「世代交代」を見届けることができるか
長きに渡って日本ハムを支えてきた田中賢介が、2019年シーズン限りでの現役引退を表明した。
契約更改後の記者会見で発表された突然の引退宣言。日本ではシーズン前に引退を発表するという文化がほとんどないが、本人は「早い方が気を使わせなくて済む」と説明。異例の早期発表に多くのファンが驚いた。
1999年のドラフト2位で東福岡高から日本ハムに入団した田中。当時は2巡目まで重複抽選があり、日本ハムのほかに西武、中日が獲得の意思を表明。3球団競合の末の入団だった。
2006年からレギュラーとして活躍を見せ、2012年オフにはメジャーリーグにも挑戦する。2年間のアメリカでのプレーの後、古巣・日本ハムへ復帰。その時点で35歳とベテランの域に差し掛かっていたが、衰え知らずの活躍でベストナインを受賞。大逆転優勝を飾った2016年も全143試合に出場を果たすなど、復帰後もチームに欠かせない存在感を見せた。
今季は67試合の出場に留まるも、打率は.295とその技術はまだまだ健在。最後のシーズンといえど、「ファイターズが日本一になれるように最後の1球まで野球選手として全力で頑張っていきます」と意気込みを語っており、来年も活躍が期待できそうだ。
二塁のポジションを掴むのは…?
長らく不動の二塁手として活躍してきた田中賢介。今季も40試合に出場するなど、まだ“次の選手”が出てきたとは言えず、「世代交代」は進んでいない。
今季の日本ハムにおける二塁手の状況を見てみると、以下のようになっている。
▼ 日本ハム・二塁手の出場数
57試合 渡辺 諒
44試合 石井一成
40試合 田中賢介
31試合 太田賢吾
31試合 横尾俊建
21試合 杉谷拳士
5試合 松本 剛
一番多い渡辺でも57試合という混戦模様。そのなかで31試合に出場していた太田をトレードで放出するというサプライズもあったが、中心となるのは渡辺、横尾、そして杉谷の3人か。
杉谷はオーストラリアで自主トレを行うなど精力的な動きを見せており、レギュラー奪取にかける意気込みも人一倍強い。今季は70試合の出場でキャリア最多の3本塁打を放ち、出塁率は前年の.200から.339へと飛躍。ムードメーカーとしてだけでなく、課題の打撃面でも成長を見せた。
一方、「2番・二塁」で開幕スタメンを勝ち取った“おにぎりくん”こっと横尾は、打撃不振に苦しんでレギュラー確保とはならなかった。それでも、今季も74試合で9本のアーチを描くなど、長距離砲としての資質があることは間違いない。ブランドン・レアードの退団が決まった来季こそ、横尾の長打力に期待がかかる。
そして、今季大きく飛躍した渡辺も忘れてはいけない。キャリア最多の60試合に出場を果たし、打率.242、7本塁打を記録。2013年のドラフトで1位指名されたそのポテンシャルが徐々に花開きつつある。
田中賢介を安心して送り出し、花道を飾るためにも、若手たちの奮起は不可欠。2020年以降のチームを支える、“ポスト田中賢介”の出現に期待したい。