サヨナラ満塁本塁打を放ち、笑顔でホームインするヤクルト・山田哲人

◆ 「自分で決めるという強い気持ち」

 節目となる通算200号(プロ野球史上106人目)が、この場面で出た。

 ヤクルトの山田哲人が4日、神宮球場で行われた広島戦の9回二死満塁の好機に、広島・フランスアからレフトスタンドへ今季33号のサヨナラ満塁弾。チームを11-7の勝利に導いた。
 
 「自分で決めるという強い気持ち」だったという山田。200本塁打を記録したのはヤクルトでは8人目。27歳1カ月での到達はプロ野球5位の年少記録で、球団では1993年の池山隆寛(27歳9カ月)を抜く最年少記録だ。

 200号について「まさか打てると思っていなかった。『嬉しい』の一言しかない」と語った背番号1。この日は、本塁打を含む3安打猛打賞の活躍。初回には今季33個目の盗塁を決め、昨季から続いている連続盗塁成功のプロ野球記録を「38」にまで伸ばした。

 プロ野球史上初の『40-40(40本塁打・40盗塁)』については「無理ですね(笑)」と語った山田だが、「最後まで諦めず一戦一戦、今日みたいな試合を続けていきたい」と、残り16試合を全力で戦い抜くことをファンの前で誓った。

◆ 村上が「90」打点&10代最多本塁打記録更新

 また、この試合で勝利の呼び水となったのが、若き大砲の一打だった。

 この日も「6番・一塁」でスタメン起用された村上宗隆は1-5と4点ビハインドで迎えた5回、二死二塁から右前へ適時打を放って今季87打点目。高卒2年目以内では、1953年の中西太(西鉄)の記録を抜いて歴代単独トップに立った。

 さらに6回だ。バレンティンの適時打で4-5と追い上げたあと二死一・三塁の場面で今度はレフトスタンドへ逆転の32号3ラン。これが清原和博(西武)の持っていた10代選手によるシーズン本塁打最多記録(1986年・31本)を更新する一発となった。

 今季、球界の歴史を次々と塗り替えてきた村上だが、自身は「今はまず明日の試合に向けて準備していきたい」と至って冷静だ。

 この日は1試合4打点の活躍を見せ、これでリーグトップタイとなる90打点。100打点以上も狙える勢いで、2リーグ制以降では史上最年少となる打点王の可能性もある。
 
 「残り試合少ないですが、もっともっと打ってチームに貢献できるように頑張りたいと思います」と55番の背中が頼もしかった。

◆ 小川監督「打つべき人が打って勝てた」

 小川淳司監督は、この日の結果について「神宮に来ているファンの皆さんに喜んでもらえる試合ができて良かった。打つべき人が打って勝てたという試合だった」と喜んだ。

 サヨナラ満塁弾を放った山田については「期待を一身に背負った中でのあの結果だから、素晴らしいホームランだったと思う」と称賛した。
 
 山田と村上――。ヤクルトが誇る左右のスラッガーは今季、2人合わせてここまで65本(山田33本、村上32本)のアーチを描いてきた。ヤクルトで2人の日本人選手がシーズンで30本塁打以上を記録したのは、1992年の古田(30本)、池山(30本)以来27年ぶりとなる。

 最下位に沈むチーム状況で、まさに希望の光となっている2人の活躍。山田も話したように、残り試合、最後まで諦めない執念をファンの前で見せたいところだ。

取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

【別府勉・プロフィール】
1981年、神奈川県生まれ。野村克也監督時代の黄金期からヤクルトスワローズを応援し、学生時代を中心に全国各地の球場を回った。大学卒業後はスポーツ紙の取材編集の仕事を経て、Web業界へ。『ベースボールチャンネル』への寄稿を機に、野球ライターとして活動開始

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