首脳陣も北谷に集結、まず「選手の特徴を知る」
6年連続Bクラスと低迷する中日。7年ぶりのAクラスへ、与田剛新監督をはじめ首脳陣の顔ぶれは大きく変わった。その中に加わったのが門倉健二軍投手コーチ。現役時代4シーズン中日でプレーし、指導者として20年ぶりに古巣へ帰ってきた。
第1クール、一軍がキャンプを行う北谷には、一軍の選手、首脳陣だけではなく、二軍の選手、コーチも多数集結していた。与田監督の言葉を借りれば「まずは選手の観察」。門倉コーチも「とりあえず現状というか、みんなの特徴を知る」ために北谷に4日間滞在。一、二軍。投手、野手関係なく、チームの現状把握に努めた。
現在は読谷の二軍キャンプに戻り、投手力底上げに注力している。「怒るときは怒らないといけないし、褒めて伸びるタイプもいる。指導法に『これが正しい』という絶対の正解はない。だからこそ与田監督が言うように、コミュニケーションが大事。指導するにしても、選手の性格を知った上で話す方が円滑に進む」。キャンプ序盤の一軍帯同は、それを知る意味でも有益だったようだ。
門倉コーチは技術面の指導同様、モチベーションの維持も大事にしたいと語る。「シーズンを戦うなかで、一、二軍の入れ替わりは当然ある。そこで落ちてきた選手たちのモチベーションをいかに保ってあげるか。そこを上手くケアしてあげれば1年間の成績、戦い方も変わってくる。その辺を大事にしてあげたいなと思っているし、僕の役目だと思う」。
自身もNPBだけで4球団を渡り歩き、韓国ではプレイヤーとしてだけではなくコーチも経験。多くの選手、首脳陣とコミュニケーションを重ねてきた。「野球は勝ち負けのあるスポーツだから落ち込むこともある。ただ選手たちには、とにかく毎日、楽しくやってほしい。野球を好きじゃないと練習もはかどらないし、そこに良い結果がついてくれば最高。だからこそ、練習でもそういった空気を作ってあげたいし、僕の経験も伝えたい」。
去年までは「ピリピリしていた」
選手、コーチ、そして評論家時代を含め、多くの球団を見渡してきた。近年の中日については「外から見てもピリピリしていた」と指摘する。「それは僕の現役時代もそうなんだけど、それが今の時代、今の選手たちに合うかというと…?…ですね。ときに厳しく、ときに楽しく。程よい緊張感は保ちつつ、メリハリをつけながらやることも大事だと思う。そういう球団もありますから」。
星野仙一監督時代に2年連続2ケタ勝利を記録するなど、緊張感の中で結果を残してきた門倉コーチ。それが中日の伝統であり、その環境下で強かった時代があったことも事実だ。だが、大事なのは現役選手たちのパフォーマンス。そのための空気作りも首脳陣の役目だと語る。
一軍には阿波野秀幸、赤堀元之両投手コーチに加え、村上隆行打撃コーチも入閣。門倉コーチも含め“近鉄色”が強くなったが、「近鉄ってイケイケのイメージが先行してるけど、しっかり練習してましたからね(笑)」。
「今年から首脳陣も大きく入れ替わって、いい空気になりつつある。雰囲気を変えたいと思っていたし、一日一日、選手たちが向上しているように見える」。
5位に終わった2018年の中日。とりわけ投手陣は12球団ワースト防御率4.36を記録し、新シーズンへ投手整備は急務だ。ガルシアが抜け、穴埋め役として新左腕のロメロを獲得したが、そこにドラフト組が加わっただけで補強面での上積みはない。
それでも門倉コーチは「いいピッチャーは多し、モチベーションを保ちながらやっていけば、しっかり戦える投手陣だと思う」とキッパリ。昨季はセ・リーグで最多となる31投手が一軍のマウンドを経験。言い換えれば、それだけ一、二軍の入れ替えが激しかったということだ。
すでに大野雄大には新たなフォークの握り、田島慎二にはプレートの踏み位置変更を提案するなど、技術面でも自らの経験を還元している。現役時代、日韓通算99敗を喫しながらも、それを上回る103勝を手にした門倉健。やられてもやり返せばいい。そのためのケアに最善を尽くす。