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ベイスターズの公式ドキュメンタリー『FOR REAL』 がリアルすぎる

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誤算続きのシーズンにカメラが“密着”


 ベイスターズはチームに1年間密着し、プロ野球の世界の裏側を赤裸々に映し出すドキュメンタリー作品を、2012年から14年まで「ダグアウトの向こう」として公開。ラミレス監督が就任した2016年以降は球団公式ドキュメンタリー「FOR REAL」として生まれ変わり、プロ野球の世界に潜む、喜怒哀楽を鮮明に映し出してきた。

 昨シーズンの球団初のCS突破から19年ぶりの日本シリーズ進出。“今年こそ”という期待が最高潮に達したシーズンを、キャンプからカメラが追いかけ続け、首脳陣や選手たちの素顔を映し出した密着ドキュメンタリーを、12月14日から始まる劇場公開より一足先に拝見させていただいた。


その文言に偽りなし


 試写会で配布されたフライヤーには、シリーズ史上「最も重苦しく最も息苦しい 一台のカメラが捉えた、真実の姿」というテキストが大きく記されているのだが、その言葉に一切の偽りはない。思い通りに行かない、苦悩に満ちたシーズンの“真実”が、これでもかとばかりにあぶり出されている。球団公式であれば、もう少しオブラートに包みたくなるところを、ありのままに伝えている生々しさ。これぞドキュメンタリー。映すなと言われても撮り続け、使うなと言われても使うあたりに、制作側の本気度もうかがえる。

 先発投手陣の出遅れ、石田健大、今永昇太、桑原将志、濱口遥大らの不調に、ホセ・ロペス、梶谷隆幸、神里和樹、筒香嘉智らの故障。シーズン途中の高城俊人と白崎浩之のトレード、普段は表に出すことのない宮崎敏郎の熱い思いなど……ファンならずとも胸が締め付けられるシーンが続き、首脳陣や選手たちが葛藤する姿がしっかりと収められている。

 後半に進むにつれ、筒香嘉智の“キャプテンの一声”が功を奏し、チームはクライマックスシリーズに向けて快進撃を始める。ジャイアンツとのデッドヒートが繰り広げられるも、143試合目で遂に3位の望みが断たれたときの悔しさに溢れたシーンは筆舌に尽くしがたく、コーチ陣の前で自責の念を口にする指揮官、A・ラミレスの姿も印象的だ。



辻本監督の制作エピソード


 制作した辻本和夫監督は「これまでプロ野球の撮影経験は無く苦労もあったが、みんな温かく迎え入れてくれた。だからこそそうした人たちがシーズン中に深く悲しみ挫折する姿を撮影することが心苦しかった」と胸の内を吐露する。

 特に印象に残ったシーンには「8月に打ち込まれる試合が続いた山崎康晃選手を撮影していた時、ロペス選手が『ヤスアキの気持ちを考えろ』と怒った場面」を挙げ、「精神的支柱と慕われるロペス選手の気遣いに感銘を受けた」という。しかも翌日にロペスは「昨日は厳しい言い方をして悪かった。撮影することはあなたの仕事だとわかっているし、記録することにリスペクトしている」と、わざわざ声をかけてくれたとのこと。

 そして、今回の『FOR REAL』を楽しみにしている方に向け、「表舞台では見ることのできない選手の素顔や真の姿をご覧いただきたい。今年は厳しい結果に終わったシーズンだったので、華やかな舞台で戦う選手たちの、苦しんでいる姿、悩んでいる姿のコントラストがより強く描けている」と注目点を語ってくれた。


来期に向けて


 途中までは重苦しい内容であることは否めない。まるで救いのないフランス映画のようだった。しかし終盤はコーチ契約を結んだ田代富雄打撃コーチ、鶴岡一成、三浦大輔投手コーチも登場し、ラミレス監督が来期に向けて前向きなコメントを発し、希望を紡いだ。

 グラウンドでのプレーだけではなく、その舞台裏では様々なドラマが繰り広げているプロ野球。本来であれば決して公開されることのない、目にすることのない裏側を覗ける「FOR REAL」。ベイスターズファンはもちろん、プロ野球ファンにとっても非常に興味深い内容になっていることは間違いない。


取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)

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