日本ハム・斎藤佑樹 (C)Kyodo News

◆ 新連載:「令和」の野球 第2回

 5月1日の新元号「令和」のスタートを前に、日本ハムの栗山監督が新たな野球に挑戦している。

 開幕カードとなったオリックス戦では、4番の吉田正尚対策として、一二塁間に内野手3人が守る変則シフトを採用。メジャーでは珍しくなくなった陣形だが、ここまで大胆な守りを見せた球団は日本では数少ない。1950年代、西鉄ライオンズ(現西武)を率いて知将と呼ばれた三原脩監督が、絶体絶命のピンチに左翼手を三遊間の間に守らせる「内野5人シフト」を敷いた記憶がある。その三原を尊敬する栗山ならではの決断だった。

 その後も「栗山マジック」は続いた。楽天戦ではウィーラー、西武戦では山川穂高ら強打の右打者と対する場面では三遊間を狭め、二塁手が二塁ベース寄りに移動。極めつけは西武・森友哉に対する変則シフトだ。塁上が無走者の場面では、三塁手が左翼の定位置に、それ以外の外野手が右寄りに守る。つまり、三遊間はショートが一人で守っても、外野を4人にする大胆な陣形だ。

 ちなみに、11日現在、打率.432でパリーグの首位打者に躍り出る森だが、本塁打は1本に対して二塁打が7本で三塁打が2本を記録している。長打力では山川やソフトバンクの柳田らに及ばないものの、外野の間を抜く、外野の頭を超す、勝負強い打撃が売り。それならばシングルヒットに目をつぶっても、外野の守りを厚くしてしまえば、長所を消せる。

 加えて、これらの変則シフトは当該打者に、あれこれと考えさせればそれだけで一定の効果を生む。オリックスの吉田が現時点でも1割5分台の不振に喘いでいるのも、開幕カードでの日本ハムの意表を突く守りと無縁ではないだろう。

◆ 試行錯誤の先に

 「野球界の常識って、誰が決めたの? 僕は常に違う考え方もあるのでは、と試行錯誤している。」栗山は今年の戦い方をこう語る。

 投手陣には、先発を3イニング程度に限定して、小刻みな継投に活路を見出す「オープナー」「ショートスターター」と呼ばれる新方式も取り入れている。こちらは、これまで3度試みたが3戦3敗。結果は出ていないが、当面は続ける予定だ。昨年10勝をマークしたマルチネス投手が故障で出遅れたため、先発ローテーションが手薄、苦肉の策に違いないが、従来とは違う取り組みに挑戦していくのが日ハム流である。

 前回の当連載でも触れたように、野球界にも変革の波はやってきている。中でもメジャーの改革は、従来のデータ野球を飛び越してITを駆使したハイテク・ベースボールの様相を呈している。本塁打を生む飛距離と打球角度を測定値から弾き出した「フライボール革命」は、日本の打撃術にも大きな影響を及ぼしている。投手交代の判断基準に測定器によって弾き出されたボールの回転数を用いて決断する時代だ。

 これまでの日本野球は、ともすれば経験則が幅を利かせてきた。指導者も批判や非難を恐れるあまり、無難な道を選択するケースも少なくない。だが、ここへ来てメジャーから発信される新時代の野球は、そんな概念を飛び越している。

 すでに高校生でも160キロ超の快速球を投げられることなど、一昔前には想像できただろうか? 大谷翔平が「二刀流」でメジャーを席巻するなんて考えられただろうか? 常識を疑う。栗山監督が投じた一石が日本球界全体にどんな波紋を呼んでいくか、注視していきたい。(※次回は11日掲載予定)

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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