話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、8月20日に行われた中日戦で、チームを救う守備を見せた巨人・亀井善行選手にまつわるエピソードを取り上げる。
「(3安打で)よく勝てたなという感じはするね」(巨人・原監督)
20日にナゴヤドームで行われた、中日-巨人戦。5年ぶりのリーグ制覇に向けて首位をひた走る巨人ですが、マジック点灯も見えて来たこの試合、中日の先発は大野雄大でした。大野雄はこれが今シーズン(19年)4度目の巨人戦登板で、過去3試合の防御率は0.90。ジャイアンツ打線が苦手にしている投手の1人です。
初回、巨人は2番・坂本勇が二塁打で1死二塁のチャンスを作ると、3番・丸がタイムリーを放って1点を先制。その後、2死一・三塁の場面で、一塁走者・岡本がスタート。捕手・加藤が二塁に送球する間に、三塁走者・丸がホームを陥れ、ダブルスチールで貴重な2点目を挙げました。
大野雄はその後立ち直り、2回に四球を1つ与えただけで、3回以降はパーフェクト。巨人打線はわずか3安打で、8安打を放った中日打線を下回りましたが、投手陣が1点のリードを死守。2-1で巨人が5連勝を飾ったのです。
とは言え、ヒヤッとするシーンもありました。6回、巨人先発・メルセデスがビシエド・高橋に連打を浴びて、無死一・二塁のピンチを招いたのです。ここで原監督は、メルセデスから鍵谷にスイッチ。
6月に中継ぎ強化のため日本ハムから移籍して来た鍵谷は、ここまで9試合連続無失点。首脳陣の信頼を得て、大事な場面を任されることも増えて来ました。
「走者がいたので、(アウトを)1個ずつしっかり取って行こうと」
バントを試みた阿部をキャッチャーへのファールフライに打ち取ると、続く堂上を真っ直ぐで詰まらせレフトフライ。あと1人でピンチ脱出にこぎつけます。しかし、加藤に外角への真っ直ぐを痛打され、打球はライト後方へ。2死なので走者は打った瞬間に走っており、頭を越せば2者生還で逆転です。ところが……。
ライトを守っていた亀井が背走、左手を目一杯伸ばすと、打球はグラブの先端に収まったのです。このファインプレーに、ナゴヤドームは大きなどよめきに包まれました。隣で守っていた丸も「越えたかなと思ったけど、亀さんが最後ひと伸びしてくれた。素晴らしかった」と驚いたほど。原監督も、亀井を絶賛しました。
「あれは亀ちゃんしか捕れない。イチローでも後ろに行かせていたかもしれないね。……イチローなら捕れたかな?(笑)」
結果的に、逆転を阻んだこの好守備のお陰で、鍵谷は10試合連続無失点と記録を伸ばし、チームも逃げ切ることができました。
「打ててないから、守備で貢献できてよかった」
試合後、そう言って胸をなで下ろした亀井。「1番・ライト」で出場したこの日は4打数ノーヒットでしたが、敵の2点を阻んだこの守備は、2点タイムリーを打ったのに等しいプレーなのです。実は鍵谷は、同じ中央大学出身。チームと後輩をともに救う、まさに値千金のナイスキャッチでした。
今シーズン(19年)の亀井は、ここまで103試合に出場し、打率.302、11本塁打、50打点。プロ15年目ですが、過去、規定打席に達したシーズンは、レギュラーで活躍し25本塁打を放った09年と、昨年(18年)の2回のみ。現在は、勝負強い打撃と安定した守備でスタメン出場が続いており、3度目の規定打席到達も行けそうな雰囲気です。
7月に37歳の誕生日を迎え、チーム内では、中央大の先輩・阿部慎之助に次ぐ2番目の年長者でもある亀井。しかし老け込む気配はまったくなく、4月の阪神戦では、ライト前のヒットに猛チャージして打者走者を一塁で刺し、「ライトゴロ」を成立させるなど、持ち前の強肩も健在です。
「僕がジャイアンツで長くやって来られたのは、守備のお陰。守備では誰にも負けていない自信がある」
内外野どちらもこなし、クリーンアップも1番も打てる亀井は、原監督にとってなくてはならない手駒の1つ。どんな役割を与えられようと、それをきっちりこなし、指揮官に「お前の力が必要だ」と言ってもらえることが、亀井本人にとっての何よりの喜びなのです。
