吉川の挑戦と永久追放
今週は少しテイストを変えてアマチュアのプレイヤーとアメリカの大リーグ。この関係についてちょっとお話をしていけたらなと思います。
先日、社会人野球のパナソニックの吉川俊平というピッチャーに対して社会人野球を統括する日本野球連盟は大リーグ球団との契約などで連盟規定に抵触したとして永久追走という非常に重い処分を課したのを覚えていらっしゃいますか? これは永久追放ですから、選手だけでなく指導者としても社会人野球で活動することは出来なくなりました。
社会人野球選手のプロ球団との契約にあたっては、契約前に社会人選手としての登録を抹消することが義務付けられていますが、吉川選手はその手続きを踏む前にアメリカのダイアモンドバックスのマイナーと正式に契約を交わし、今回の厳しい処分に至った訳です。
また、今年に入ってすぐ、ダイアモンドバックスのスカウトと数回接触していたことが発覚。いわゆる事前交渉というのはプロの場合でもアマチュアの場合でも禁止されており、すべてが処分の対象になった訳です。
吉川投手は関大からパナソニックに入った本格派の右投手だそうですけども、9月5日付けでパナソニック退職の手続きをして正式にダイアモンドバックスの一員になりました。ということは、日本のプロ野球のドラフト制度をパスしてアメリカへわたったわけで、将来的にアメリカから帰って来ても日本では、NPBでは野球をできないという大きな賭けに出たわけです。
中学卒業後に渡米
この吉川投手とは別に、これに似たような件がもう1件あります。大阪市羽曳野市に住む16歳の少年の結城海斗君という中学生が中学を出たところでアメリカのロイヤルズとマイナー契約を結んでアメリカへ渡りました。日本の高校野球、社会人野球、プロ野球をすべてパスして、16歳でメジャーリーグを選んだ訳ですが、契約は7年契約だとか。とりあえずはルーキーリーグのマイナーリーグでメジャーを目指すことになりますけれど、これも大きな賭けです。
もちろん親御さんとか周りの皆と相談したと思いますけれども、子供がよく決心したと思います。7年契約。速くてもメジャーへどうでしょうね5年はかかると思います。5年で上がれればいい方だと思いますが、ルーキーリーグというのは私も見たことがありますが非常に苦しい野球をしなければならないので、彼にとっても我慢が必要だと思います。
この結城君というのは中学3年生で188センチ、球速は140キロ台の右投げで、シニア日本代表としてアメリカオレゴン州のリトルリーグの全米選手権にも参加したことがあるとか。その辺でも目を付けられたのかもしれませんね。
今までにも、日本の野球人で日本のプロ野球を無視してアメリカに渡った選手が何人かいます。その代表が田澤純一投手ですね。彼は新日本石油エネオスのエースとして都市対抗で優勝したほどのピッチャーでしたが、レッドソックスにスカウトされまして3年330万ドルのおよそ3億4千万円で契約してそのままずっと大リーグに居続け、今年の最後はアナハイム・エンゼルスにいました。
しかし、今のところはフリーエージェントになって今後どうするか分からない。今年で32歳。そろそろメジャーでも彼を採用する球団というのが少しずつ減ってきているかもしれません。しかし彼は日本のプロ野球のドラフトを無視していますので、このままでは日本に戻って野球というわけにはいきません。この辺はやっぱり今頃になっていろいろ感じていると思うのですが、しかしお金もけっこう稼いだと思うので、その部分の心配はいらないと思いますけどね。
アマからメジャーへ
その他にも、こういった例は色々ありました。滝川二高から大リーグへ行ったマック鈴木、大リーグで引き取り手がなくなって、帰ってきてから日本のドラフトを経由して2002年にオリックスに2巡目で指名され、その後少し活躍しましたね。
それから多田野数人。彼は立教大学を出てインディアンスへ。その後、あらためて2003年の日本のドラフトを経て日本ハムに入団して現在は独立リーグでやっているそうです。
日本のアマチュア野球選手がいきなり大リーグとなると高い壁がありますけども、もし日本のアマチュアから大リーグ入りすることを自由にすると、とにかくお金の額がもう桁が違いますから、いわゆるアメリカンドリームを夢みてどんどんどんどん日本のプロ野球を無視して大リーグへ行く選手が増えると思うので、この辺はやはり日本のプロ野球としてもガードする必要があると思います。
しかしなぜ近年こういうケースが増えているかという事ですが、大谷選手の加入などで大リーグが非常に身近になってきた事。それから大リーグは契約も年俸も活躍すれば桁が違うのでお金を稼ぐんだったら日本よりもアメリカという気持ちがあること、大リーグを夢見ること。そして、日本には大リーグ球団の名刺を持った人が何人もウロウロしています。
日本のプロ野球のOBで日本のチームのコーチや解説者になれないOBはいっぱいいると思いますが、そういう人たちに大リーグの各球団が目をつけて年俸500万円くらい払って大リーグ何々球団の日本駐在スカウトとして契約し、そういう名刺を刷ってその人を経由して色々日本の野球界の情報をとっている訳です。駐在員として雇われた人も何か仕事をしなくてはいけないので、ということでアマチュアの金の卵を大事に売ろうとする。そういう構図もあることはあるんですね。
なんとなく大リーグと距離が近くなった日本の野球界。その間を取り持つブローカーのような人もいますけれど、決められたルールでアメリカに渡って夢破れたらまだいいです。帰ってきて、日本で色々見せてくれればという事で、できれば長い野球人生を送ってもらいたいと思います。
な お、直接大リーグへ行ってもですね、改めて日本に帰ってドラフトを経由して日本の野球界に復帰できる。年齢的なこともありますけれど、できたらそういう手順を踏んで欲しいと思います。
今週の深澤弘のショウアップナイターヒストリーいかがでしたでしょうか。ショウアップナイターファンクラブでは毎週月曜日に、深澤弘のショウアップナイターヒストリーを更新してまいります。これからも楽しんで頂ける話、それからとっておきのネタを色々お話したいと思います。
(ニッポン放送ショウアップナイター)
※この原稿は11月8日に収録されたものを再構成したものになります。
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