフトするか、ドラフト外の海外のアマチュア選手や海外の25歳以下のプロ経験者と契約することになる。

 メジャーでは選手の評価にデータを用いることが盛んに行われているが、それは高校生や大学生選手も例外ではない。近年では、最先端機器が備え付けられた球場で試合をする機会も増え、スカウトたちは注目選手の「ボールの軌道」や「回転数」などのデータを収集し、将来的にどれくらい活躍できるかを分析するまでになってきた。

文=谷口輝世子(たにぐち・きよこ/スポーツライター)

◆ アニメ『グラゼニ』 シーズン2

グラウンドには、銭が埋まっている…

プロ野球球団 神宮スパイダースに所属する左の中継ぎ、
サイドスロー投手の凡田夏之介(26歳/独身)は、
高卒8年目で年俸1800万円。
決して“一流投手”とは言えない待遇の選手である。

“30越えたらあと何年できるか分からない”
“引退してコーチや解説者になれる人はほんの一握り”
“引退後は年収100万円台の生活に陥ってしまう人もいる”
“プロ野球選手は現役のうちに稼がなければならない!”

そんな厳しい現実を見据えながらも
凡田はあるフレーズを繰り返していた…

「グラウンドには銭が埋まっている」

凡田は今日もマウンドに登る。
そう、「グラゼニ」を夢見て!


放送日時:毎週金曜・22時30分 ☆再放送多数
原作:森高夕次/漫画・アダチケイジ「グラゼニ」(講談社『モーニング』連載)
監督:渡辺 歩(「ドラえもん」「宇宙兄弟」監督)
シリーズ構成・脚本:高屋敷英夫(「めぞん一刻」「逆境無頼カイジ」シリーズ構成)
キャラクターデザイン:大貫健一(「MAJOR」「ガンダムビルドファイターズ」キャラクターデザイン)
音楽:多田彰文(「ポケットモンスター劇場版」「魔法使いプリキュア」ED主題歌)
音響監督:辻谷耕史(「昭和元禄落語心中」「シムーン」)
音響制作:Ai Addiction(「地獄少女 宵伽」「ノラガミ」)
アニメーション制作:スタジオディーン(「昭和元禄落語心中」「GIANT KILLING」「さんかれあ」)
チャンネル:BSスカパー!(BS241/プレミアムサービス579)・スカパー!オンデマンド

※視聴方法
スカパー!のチャンネルまたはパック・セット等のご契約者は無料でご視聴いただけます。
・公式サイト:https://www.bs-sptv.com/gurazeni/
・公式Twitter:@sptv_gurazeni
製作:スカパー!・講談社


▼ 原作「グラゼニ」とは…
週刊『モーニング』(講談社)にて2010年12月より連載中の漫画「グラゼニ」。
成果主義であるプロ野球を“夢を売る徹底した格差社会”として、
「カネ」をテーマにプロ野球のシビアな世界と生活を懸けたプロ野球選手の日常を描く作品です。

リアルな描写で野球界でのファンも多く、第37回講談社漫画賞を受賞。
その他、「このマンガがすごい!2012」ではオトコ編・第2位に、
「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」では8位にランクインするなど注目を集めました。

この記事を書いたのは

ベースボールキング編集部

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