話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月30日に行われた広島戦で、監督通算1000勝を達成した、巨人・原辰徳監督にまつわるエピソードを取り上げる。
「2002年に就任して、3連敗からスタートした。1勝目は非常に強く覚えている」
「その後は、朝になれば『きょう、どう勝つか』、夜になれば『明日、どうやって勝つか』……その積み重ねで、この数字に来た」
30日、本拠地・東京ドームで、9連勝で乗り込んで来た3位・広島を迎え撃った首位・巨人。前週にマツダスタジアムで3連敗を喫しているだけに、初戦は絶対に落とせないゲームでした。
そしてもう1つ、この試合には節目の記録が懸かっていました。原辰徳監督はここまで通算999勝。監督生活13年目にして、名将の証しである史上13人目の通算1000勝に王手を掛けていたのです。
この日は序盤から、ジャイアンツ打線が奮起。初回1死から山本・丸の連打と、敵のエラーで満塁とし、亀井のタイムリーで先制。3回、1死満塁からゲレーロが左中間フェンス直撃の二塁打で2点を追加。4回、坂本勇のタイムリーで1点を加えた巨人は、6回にも若林の4号ソロと坂本勇の2打席連続タイムリー、ゲレーロの犠飛で3点を追加。このダメ押し点がモノを言いました。
投げては、先発・山口が、8回に西川・松山に本塁打2本を浴びて2点差に迫られましたが、中川が後続を絶ち、最後はデラロサが締めくくって勝利。指揮官に1000個目の白星をプレゼントしたのです。
通常はその日活躍した選手がヒーローインタビューに呼ばれますが、この日だけは特別。ファンの大歓声に包まれ、お立ち台に立ったのは原監督でした。
「私がこういうところにね、立つっていう……もう申し訳ないですね」としきりに恐縮しながら、原監督が口にしたのは、選手への感謝の思いでした。
「もう本当に皆さんのおかげでね。選手のおかげで」
その後、選手一同からプレゼントされたフラワーアレンジの盾とともに、記念撮影に臨んだ原監督。その両脇にいたのは、キャプテン・坂本勇と、ベテラン・阿部でした。
坂本は今季で5年目の主将となりますが、最初に任命したのは原監督であり、プロ2年目の2008年に、ショートのレギュラーとして起用してくれたのも原監督でした。
当時のチームリーダー・阿部に頼るだけではなく、自らチームを引っ張って行く気概を見せてほしい……そんな思いもあってのキャプテン抜擢。坂本は、高橋前監督時代の3年間もチームリーダーを務めましたが、昨年(2018年)オフ、3たび復帰した原監督は坂本を引き続き主将に任命。本人もその期待に応えました。
7月30日現在で、本塁打29本、打点71はいずれもリーグトップ。打率も.314と、トップの広島・鈴木誠也(.319)に5厘差の4位につけており、令和初の三冠王も夢ではない状況です。
坂本がここまで奮闘している理由……それはキャプテン就任後、1度も優勝していないという厳しい事実があるからです。クールだった坂本は、この5年間でチームの牽引役に成長。そのきっかけをくれた指揮官を、今年(2019年)こそ胴上げしたいと燃えています。
一方阿部は、原監督の初勝利のときからチームに在籍する、唯一の現役選手です。第2期政権時の、2度にわたるリーグ3連覇(2007〜09年、12年〜14年)にも主力として貢献。主砲であり、正捕手も務めた阿部の存在なくして、この偉業はなしえませんでした。
ここ数年は一塁手としてプレーしていましたが、昨年(2018年)の秋季キャンプ中、阿部は原監督に捕手復帰を志願。指揮官は「お前さんが決めたんだったら、そうしよう」と黙って挑戦を受け入れてくれました。2人の深い絆を感じる話です。
今季は結局、故障の影響もあって代打が中心となっていますが、ここぞという場面での起用がみごとに当たるのも、その信頼関係があってこそ。
6月1日の中日戦。通算400号本塁打にリーチを掛けていた阿部を、原監督は4点ビハインドの5回に代打起用しました。
「4-0になったときに、何とか慎之助がナインのなかに入ることはできないかと。チームの流れ、ムードを変えてくれないかと」
その打席は四球で、得点にはつながりませんでしたが、そのまま一塁守備についた阿部は、次打席で400号アーチを放ち、それが呼び水となって逆転勝利を飾ったのです。
豊富な戦力を抱えるがゆえの悩みもありますが、常に各選手にふさわしい働き場を考えている原監督。それが首位という結果となって現れています。
ちなみに、巨人で通算1000勝を挙げた監督は、川上哲治監督(1066勝)、長嶋茂雄監督(1034勝)に次いで3人目。偉大な名将2人の背中が見え、来季(2020年)にも歴代トップに立つところまでやって来ましたが、原監督は力を込めて、こう言い切りました。
「私が目的をここで言うならば、明日の勝利。それしかない」
