優勝候補同士による決勝
履正社(大阪)と星稜(石川)という大会前から優勝候補に挙げられていた両校による決勝となった夏の甲子園。改めてここまでの勝ち上がりを見てみると、下記のような結果となっている。
▼ 履正社(大阪)
3回戦:9-4 高岡商
準々決勝:7-3 関東一
準決勝:7-1 明石商
▼ 星稜(石川)
1回戦:1-0 旭川大
2回戦:6-3 立命館宇治
3回戦:4×-1 智弁和歌山(延長14回タイブレーク)
準々決勝:17-1 仙台育英
準決勝:9-0 中京学院大中京
強打の履正社と投手力の星稜
履正社は全5試合で7点以上と打線が好調をキープしているというのが大きなプラス要因。しかも、これまで対戦してきた相手投手は鈴木寛人(霞ケ浦)、前佑囲斗(津田学園)、谷幸之助(関東一)、中森俊介(明石商2年)と、プロ注目の好投手ばかり。ここまで5試合で盗塁は「0」であり、純粋に打ち勝ってきたという点にも凄みを感じる。
投手陣は1回戦で6失点を喫するなど万全とは言えない状態だったが、準々決勝でエースの清水大成が2回以降を0点に抑え、準決勝で2年生の岩崎峻典が1失点完投勝利を収めるなど徐々に安定感が出てきた。また、あまりクローズアップされないが、5試合で失策はわずかに「1」と堅実な守備も高レベルだ。
一方の星稜は、3回戦までは僅差のゲームが続いた。1回戦は旭川大のエース能登嵩都にわずか1点に抑え込まれ、2回戦も立命館宇治の粘り強い攻撃で6回には2点差まで詰め寄られている。そして最も苦しかったのが3回戦。智弁和歌山の継投の前にあと一本が出ず、タイブレークのすえの勝利だった。
これらの接戦を制した要因は何といっても絶対的エースの奥川恭伸である。1回戦はわずか94球で3安打完封。2回戦でもリリーフで相手の流れを食い止めた。そして智弁和歌山戦では延長14回を一人で投げ抜き、被安打3、23奪三振という離れ業をやってのけている。奥川が頑張っているうちにようやく打線に火がつき、準々決勝、準決勝では大差で勝利をおさめた。
どちらが勝っても初優勝!
両チームの戦力とこれまでの戦いぶりを見ると、打力と守備力は履正社が上回り、投手力は星稜が圧倒的に上という印象だ。履正社がこれまで好投手を攻略してきたとはいえ、奥川は高校生が簡単に打てるレベルの投手ではない。32回1/3を投げて被安打10、45奪三振、5四死球、自責点0というのは圧巻の数字である。
好投手には足で揺さぶるというのも常套手段だが、履正社はそういうタイプのチームではない。奥川が大きく調子を落とす、途中で足がつるなどのアクシデントがなければ、星稜の有利は揺るぎないと言える。
しかし、最後まで何が起こるかわからないのが甲子園である。選抜で17三振無得点と完璧に抑えられた悔しさを晴らしたいという履正社の強い思いが、何かを起こす可能性も十分考えられるだろう。
プレーボールは14時。令和最初の決勝戦にふさわしい熱戦を期待したい。
文=西尾典史