ニュース 2019.05.01. 11:00

平成のヒットメーカー 歴代の「首位打者」を振り返る

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数々の伝説を残してきたイチロー(C)KYODO NEWS IMAGES

元年~15年:輝く「イチロー」


 31年続いた「平成」がついに終わりを迎え、5月1日から新元号「令和」に突入。新時代の幕開けに期待が高まるなか、まだ実感が沸かないという人も少なくないことだろう。

 今回は4月30日をもって幕を閉じた平成のプロ野球を振り返るべく、過去30シーズンのタイトルホルダーに注目。ここでは“首位打者”にスポットを当ててさかのぼっていく。


 平成最初の首位打者はセ・パともに助っ人が獲得した。セ・リーグは巨人のクロマティ(当時36歳)がシーズンMVPと同時受賞、パ・リーグはオリックスのブーマー(当時35歳)が40本塁打、124打点をマークしながら、打率.322でリーグトップに輝いた。“昭和”の印象がある助っ人が現役晩年に揃って好成績を残し、平成のみならず、2リーグ制後唯一の両リーグ助っ人受賞を果たした。

 平成3年には「平成」にプロデビューした若手がともにリーグトップに輝く。ロッテの大卒3年目・平井光親が松永浩美(オリックス)とのデッドヒートを制して111安打で首位打者に輝くと、セ・リーグでは2年目の古田敦也(ヤクルト)が首位打者を獲得。捕手としては野村克也氏以来、史上2人目の首位打者獲得となった。

 平成6年からは中日・パウエルが外国人選手初の3年連続首位打者という偉業を達成するも、それを遥かに上回ったのがオリックスのイチローだ。同年にNPB史上初のシーズン200安打を突破し、阪神・バース(.389=昭和61年)に次ぐ歴代2位の「.385」という超ハイアベレージで首位打者に輝くと、ここから7シーズンに渡ってリーグトップの座を守り続けた。

 ちなみに、日本プロ野球の歴史のなかで、7年連続で首位打者を獲得したのはイチローただひとり。同一球団からの連続受賞記録もオリックス・イチローが樹立したものだ。

 イチローが平成12年オフに海を渡ってからは、福浦和也(ロッテ)、小笠原道大(日本ハム)といった異なるタイプの偉大な左打者が同タイトルを獲得したが、それでも輝くのが7シーズンに渡って並ぶ「イチロー」の文字。

 こうして数々の記録を樹立してきたイチローは奇しくもこの春、平成最後の年にプロ野球選手を引退した。「いずれ、僕ら後輩が先輩たちの記録を抜いていくというのは、しなくてはいけないことでもあると思うんです」。この言葉の主を越える“後輩”は新時代に現れるのだろうか。


【平成1~15年「首位打者」一覧】
★=シーズン200安打以上

平成元年 .378 クロマティ(巨)
[1989年] .322 ブーマー(オ)

平成2年 .326 パチョレック(横)
[1990年] .338 西村徳文(ロ)

平成3年 .340 古田敦也(ヤ)
[1991年] .314 平井光親(ロ)

平成4年 .331 ハウエル(ヤ)
[1992年] .322 佐々木誠(ダ)

平成5年 .329 オマリー(神)
[1993年] .319 辻 発彦(西)

平成6年 .324 パウエル(中)
[1994年] .385 イチロー(オ)★

平成7年 .355 パウエル(中)
[1995年] .342 イチロー(オ)

平成8年 .340 パウエル(中)
[1996年] .356 イチロー(オ)

平成9年 .335 鈴木尚典(横)
[1997年] .345 イチロー(オ)

平成10年 .337 鈴木尚典(横)
[1998年] .358 イチロー(オ)

平成11年 .369 ローズ (横)
[1999年] .343 イチロー(オ)

平成12年 .346 金城龍彦(横)
[2000年] .387 イチロー(オ)

平成13年 .333 松井秀喜(巨)
[2001年] .346 福浦和也(ロ)

平成14年 .343 福留孝介(中)
[2002年] .340 小笠原道大(日)

平成15年 .340 今岡 誠(神)
[2003年] .360 小笠原道大(日)


