◆ 則本昂大、岸孝之が離脱も踏ん張る投手陣
プロ野球ペナントレースにおいて、序盤の山場であるゴールデンウィークの大型連戦が終了した。セ・パ両リーグとも昨シーズンの広島や西武のように大きく抜け出すチームはなく、現在のところは混戦模様となっている。
パ・リーグに目を向けると、日本一3連覇を目指すソフトバンクが首位をキープ。2.5ゲーム差の2位には楽天、日本ハム、ロッテの3チームが17勝16敗(.515)の同率で並んでいる。なかでも、楽天の奮闘ぶりは目を見張るものがある。
開幕投手に内定していたエースの則本昂大が、右肘の故障で離脱。2枚看板のもうひとりである岸孝之も、開幕戦で左太もも裏に違和感を訴え降板となり、そのまま翌日に登録を抹消されている。岸に関しては、「復帰は近い」との報道もあったが、明確な日程は決まっていないのが現状だ。
このような危機的状況のなか、辛島航や福井優也、さらには釜田佳直といった投手たちがエース格ふたりの穴を埋めてきた。その他にも、勝ち星はついていないものの古川侑利が3試合連続クオリティースタート(QS)を達成し、ローテーション入りに名乗りをあげている。安樂智大も序盤戦では好投を続けていた。
中継ぎ陣では、昨シーズン不振にあえいでいた松井裕樹が復活。守護神に返り咲き19試合で1勝1敗8セーブ、防御率1.80と貫禄を示している。セットアッパーのフランク・ハーマン、高梨雄平らも安定しており、試合終盤も安心できるようになったのは大きい。
確固たるエースふたりが不在でも、その他の投手たちが結果を残しなんとか踏ん張っている。
◆ ブラッシュが4戦連発と本領発揮!
頑張りを見せているのは投手陣だけではない。野手陣も活気づいている。
とくに目を引くのが新外国人選手のジャバリ・ブラッシュだろう。大砲候補として期待されたが開幕から調子が上がらず、4月19日の時点で打率.200、1本塁打と戦力とは言えない状況だった。
しかし、翌20日からは7試合連続安打で勢いづくと、さらに、5月6日からは4試合連続本塁打を放ちついに目覚めた。これまで6番や7番といった下位打線を任されているが、この調子なら本来の構想どおり4番で起用される可能性もありそうだ。
その他では茂木栄五郎が打率3割を超え、浅村栄斗も打率.291(134-39)、8本塁打と結果を残している。主将の銀次も5月の月間打率は3割を超えていて、5月9日のソフトバンク戦では、見事なバスターを決めサヨナラ勝ちに貢献したことも記憶に新しい。
また、出遅れていた今江年晶、そして藤田一也もともに打率3割を超えるなど好調だ。渡辺直人も5月9日のソフトバンク戦で値千金の代打同点本塁打を放ち、健在ぶりをアピール。打席に立つ機会の多くないベテラン勢も結果が出ているのは頼もしいかぎりである。
新人の辰己涼介も頑張っている。開幕一軍スタートだったものの、一時は不調でファーム降格と苦しんでいた。しかし5月3日の昇格後は、8日にサヨナラ打を放つなど、打率.286(28-8)、1本塁打と「一軍の壁」を突破しつつある。
先に触れたとおり、チームは日本ハム、ロッテと並んで2位タイにつけている。対する首位のソフトバンクも、故障者が多く決して万全な状態とはいえない。2枚看板の復帰まで上位争いに踏みとどまることができれば、シーズンの中盤から終盤にかけて優勝争いを演じることもできるはず。
今から6年前——。前回日本一となった2013年は、田中将大(現ヤンキース)の神がかりなピッチングがクローズアップされた。たしかに、田中の力は大きかった。しかし、アンドリュー・ジョーンズやケーシー・マギーといった外国人選手、主力の銀次やベテランの松井稼頭央も含め、チーム全体で勝利をもぎ取ってきたことを忘れてはならない。
「全員野球」で上位進出を目指していく楽天のこれからに注目したい。
※数字は2019年5月10日終了時点