◆ 走攻守で縦横無尽の暴れっぷり

 いよいよプロ野球2019年シーズンの幕が開けた。リーグ4連覇を狙う広島で大きな注目を集めるのは、やはり「3番打者」のポストだろう。3連覇中には、今季から巨人に移籍した丸佳浩が務めてきた不動のポジションであった。

 3月29日の巨人との開幕戦、翌30日の第2戦で3番に起用されたのは西川龍馬。しかし、3月31日の第3戦のスターティングオーダーには西川の名前はなかった。西川は開幕2試合で1安打に終わっていたとはいえ、わずか2試合で見限られたというわけではない。広島首脳陣が開幕オーダーを早々にいじりたくなるほどの男がいたのだ。野間峻祥である。

 その野間はまさに絶好調。しかも、その内容がじつに「らしい」。開幕戦ではボテボテの当たりながら快足を飛ばしてふたつの内野安打を記録。続く第2戦の4回にも遊撃への内野安打を記録すると、7回には右中間フェンス直撃の三塁打を放った。そして、6番から3番に「昇格」した第3戦でも右安打と二塁打を放ち、3戦連続でのマルチ安打となった。

 なんといっても野間の大きな魅力は足である。その足を生かした打撃も好調だが、第2戦では炭谷銀仁朗(巨人)に送球さえさせない完璧なスタートで盗塁を決め、守備でも坂本勇人(巨人)の右中間への当たりを背走しながら好捕。まさに縦横無尽の働きぶりだ。

◆ ファンを楽しませるプレースタイル

 丸が抜けたことによって、今季の野間は「俺がやってやる!」と例年以上に高いモチベーションを持っていることだろう。また、昨季、大きな成長を果たしたことも自信になっているはずだ。大きなストライドでグラウンドを駆け巡る姿からは自信と懸命さ、躍動感があふれ、見ているファンも楽しい。

 たしかに、野間には丸のような長打力はない。これまで「3番・丸」を見慣れていたファンからすれば、クリーンアップとしては物足りなく感じる部分もあるかもしれない。また、丸が抜けてはじめて迎えたシーズンということで、今後も打線については試行錯誤があると見ていい。

 それでも野間には、長距離砲に成長して体が大きくなった丸が失いつつあるスピードという武器がある。丸とはまたちがったかたちでファンを魅了する外野手に成長してくれるに違いない。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)

【プロフィール・清家茂樹】
1975年、愛媛県生まれ。出版社勤務を経て2012年独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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清家茂樹

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