ニュース 2019.04.05. 17:00

江川も上原もできなかった快挙を成し遂げた巨人・高橋優貴投手

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、4日の阪神戦でプロ初登板・初先発・初勝利を挙げた、巨人・高橋優貴投手のエピソードを取り上げる。

「ホッとしてます。野手の方がたくさん打ってくださって、チームも勝利できたのですごくうれしい」

4日に東京ドームで行われた、巨人-阪神戦。開幕2戦目から4連勝中の巨人が、6番目の先発投手としてマウンドに送り出したのは、八戸学院大学出身のルーキー左腕・高橋優貴でした。

東海大菅生高時代は甲子園に出られず、無名の存在だった高橋ですが、大学に入ってから急成長。北東北大学リーグ新記録の301奪三振をマークし、ドラフトでは、根尾(中日)・辰巳(楽天)の“外れ外れ1位”ながら、巨人から1位指名を受けた逸材です。

今年の春季キャンプの際、当欄で、高橋の物怖じしないハートの強さについて触れ、宮本和知・投手総合コーチが「ローテーションの“ロ”の字が見えた」と語った話を取り上げましたが、その後、オープン戦でも結果を出し、本当に6番目の枠をつかみ取った高橋。

初回、2死から糸井に2塁打、大山にフォアボールを与え、いきなり1・2塁のピンチ。並のルーキーなら「どうしよう?」と心乱れてしまうところですが、さすが強心臓ルーキー、まったく動じる気配を見せませんでした。

「調子は悪くないと感じていた。冷静に投げられた」

続く福留を空振り三振に仕留め、初回をみごと無失点で切り抜けたのです。球速は決して速くないにもかかわらず、絶妙のコントロールで、巧妙にストライクゾーンへボールを出し入れ。さらに変則的な2段フォーム……タイミングがつかめない阪神打線は、高橋を打ちあぐね、6回を4安打1失点と、十分すぎる内容でマウンドを降りた高橋。

一方、好調の巨人打線は、高橋と同い年の主砲・岡本がホームランを2発も放ち、坂本勇も3ランでルーキーを援護。今季最多の15安打10得点で阪神を3タテし、5連勝で早くも貯金4、単独首位に立ちました。

そして巨人の大卒新人が「初登板・初先発・初勝利」を飾ったのは、1960年の青木宥明(ひろあき)投手以来59年ぶり。江川も上原もできなかった快挙を成し遂げた高橋は、歴史に名を刻むことになりました。

ローテを埋めてくれる“孝行息子”の出現に、首脳陣もご満悦です。

「二重丸。花丸。今日はめでたいね」(宮本投手総合コーチ)
「いいデビューを飾ってくれた。1歩踏み出したということは2歩踏み出せるチャンスがある」(原監督)


巨人は来週から2週連続で、週5試合の日程が続くため、6番手の高橋はあいにく登板機会がなく、枠を空けるためいったん登録を抹消されますが、原監督の言う「2歩目のチャンス」はすぐに巡ってきそうです。

ところで、高橋の新人離れした、落ち着いたマウンドさばきはどうやって養われたのかというと、その秘密は、彼自身のモットーにありました。それは「決して高望みをしないこと」。

「僕は(大学日本)代表に入ったこともない。上茶谷(DeNA)、甲斐野(ソフトバンク)、松本(西武)、清水(ヤクルト、全員ドラフト1位)と同じ土俵に立ってるのがおかしいくらいですよ」

常に足下を見て、無理なことは決してしませんが、では上に行くための課題は何なのか、それをしっかり分析し、月ごとにテーマを立て、それをクリアしていく……その積み重ねが、プロ初勝利につながったのです。

今年は、全ポジションに競争原理を持ち込むことを明言している原監督。「先発6番手」候補は今村や高田など、他にも大勢控えており、結果を出せないと先発剥奪、となりかねません。

しかしこれまで通り、一歩一歩確実に階段を上がるタイプの高橋は、プレッシャーとは無縁です。このままローテに定着し、2ケタ勝ってくれれば、5年ぶりのV奪回を目指すチームにとって、こんなに心強いことはありません。高橋の次回登板に注目です。

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