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『災』はみんなで乗り越えて…プロ野球が見せた底力

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試合前に募金活動を行う広島・緒方孝市監督と巨人・高橋由伸監督 (C) KYODO NEWS IMAGES

『今年の漢字』とプロ野球


 その一年の世相を表す漢字一字を決める『今年の漢字』が12日に京都市の清水寺・奥の院で発表され、2018年は「災(サイ/わざわ・い)」に決定した。

 『今年の漢字』は公益財団法人・日本漢字能力検定協会が1995年より開始した企画で、今年で24回目を迎える。漢字の持つすばらしさ、奥深い意義を伝える啓発活動の一環で、毎年年末に一年の世相を表す漢字一字を全国から募集。最も応募数の多かった漢字が『今年の漢字』として、12月12日(=いい字一字)の『漢字の日』に京都・清水寺で発表される。

 「災」は19万3214票の応募の中から2万0858票を集めて1位となった。「全国的に地震、豪雨、台風、猛暑などの自然『災』害の脅威を痛感した一年」であったこと、「『災』害の経験から全国的に防『災』意識が高まり、多くの人が自助共助の大切さを再認識した年」であったこと、「仮想通貨流出、スポーツ界でのパワハラ問題、財務省決裁文書改ざん、大学不正入試問題などの事件が発覚し、多くの人がこれらの出来事を人『災』や『災』いと捉えた」ことなどから、「新元号となる来年に向けて、多くの人が『災』害を忘れないと心に刻んだ年」ということが理由として挙げられている。


「広島に勝利を届けたい」


 振り返ってみると、野球界も「災」の影響を大きく受けた一年だった。

 特に広島は、西日本を中心に襲った「平成30年7月豪雨」の影響を大きく受け、その多大な被害を考慮してマツダスタジアムでの試合開催を自粛。7月9日(月)から7月11日(水)に行われる予定だった阪神との3連戦を早い段階で中止とした。

 7月4日(水)のヤクルト戦を最後に行われていなかったホームゲームは、オールスターを挟んだ7月20日(金)にようやく再開。その日は巨人戦だった。

 広島は3回終了時点で7-0とリードしながら、徐々に追い上げられる苦しい展開。7回に同点に追いつかれると、延長10回には岡本和真に本塁打を許し、ついに8-9と逆転を許してしまう。

 迎えた10回裏、巨人のマウンドにはスコット・マシソン。一死から菊池涼介が四球で出るも、丸佳浩が内野フライに倒れて二死。万事休すか…と思われたなか、守備から途中出場していた下水流昂が1ストライクから外寄りの速球に反応。ライナーで伸びた打球はそのままライトポール際に突き刺さり、逆転サヨナラ2ランとなった。

 劇的な幕切れに、真っ赤に染まったスタンドは狂喜乱舞。傷付いた広島を勇気づける、大きな大きな一勝だった。

 殊勲の一打を放った下水流は、後にこの時の事を振り返り、「豪雨災害後、16日ぶりのホームゲームだったということで、ファンの皆様、県民の皆様になんとしても勝利を届けたい試合でした」と、より強い気持ちで戦っていたことを告白。「本当に苦しい試合でしたけど、広島に勝利を届けたいというみんなの想いが乗った本塁打だったと思います」と語っている。

 この劇的勝利でさらに勢いづいた広島は、9月26日(水)に球団初のリーグ3連覇を達成。「災」を乗り越えて栄冠をつかみ取り、悲願だった“本拠地での胴上げ”も27年ぶりに叶えた。


「野球をやらせてもらっている喜びを」


 9月に北海道地方を襲った「北海道胆振東部地震」の際には、日本ハムも大きな影響を受けた。

 震災直後のホームゲームは中止となり、再開初戦となった9月14日(金)のオリックス戦では試合前に監督・選手らによる募金活動が行われたほか、大型ビジョンの使用を制限するなどの措置で節電にも努めながらの試合開催となる。

 8月26日(日)以来となった札幌ドームでの試合は、日本ハムが4-3で逆転勝利。勝ち越し打を含む適時打2本の活躍を見せた鶴岡慎也は、「いまも不自由な生活をしている方、つらい思いをしている方がたくさんいると思う。僕らは札幌ドームで大好きな野球をやらせてもらっている喜びを、チーム全員で感じてプレーしました」とコメント。

 つづけて、自身の2安打についても、「僕自身、“気持ちで打つ”とかはあまりないんですけど、今日は“気持ち一本”で打ちました」と特別な想いで試合に臨んでいたことを明かし、「僕らは野球でみなさんに喜んでもらうしかないので、一生懸命のこりの試合を戦いたいと思います」と力強く宣言した。


 その後、支援の輪は他球団にも広がりを見せ、各地で試合前に募金活動を行うシーンが見られた。「野球ができる喜び」を感じながら「野球で勇気を」――。『災』を通してプロ野球の底力を感じた一年だった。
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