イ・リーグトップの14本塁打
「打席数からしたらもっと(本塁打を)打てるな、打たないとなと思っているので、内容のある打席を増やしていきたい」。
イースタン・リーグトップの14本塁打を放つロッテの安田尚憲は、現在の本塁打の数に全く満足していない。
試合前の打撃練習では、「強く振ってあげるというイメージ。しっかり強いスイングをして、いい角度であげられるようになったのは今年入ってから」と打球の角度を意識し、「最初は引っ張らないというか強引にならないように振って、コースを打ち、そこから強く振ることを考えている」と、左に右にものすごい当たりを飛ばす。
安田の打撃フォーム
特に注目したいのが打撃フォーム。ファームの映像を見ているファンなら気づいているかもしれないが、今季の安田は色々な打撃フォームで打っている。
今はゆったりとした構えから、ボールが来たときに足を上げて打つことが多い。このフォームは、以前から試合前の打撃練習で試していたもの。6月までは試合中は違うフォームで打っていたが、7月の巨人との三軍戦あたりから試合前の打撃練習だけでなく、試合でもこのような形で打つようになった。
安田は「良くしようと思ってやっています。今はこれがいい感じなので、今はこういう打ち方をしている」と試行錯誤を続けている。
昨季までファームで安田を指導し、今季は一軍の打撃コーチを担当している大村巌コーチは「ファームの堀コーチ、福浦選手兼任コーチに任せています」としながらも、安田のファームの試合映像をチェックしている。
大村コーチは安田について「今はいろんなことをして固めていく最中。自分が試合の中でいいなと思うことを続けていって、結果がでないから変えるのは良くないこと。ただ自分のモノを作っていく過程の中で、トライしていくことは悪くない」と見ているようだ。
今の形で打つようになって、7月2日の巨人三軍(ロッテ浦和)との練習試合で放ったライト場外へと消える本塁打をはじめ、7月30日の巨人二軍戦でもマリンスタジアムのライト照明に直撃する特大弾が飛び出すなど、すさまじい飛距離の打球を飛ばしている。
打撃の感覚について安田は「まだまだですけど」と前置きしつつ、「ボールの飛距離とかスイング自体も強くなっている。いい感じになっているんじゃないですかね」と好感触を掴む。
試合中になぜ凡退したのか、なぜ打てているのかというのを自身のなかでしっかりと理解し、試合後には「いつも意識しているところが崩れていないか。具体的には下半身、頭の位置が前後にいっていないかですね」と、映像で自身の打撃を確認。練習、試合だけでなく、試合後の振り返りも本塁打アップ、好結果の要因につながっているといえそうだ。
14本塁打、61打点、89安打はいずれもイースタン・リーグトップの成績。一軍で活躍する姿を見たいというファンも多いと思うが、ご存知の通り安田が本職にする三塁には、リーグ2位の31本塁打を放つレアード、さらには打率リーグ3位の「.317」をマークする鈴木大地もいる。一軍の試合でスタメン出場となると、ハードルが高い。安田は「壁は高いですけど、しっかりと立ち向かっていけるようにやっていきたいと思います」と意気込む。
近い将来、マリーンズのみならず、球界を代表する打者に成長することは間違いないだろう。マリーンズの中軸としてチームをけん引する存在となるため、今は試行錯誤を繰り返しながら、ひたすら技術を磨いていく。
※成績は8月14日終了時点
取材・文=岩下雄太