いま原監督の頭にあるのは、5年ぶりのV奪還、そして7年ぶりの日本一です。佳境に入ったペナントレース、原監督の振るうタクトに注目です。
「2002年に就任して、3連敗からスタートした。1勝目は非常に強く覚えている」
「その後は、朝になれば『きょう、どう勝つか』、夜になれば『明日、どうやって勝つか』……その積み重ねで、この数字に来た」
30日、本拠地・東京ドームで、9連勝で乗り込んで来た3位・広島を迎え撃った首位・巨人。前週にマツダスタジアムで3連敗を喫しているだけに、初戦は絶対に落とせないゲームでした。
そしてもう1つ、この試合には節目の記録が懸かっていました。原辰徳監督はここまで通算999勝。監督生活13年目にして、名将の証しである史上13人目の通算1000勝に王手を掛けていたのです。
この日は序盤から、ジャイアンツ打線が奮起。初回1死から山本・丸の連打と、敵のエラーで満塁とし、亀井のタイムリーで先制。3回、1死満塁からゲレーロが左中間フェンス直撃の二塁打で2点を追加。4回、坂本勇のタイムリーで1点を加えた巨人は、6回にも若林の4号ソロと坂本勇の2打席連続タイムリー、ゲレーロの犠飛で3点を追加。このダメ押し点がモノを言いました。
投げては、先発・山口が、8回に西川・松山に本塁打2本を浴びて2点差に迫られましたが、中川が後続を絶ち、最後はデラロサが締めくくって勝利。指揮官に1000個目の白星をプレゼントしたのです。
通常はその日活躍した選手がヒーローインタビューに呼ばれますが、この日だけは特別。ファンの大歓声に包まれ、お立ち台に立ったのは原監督でした。
「私がこういうところにね、立つっていう……もう申し訳ないですね」としきりに恐縮しながら、原監督が口にしたのは、選手への感謝の思いでした。
「もう本当に皆さんのおかげでね。選手のおかげで」
その後、選手一同からプレゼントされたフラワーアレンジの盾とともに、記念撮影に臨んだ原監督。その両脇にいたのは、キャプテン・坂本勇と、ベテラン・阿部でした。
坂本は今季で5年目の主将となりますが、最初に任命したのは原監督であり、プロ2年目の2008年に、ショートのレギュラーとして起用してくれたのも原監督でした。
当時のチームリーダー・阿部に頼るだけではなく、自らチームを引っ張って行く気概を見せてほしい……そんな思いもあってのキャプテン抜擢。坂本は、高橋前監督時代の3年間もチームリーダーを務めましたが、昨年(2018年)オフ、3たび復帰した原監督は坂本を引き続き主将に任命。本人もその期待に応えました。
7月30日現在で、本塁打29本、打点71はいずれもリーグトップ。打率も.314と、トップの広島・鈴木誠也(.319)に5厘差の4位につけており、令和初の三冠王も夢ではない状況です。
坂本がここまで奮闘している理由……それはキャプテン就任後、1度も優勝していないという厳しい事実があるからです。クールだった坂本は、この5年間でチームの牽引役に成長。そのきっかけをくれた指揮官を、今年(2019年)こそ胴上げしたいと燃えています。
一方阿部は、原監督の初勝利のときからチームに在籍する、唯一の現役選手です。第2期政権時の、2度にわたるリーグ3連覇(2007〜09年、12年〜14年)にも主力として貢献。主砲であり、正捕手も務めた阿部の存在なくして、この偉業はなしえませんでした。
ここ数年は一塁手としてプレーしていましたが、昨年(2018年)の秋季キャンプ中、阿部は原監督に捕手復帰を志願。指揮官は「お前さんが決めたんだったら、そうしよう」と黙って挑戦を受け入れてくれました。2人の深い絆を感じる話です。
今季は結局、故障の影響もあって代打が中心となっていますが、ここぞという場面での起用がみごとに当たるのも、その信頼関係があってこそ。
6月1日の中日戦。通算400号本塁打にリーチを掛けていた阿部を、原監督は4点ビハインドの5回に代打起用しました。
「4-0になったときに、何とか慎之助がナインのなかに入ることはできないかと。チームの流れ、ムードを変えてくれないかと」
その打席は四球で、得点にはつながりませんでしたが、そのまま一塁守備についた阿部は、次打席で400号アーチを放ち、それが呼び水となって逆転勝利を飾ったのです。
豊富な戦力を抱えるがゆえの悩みもありますが、常に各選手にふさわしい働き場を考えている原監督。それが首位という結果となって現れています。
ちなみに、巨人で通算1000勝を挙げた監督は、川上哲治監督(1066勝)、長嶋茂雄監督(1034勝)に次いで3人目。偉大な名将2人の背中が見え、来季(2020年)にも歴代トップに立つところまでやって来ましたが、原監督は力を込めて、こう言い切りました。
「私が目的をここで言うならば、明日の勝利。それしかない」
いま原監督の頭にあるのは、5年ぶりのV奪還、そして7年ぶりの日本一です。佳境に入ったペナントレース、原監督の振るうタクトに注目です。