リーグ戦再開から1週間
プロ野球も開幕から3カ月が過ぎ、あっという間に7月戦線に突入。セ・パ交流戦も終わり、いよいよペナントの折り返し地点となるオールスターが近づいてきた。
交流戦が終わり、リーグ戦が再開してからちょうど1週間。各チームが前半戦のラストスパートを仕掛けようというなか、リーグ戦に戻ってキッカケを求めたいのが“交流戦で苦しんだ”選手たち。6試合×3週間という短期間ではあるが、やはり普段と違う相手、普段と違う場所での戦いで調子を崩した選手も当然ながらいる。
これから勝負の後半戦へと向かおうというなか、彼らが復調できるかどうかという点はチームにとって大きな要素になる。ここでは交流戦で苦しんだ選手の「その後」を取り上げてみたい。
▼ セ・パ交流戦の打率ワースト10
.157 清田育宏(ロッテ)
.160 井上晴哉(ロッテ)
.165 近本光司(阪神)
.175 田中広輔(広島)
.182 ソト(DeNA)
.183 坂本勇人(巨人)
.188 内川聖一(ソフトバンク)
.204 大和(DeNA)
.204 筒香嘉智(DeNA)
.204 デスパイネ(ソフトバンク)
※規定到達者のみ
復活が待たれる新・虎の切り込み隊長
今年の交流戦ではルーキーの中川圭太(オリックス)が首位打者に輝いた一方で、苦しんだルーキーもいた。阪神の近本光司である。
兵庫県の社高から関西学院大学、社会人・大阪ガスを経て昨秋のドラフト1位で阪神に加入した24歳の外野手。即戦力と言われた抜群のスピードを武器に開幕一軍を勝ち取ると、1年目から猛虎打線のリードオフマンに定着。5月終了時点で打率3割をキープするなど、新人王候補筆頭と言われるほどの活躍でチームを牽引してきた。
ところが、交流戦に入るとその勢いに陰りが。開幕から突っ走ってきた疲労も重なってか、交流戦では18試合の出場で打率.165と低迷。チャンスを作り出すことができず、チームも6勝10敗2分と厳しい戦いを強いられてしまった。
「近本が出ると一気に試合の流れが変わる」と語るのは、阪神のOBである赤星憲広氏。6月に自身が解説者として登場する野球ゲーム『プロ野球スピリッツ』のイベントにゲストとして出席した際にも、後半戦のキーマンに「近本」の名前を挙げ、「昨季は最下位ということもあって下馬評の低かったタイガースですけど、今季の奮闘というのは近本をはじめとする若手の奮闘が大きい」と分析。「疲れもあって少し成績は落ちてきていますけど、彼の後半の活躍次第ではチームとしてもっと上を目指せると思います」と語っている。
データを見ても、近本がチームに与える影響は大きい。比較的コンディションが良かった5月末までの試合のうち、「近本が1番に入った場合」の阪神の成績は23勝16敗2分。一方、近本が状態を落とした6月以降の同条件を見ると、7勝14敗2分と一気に星を落としている。
もちろん、近本ひとりの調子ですべてが変わるとは言い切れないが、7月3日(水)の試合でも印象的な場面があった。この日は4月19日以来の“スタメン落ち”となっていた近本だが、守備から途中出場すると、延長11回に先頭で迎えた打席で左中間突破の二塁打をマーク。さらに相手の守備が乱れるところを見逃さずに三塁まで陥れ、次打者・糸原健斗の右飛で本塁に突入。一見すると距離は微妙なところだったが、迷わずにスタートを切ると自慢の脚で1点をもぎ取り、決勝点を叩き出した。
“近本が出れば何かが起こる”――。これは相手チームにとっても大きな脅威となりつつある。それだけに、勝負の後半戦を前になるべく早い復調が待たれるところだ。
オールスターゲームにもファン投票で選出されており、引き続き休む間がないというのは気になる部分ではあるが、残りの前半戦と初の大舞台で何かひとつキッカケを掴むことができるか。猛虎軍団の浮上のカギを握るルーキーから目が離せない。
▼ 近本光司
・交流戦成績
18試 打率.165(79-13) 本塁打1 打点3
出塁率.205 長打率.203 OPS.408
二塁打0 三塁打0 塁打数16 得点9
盗塁3(失敗1) 犠打3 犠飛0
四球3 死球1 三振19 併殺打0
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[シーズン通算] 77試 打率.262(309-81) 本塁打6 打点24 盗塁18
※7月4日終了時点
文=尾崎直也