◆ 白球つれづれ2019~第8回・劇場型監督

 オープン戦の季節がやってきた。これまでのキャンプが鍛錬の時期なら、ここからは、より実戦の結果を求められ、一二軍の振り分けが激化。と、同時に指揮官がどんな野球で今年の勝負にかけるのかを試す時期でもある。

 24日(日)には、沖縄・那覇で巨人と日本ハムが激突した。試合は3対2で巨人が逆転勝ち。4年ぶりに監督復帰した原辰徳には記念すべき復帰初勝利となった。

 この試合、原にとっては逆転の内容に手ごたえを感じたはずだ。ベテランの亀井善行とオリックスから獲得した中島宏之の連打でつかんだチャンスに、2年目の大城卓三が流し打ちの技あり3ラン。大城と言えばルーキーの昨年から非凡な打撃が評価されたものの、今季はFAで炭谷銀仁朗、捕手復帰を宣言した阿部慎之助に昨年までの正捕手格・小林誠司が控え、第4の捕手扱い。このままなら開幕はファームで迎える可能性が高かった。それがこの一発で正捕手争いはさらに激化、場合によっては代打の切り札的な候補にも浮上してきた。

 投手陣も課題の中継ぎにあって、桜井俊貴や大江竜聖ら若手が奮投、使えるメドが立ちつつある。原にとってはニンマリの1日だったに違いない。

 一方、敗れた日ハムの将・栗山英樹にとっても落胆する試合ではない。最も不安視される投手陣にあって、オリックスから移籍の金子弌広と、すでに開幕投手に決めた上沢直之が揃って好投。さらに装いをガラリと変えた打線も台湾の至宝・王柏融が早くも安打製造機の実力を発揮し、2年目の清宮幸太郎も昨年以上の成長ぶりを見せている。こちらも負けて収穫ありの一戦だった。

◆ 原と栗山の魅せる力

 原と栗山。この両監督にはある共通項がある。現役引退後にスポーツキャスターとして活躍、マスコミの世界に身を置いたことで、その操縦術に長けていることだ。今年の野球報道を見ても原巨人と栗山ハムの露出度は群を抜いている。言ってみれば「劇場型」の指揮官だ。

 原が復帰後、最初に驚かせたのは超絶補強だ。FAで丸佳浩、炭谷。他に岩隈久志に中島らを加えて話題性で他球団を圧倒、それだけではない。機動力戦士の養成や丸の二番打者起用など次々と新機軸を打ち出す。スポーツ紙では「原語録」のコーナーまで誕生している。前任の高橋由伸が突如の監督指名という事情もあってか、動きの少ない寡黙な将だったのとは対照的である。

 一方の栗山は、チームぐるみのプロモーションが特徴だ。アリゾナキャンプでは斎藤佑樹vs.清宮の「早実対決」、沖縄キャンプでは吉田輝星vs.柿木蓮の「甲子園対決」で耳目を集める。また、開幕投手に決めた上沢には本を渡して、その中に「開幕は頼んだぞ」とメモを入れておく栗山ならではの細やかな心配りものぞかせる。

 栗山は毎年のオフに野球界の先人の墓参りを欠かさない。西鉄の黄金期を築いた知将・三原脩の墓に手を合わせることで、更なるアイデアとエネルギーをもらうと言う。野球界の知将と言えば野村克也や広岡達朗、森祇晶らが記憶に新しい。とりわけ、野村はID野球という緻密なデータを駆使した名将だが同時に「野村語録」という名言を数多く残して、マスコミの寵児にもなった。栗山はこの野村の教え子でもある。

 過去の「劇場型監督」と言えば長嶋茂雄と星野仙一の名が浮かぶ。こちらは共に原への影響が大きい。いずれも野球界のカリスマ的存在で、原もそこに近づきつつある。いずれにせよ、野球人気が心配される時代。グラウンドだけでなく、明るい話題を振りまくプロデューサーの役割まで監督には期待される。今季からの新監督は原以外に中日・与田剛、阪神・矢野燿大、オリックス・西村徳文、楽天・平石洋介の4人。第3、第4の劇場型は生まれるのだろうか?

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

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