過去、原監督のもと、6度のリーグ優勝を経験している亀井。5年ぶりの美酒を味わう日は、もうすぐそこまで来ています。
「(3安打で)よく勝てたなという感じはするね」(巨人・原監督)
20日にナゴヤドームで行われた、中日-巨人戦。5年ぶりのリーグ制覇に向けて首位をひた走る巨人ですが、マジック点灯も見えて来たこの試合、中日の先発は大野雄大でした。大野雄はこれが今シーズン(19年)4度目の巨人戦登板で、過去3試合の防御率は0.90。ジャイアンツ打線が苦手にしている投手の1人です。
初回、巨人は2番・坂本勇が二塁打で1死二塁のチャンスを作ると、3番・丸がタイムリーを放って1点を先制。その後、2死一・三塁の場面で、一塁走者・岡本がスタート。捕手・加藤が二塁に送球する間に、三塁走者・丸がホームを陥れ、ダブルスチールで貴重な2点目を挙げました。
大野雄はその後立ち直り、2回に四球を1つ与えただけで、3回以降はパーフェクト。巨人打線はわずか3安打で、8安打を放った中日打線を下回りましたが、投手陣が1点のリードを死守。2-1で巨人が5連勝を飾ったのです。
とは言え、ヒヤッとするシーンもありました。6回、巨人先発・メルセデスがビシエド・高橋に連打を浴びて、無死一・二塁のピンチを招いたのです。ここで原監督は、メルセデスから鍵谷にスイッチ。
6月に中継ぎ強化のため日本ハムから移籍して来た鍵谷は、ここまで9試合連続無失点。首脳陣の信頼を得て、大事な場面を任されることも増えて来ました。
「走者がいたので、(アウトを)1個ずつしっかり取って行こうと」
バントを試みた阿部をキャッチャーへのファールフライに打ち取ると、続く堂上を真っ直ぐで詰まらせレフトフライ。あと1人でピンチ脱出にこぎつけます。しかし、加藤に外角への真っ直ぐを痛打され、打球はライト後方へ。2死なので走者は打った瞬間に走っており、頭を越せば2者生還で逆転です。ところが……。
ライトを守っていた亀井が背走、左手を目一杯伸ばすと、打球はグラブの先端に収まったのです。このファインプレーに、ナゴヤドームは大きなどよめきに包まれました。隣で守っていた丸も「越えたかなと思ったけど、亀さんが最後ひと伸びしてくれた。素晴らしかった」と驚いたほど。原監督も、亀井を絶賛しました。
「あれは亀ちゃんしか捕れない。イチローでも後ろに行かせていたかもしれないね。……イチローなら捕れたかな?(笑)」
結果的に、逆転を阻んだこの好守備のお陰で、鍵谷は10試合連続無失点と記録を伸ばし、チームも逃げ切ることができました。
「打ててないから、守備で貢献できてよかった」
試合後、そう言って胸をなで下ろした亀井。「1番・ライト」で出場したこの日は4打数ノーヒットでしたが、敵の2点を阻んだこの守備は、2点タイムリーを打ったのに等しいプレーなのです。実は鍵谷は、同じ中央大学出身。チームと後輩をともに救う、まさに値千金のナイスキャッチでした。
今シーズン(19年)の亀井は、ここまで103試合に出場し、打率.302、11本塁打、50打点。プロ15年目ですが、過去、規定打席に達したシーズンは、レギュラーで活躍し25本塁打を放った09年と、昨年(18年)の2回のみ。現在は、勝負強い打撃と安定した守備でスタメン出場が続いており、3度目の規定打席到達も行けそうな雰囲気です。
7月に37歳の誕生日を迎え、チーム内では、中央大の先輩・阿部慎之助に次ぐ2番目の年長者でもある亀井。しかし老け込む気配はまったくなく、4月の阪神戦では、ライト前のヒットに猛チャージして打者走者を一塁で刺し、「ライトゴロ」を成立させるなど、持ち前の強肩も健在です。
「僕がジャイアンツで長くやって来られたのは、守備のお陰。守備では誰にも負けていない自信がある」
内外野どちらもこなし、クリーンアップも1番も打てる亀井は、原監督にとってなくてはならない手駒の1つ。どんな役割を与えられようと、それをきっちりこなし、指揮官に「お前の力が必要だ」と言ってもらえることが、亀井本人にとっての何よりの喜びなのです。
過去、原監督のもと、6度のリーグ優勝を経験している亀井。5年ぶりの美酒を味わう日は、もうすぐそこまで来ています。