苦しいオフを強いられるも…
2年連続の4位を経て、5年ぶりのAクラス入りを目指すオリックス。西村徳文新監督の下で飛躍に期待がかかるが、オフの補強という点ではなかなかうまく行かなかった。
先発の一角である西勇輝はFAで阪神に移り、エース・金子千尋は減額制限を超えるダウン提示を受け入れてもらえず、自由契約を経て日本ハムへと移籍した。2人がオリックスで挙げた通算勝利は「194」。長年チームを引っ張ってきた先発の両輪を一気に失うことになった。
加えて、補強では西武からFA宣言した浅村栄斗の獲得に乗り出すも、なんと交渉のテーブルにつくこともないまま「お断り」の連絡。前代未聞の仕打ちを受け、新生・西村オリックスの船出は険しいものとなった。
しかし、やられっぱなしでは終われない。新助っ人として大砲候補のジョーイ・メネセスと、先発候補のタイラー・エップラーを獲得。残留した4人と合わせ、外国人選手は6人体制となった。
打線には吉田正尚という軸があり、そこに昨季思うような結果が残せなかったステフェン・ロメロやクリス・マレーロ、新助っ人のメネセスといった外国人勢に加え、大砲・T-岡田の復活があれば、一気に他球団を脅かす陣容が整う。
あとは主力2人が抜けた先発陣をどうするか……。西村監督は春季キャンプが始まる前から多くの選手に先発調整を課すなど、新星の発掘に向けた準備を進めてきた。
先発転向の山本を筆頭に楽しみな若手が多数
そんな中で好スタートを切ったのが、高卒3年目の20歳・山本由伸である。
昨季は高卒2年目ながらセットアッパーに定着すると、持ち味である球威抜群のボールを武器に54試合に登板。リーグ2位の32ホールドをマークする大活躍を見せた。
若き右腕はかねてから「先発」への憧れを公言しており、このキャンプでも2月5日のフリー打撃で打者をシャットアウト。力強い速球だけでなくブレーキの効いたカーブも見せるなど、進化した姿と今季にかける意気込みを見せつけた。
山田久志臨時コーチも「エースになってもらいたい」と期待をかける逸材だけに、アクシデントなく調整が進めば開幕ローテの有力候補であることは間違いない。
その他の“期待の若手”としては、榊原翼と山崎颯一郎の名前が挙がる。
榊原は2016年の育成ドラフト2位でプロ入りし、昨季ファームでの好投が認められて念願の支配下登録を勝ち取ったプロ3年目・20歳の右腕。プロ初勝利とはならなかったものの、一軍で5試合に登板。先発も3試合経験している。
山崎も榊原と同じく高卒3年目・20歳の右腕。190センチの長身右腕で、ここまで一軍出場こそないものの、昨季はファームでリーグトップの100回1/3を投球。将来のローテーション候補として高い期待を受けており、今年こそ一軍デビューとプロ初勝利なるか、注目が集まる。
また、西のFA移籍に伴う補償として、阪神から竹安大知という投手が加わった。
こちらはプロ4年目・24歳の右腕で、ここまでの一軍登板は3試合と経験こそ少ないものの、昨季は日本一に輝いた阪神の二軍で14試合に登板し、6勝負けなしの防御率1.30という素晴らしい投球を披露している。
2月10日に行われた紅白戦では、先発して2回1失点とまずまずの投球。西村監督も及第点以上の評価を与えており、新天地での開花に期待がかかる。
ピンチはチャンス!
ローテーション争いという観点では、外国人投手たちも熾烈な競争となることが予想される。
来日2年目になる左腕のアンドリュー・アルバースは、昨季は前半戦だけで9勝を挙げる快投を見せるも、夏場に腰痛のため戦線を離脱。悔しいシーズンとなった一方、コンディションさえ不安なく戦えれば2ケタ勝利も期待ができる実力は示した。
あとは復活を期す来日7年目のブランドン・ディクソンと、新加入・エップラーによる争い。4枚の外国人枠のうち投手にいくつ枠を割くかにもよってくるが、この争いはコンディションや相手関係も見ながらシーズン中も続いていきそうだ。
ほかにも東明大貴や松葉貴大といった復活を期す中堅どころに加え、左ひじの故障でリハビリ中の2年目・田嶋大樹も本格的な投球練習を再開したことが報じられており、一時は絶望的と言われていた開幕に間に合う可能性も出てきた。開幕に間に合わなくとも、復活してくれればチームにとって大きな存在になる。
苦しい台所事情となったのは否めないが、枠が空いたということはチームの先発陣にとっては大きなチャンス。ポジションをめぐる争いの中でチーム内の競争が激化していけば、空いた穴を埋める以上の好結果が出る可能性もある。
5年ぶりのAクラス入りへ向けて、大きなカギを握る先発陣。西村新監督をはじめとする首脳陣はどのように戦力を整え、起用していくのか。今から楽しみだ。