実戦で“大王”の片鱗
日本ハムの王柏融が春季キャンプで快音を連発している。
移籍後初の対外試合となったアリゾナでの韓国・NC戦のデビュー打席でいきなり中越え二塁打を放ってみせると、沖縄に移って初の実戦となった16日の紅白戦では、西村天裕の投じた低めの直球を払うようにバックスクリーン横へと運ぶ。
さらに20日の楽天戦でも安打をマークすると、21日の楽天戦でも2打数2安打。これでNC戦から数えて実戦6試合連続で安打をマーク。シーズン4割超えを2度も記録した“台湾球界の宝”の存在感は日に日に増してきている。
王は入団会見時に日本球界入りを「挑戦」と表現したが、3年ぶりのリーグ優勝、日本一を目指す日本ハムにとっては、この男がすでに打線に欠かせないキーパーソンになりつつある。昨季までポイントゲッターとして主軸を担っていたブランドン・レアードが退団したこともあり、台湾の“大王”にかつての助っ人以上の働きを期待したいところだろう。
近年のプロ野球界の「助っ人」といえば、北中米を中心に太平洋を渡ってくる選手がほとんどだった。そこで今回は王と同じ“アジア出身”の助っ人に注目してみたい。
なお、王の先輩に当たる台湾出身の陽岱鋼(巨人)や林威助(元阪神)らは、日本の高校・大学を卒業した後にドラフトを経て入団しているため、登録上は日本人扱いとなるので今回は除外。ここで取り上げるのはいずれも韓国出身の選手たちとなった。
即戦力として期待されてやって来た4人の“アジア出身助っ人”の1年目を振り返ってみる。
“アジアの大砲”がまさかの二軍降格
まず最初に挙げたいのが、“アジアの大砲”として鳴り物入りでやってきた李承燁だ。
2003年に韓国球界でシーズン56本塁打の新記録を打ち立て、同年オフに27歳でメジャー挑戦を視野にFA宣言。夢のメジャー挑戦とはならなかったが、2004年のロッテ入団から8シーズンに渡り日本球界で活躍した。
母国・韓国で「国民打者」とも称されたスラッガーは、来日2年目の2005年にチームトップの30本塁打を放ちロッテの日本一に貢献。巨人時代の2006年にはシーズン41本塁打をマークするなど、日本でも“左の大砲”として強烈な印象を残したが、そのデビューイヤーは厳しい船出だった。
李承燁は1年目からボビー・バレンタイン監督のもと開幕戦で4番を任されたが、打撃不振でまさかの二軍降格。適応に苦しんだ“ルーキーイヤー”は100試合の出場で打率.240、14本塁打。規定打席にも届かない苦しいシーズンを過ごした。
その3年後の2006年オフには、李炳圭がFA宣言を経て中日に入団。33歳の左打者は「走攻守の揃った外野手」として期待されたが、132試合の出場で打率.262、出塁率も3割に届かなかった。ポストシーズンには勝負強い打撃を見せ、中日の53年ぶりとなる日本一に貢献したものの、2年目以降もレギュラーシーズンでは目立った成績を残せず、在籍3年で退団となった。
▼ 李承燁(イ・スンヨプ)(ロッテ/2004年)
出 場:100試合
打 率:.240(333-80)
出塁率:.328
OPS:.778
本塁打:14本
打 点:50点
得 点:50点
盗 塁:1個
▼ 李炳圭(イ・ビョンギュ)(中日/2007年)
出 場:132試合
打 率:.262(478-125)
出塁率:.295
OPS:.665
本塁打:9本
打 点:46点
得 点:43点
盗 塁:0個
海を渡った巨漢スラッガーがタイトル獲得
さらに最近の「助っ人」へ目を向けると、韓国を代表する右打者二人の名前が挙がる。
2010年にロッテへやってきた金泰均は開幕戦から4番を任され、前半戦だけでリーグトップの73打点をマーク。チームを牽引する活躍を見せていたが、後半戦に入ると急激に失速。オールスター以降は50試合でわずか3本塁打、19打点に終わり、シーズン途中に4番の座を明け渡した。
そして、最も記憶に新しいのがオリックスとソフトバンクで活躍した李大浩だ。29歳の2011年シーズンオフにオリックスへ入団した194センチ・130キロの巨漢スラッガーは、シーズン開幕直後こそ適応に苦戦したものの、5月には月間MVPを受賞。来日1年目から全144試合に出場し、打点王(91打点)のタイトルを獲得した。
ソフトバンクへ移籍した2014年以降も柔軟な打撃は健在で、打線の主軸としてリーグ2連覇に貢献。NPBに在籍した4年間で通算打率.293(2122-622)、98本塁打、348打点と打線の軸として安定した成績を残し、16年からはアメリカに移ってマリナーズでプレーした。
▼ 金泰均(キム・テギュン)(ロッテ/2010年)
出 場:141試合
打 率:.268(527-141)
出塁率:.357
OPS:.786
本塁打:21本
打 点:92点
得 点:68点
盗 塁:0個
▼ 李大浩(イ・デホ)(オリックス/2012年)
出 場:144試合
打 率:.286(525-150)
出塁率:.368
OPS:.846
本塁打:24本
打 点:91点
得 点:54点
こうして振り返ってみると、母国で活躍していた助っ人たちも日本球界では苦しんだ印象。特に1年目から順風満帆だった選手は少ない。
また、1年目から打点王のタイトルを獲得した李大浩も「100打点」の大台には届かず、打点では金泰均の92打点が最多。いずれの選手も「打率.300」「30本塁打」「100打点」には到達できなかった。
王柏融には隣国の先輩たちの成績を上回ることはもちろん、これら節目の記録の達成にも期待がかかる。台湾の“大王”は1年目からどれほどの成績を残してくれるのか。久々にやってきた“アジア出身助っ人”のルーキーイヤーに注目だ。