平成16年~30年:200本安打と首位打者



 イチロー以来のヒットマン誕生を予感させたのが、ヤクルト・青木宣親だ。

 平成17年に大卒2年目、23歳の若さで当時のセ・リーグ記録を塗り替える202安打を放ち、最多安打と首位打者を同時受賞。同年の新人王にも輝いた。以後、同19、22年と2度「首位打者」に輝いた稀代のバットマンは、同22年オフにアメリカへ渡り、同30年から日本球界に復帰。4月30日時点での通算打率「.329」は、2位のレロン・リー(ロッテ=昭和52~62年)に9厘差をつける堂々の歴代トップ(4000打数以上)である。

 「平成」はイチロー、青木宣親を筆頭に“200安打”の扉を開いた時代でもあった。シーズン130試合制だった平成6年にイチローが210安打をマークすると、その11年後に青木が史上2人目の大台突破。さらにその2年後には青木の同僚であるアレックス・ラミレスが右打者として史上初の快挙を成し遂げた。

 平成22年には青木と首位打者、最多安打争いを繰り広げていたマット・マートン(阪神)が9月23日に史上4人目の達成者となると、その2日後に西岡剛(ロッテ)がスイッチヒッターとして史上初の快挙達成。さらに翌26日に青木が前人未到2度目の200安打を達成し、同一シーズンに3人もの200ヒッターが誕生した。

 その5年後、平成27年には西武の秋山翔吾が216安打を放ち、NPBのシーズン最多安打記録を更新。しかしこの年にパ・リーグの首位打者を獲得したのは、秋山を4厘上回ったソフトバンク・柳田悠岐(.363)だった。実は過去に200安打を達成した6人(7度)のうち、首位打者を獲得したのは約半数の3人(4度)だけ。平成22年のセ・リーグは200本越えの2人が争うという状況だったが、青木が同19年のラミレス、同22年のマートン、柳田が同27年の秋山といった200安打達成者を抑えて首位打者に輝いた。

 ここ数年の首位打者に目を移してみると、昭和最後の1988年世代、いわゆる“ハンカチ世代”が多数名を連ねている。平成27年の柳田、同28年の坂本勇人(巨人)、同29年の秋山、宮崎敏郎(DeNA)、そして同30年の柳田。脂が乗った最後の昭和世代がプロ野球界で躍動している。

 結果的に平成最後のシーズンとなった昨季、キューバにルーツを持つ中日のダヤン・ビシエド(1989年3月10日に生まれ)が、史上初めて“平成生まれ”の首位打者に輝いたが、平成の時代に平成生まれの日本人選手が同タイトル獲得とはならなかった。

 新たに迎える「令和」の時代では、「日本人初」という前書きが必要にはなるが、“平成生まれ”の首位打者を誰が掴み取るのか。こちらの行方にも注目してみたい。


【平成16~30年「首位打者」一覧
★=シーズン200安打以上

平成16年 .337 嶋 重宣(広)
[2004年] .358 松中信彦(ダ)※三冠王

平成17年 .344 青木宣親(ヤ)★
[2005年] .322 和田一浩(西)

平成18年 .351 福留孝介(中)
[2006年] .324 松中信彦(ソ)

平成19年 .346 青木宣親(ヤ)
[2007年] .334 稲葉篤紀(日)

平成20年 .378 内川聖一(横)
[2008年] .332 リック (楽)

平成21年 .322 ラミレス(巨)
[2009年] .327 鉄平  (楽)

平成22年 .358 青木宣親(ヤ)★
[2010年] .346 西岡 剛(ロ)★

平成23年 .316 長野久義(巨)
[2011年] .338 内川聖一(ソ)

平成24年 .340 阿部慎之助(巨)
[2012年] .312 角中勝也(ロ)

平成25年 .333 ブランコ(De)
[2013年] .341 長谷川勇也(ソ)

平成26年 .338 マートン(神)
[2014年] .331 糸井嘉男(オ)

平成27年 .336 川端慎吾(ヤ)
[2015年] .363 柳田悠岐(ソ)

平成28年 .344 坂本勇人(巨)
[2016年] .339 角中勝也(ロ)

平成29年 .323 宮崎敏郎(De)
[2017年] .322 秋山翔吾(西)

平成30年 .348 ビシエド(中)
[2018年] .352 柳田悠岐(ソ)

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