ニュース 2019.09.25. 17:00

スランプ乗り越え初タイトル!ひと皮むけた楽天・松井裕樹にかかる“岩瀬超え”の期待

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楽天・松井裕樹

帰ってきた鷲の守護神


 9月も終わりが近づき、プロ野球・2019年シーズンもいよいよ佳境。パ・リーグは24日に西武が2年連続のリーグ制覇を決めると、同日に楽天が3位の座を確保してクライマックスシリーズ(以下、CS)の出場権をゲット。最後までどこが抜け出すか分からない激戦の1年は、1日・3試合の結果によって全順位が一気に決するという珍しい結末を迎えた。


 各チームの順位が決まった一方、CSまでのわずかな期間にも戦いは残っている。各選手たちによる、個人タイトルをめぐる争いだ。そんななか、24日の結果をもって栄冠の行方が決まったものも。そのひとつが、パ・リーグの「セーブ王」である。


▼ パ・セーブ数ランキング
38セーブ 松井裕樹(楽)
35セーブ 森 唯斗(ソ)
30セーブ 増田達至(西)
27セーブ 益田直也(ロ)
25セーブ 秋吉 亮(日)
※9月24日終了時点


 残り試合の関係から、2位につける森の逆転の可能性がなくなったため、松井のセーブ王が確定。キャリアハイのセーブ数を記録した鷲の若き守護神が、高卒6年目にして初のタイトル獲得となった。

 1年で最も多くのセーブを記録した抑え投手に贈られる、「最多セーブ投手賞」。以前はセーブ数と救援勝利数を合わせた“セーブポイント”(=SP)によって争われる「最優秀救援投手賞」という表彰だった時代もあったが、2005年以降は純粋なセーブ数のみで争われる現行のレギュレーションに変わっている。

 その2005年以降の受賞者は以下の通り。


▼ 歴代「最多セーブ投手賞」受賞者
・2005年
岩瀬仁紀(中日/46S)
小林雅英(ロッテ/29S)

・2006年
岩瀬仁紀(中日/40S)
MICHEAL(日本ハム/39S)

・2007年
藤川球児(阪神/46S)
馬原孝浩(ソフトバンク/38S)

・2008年
クルーン(巨人/41S)
加藤大輔(オリックス/33S)

・2009年
岩瀬仁紀(中日/41S)
武田 久(日本ハム/34S)

・2010年
岩瀬仁紀(中日/42S)
シコースキー(西武/33S)

・2011年
藤川球児(阪神/41S)
武田 久(日本ハム/37S)

・2012年
岩瀬仁紀(中日/33S)
バーネット(ヤクルト/33S)
武田 久(日本ハム/32S)

・2013年
西村健太朗(巨人/42S)
益田直也(ロッテ/33S)

・2014年
呉 昇桓(阪神/39S)
平野佳寿(オリックス/40S)

・2015年
バーネット(ヤクルト/41S)
呉 昇桓(阪神/41S)
サファテ(ソフトバンク/41S)

・2016年
沢村拓一(巨人/37S)
サファテ(ソフトバンク/43S)

・2017年
ドリス(阪神/37S)
サファテ(ソフトバンク/54S)

・2018年
山崎康晃(DeNA/37S)
森 唯斗(ソフトバンク/37S)


高卒2年目・19歳からストッパー


 2013年のドラフト1位で楽天に入団した松井裕樹。高校2年時の夏の甲子園では、1回戦で今治西から1試合・22奪三振を記録する衝撃の聖地デビュー。大会史上最多の10連続三振をマークするなど、一躍その名を全国に轟かせた。

 3年夏は横浜高に敗れて甲子園出場はならなかったものの、秋のドラフト会議では5球団が1位指名。運命の抽選の結果、その年に創設初優勝を果たし、後に日本一まで登り詰める楽天への入団が決まる。

 1年目から春のキャンプで一軍に帯同すると、オープン戦でも結果を残し、4月2日のオリックス戦で堂々のプロデビュー。4勝8敗と年間で4つの負け越しは作ったものの、高卒1年目から27試合に登板。うち17試合で先発して防御率は3.80という成績を残した。


 さらなる飛躍に期待がかかった2年目。転機となったのが、その年から一軍監督に就任した大久保博元監督の決断だ。三振奪取力の高さからリリーフ転向プランを推し進めると、そのタイミングで当時のチームで守護神候補だったキャム・ミコライオが負傷離脱。このピンチに、指揮官は当時19歳の左腕をストッパーに抜擢することを決めた。

 結局、ミコライオの離脱が長引く間に松井は押しも押されぬ守護神へと成長。転向1年目から63試合に登板して3勝2敗12ホールド・33セーブをマーク。防御率は驚異の0.87という凄まじい成績を残し、1シーズンにおけるセーブ数の球団記録や、高卒2年目以内の投手によるシーズンセーブ数のプロ野球記録など、様々な記録を更新していった。


不振を乗り越えて見えた初の栄冠


 2年目から守護神に定着すると、そこから3年連続で30セーブ以上を記録。2018年には、プロ野球史上最年少となる22歳10カ月で通算100セーブを達成して見せたが、その2018年は松井にとって試練の年となった。

 開幕からリリーフ失敗が目立ち、5月からはストッパーの座から陥落。ひとつ前のセットアッパーとして再起を期するも、なかなか調子を取り戻すことができないまま、二軍降格を余儀なくされてしまう。

 一軍復帰後もかつての投球は影を潜めた中、プロ入り1年目以来となる先発にも挑戦するなど、様々な形で不振脱出を目指して試行錯誤。53試合に登板して5勝(8敗)を挙げたものの、セーブ数は5に留まった。

 オフには先発復帰という噂も持ち上がった中、平石洋介監督は再び松井をストッパーに任命。2019年シーズンは開幕から抑えとして復活を果たし、4年ぶりとなる60試合登板にも到達。24日時点で自己最多を更新する38セーブを記録し、嬉しい初タイトルを手中に収めた。


“岩瀬超え”への期待も…


 スランプを乗り越え、ひと回りもふた回りも成長して守護神の座に返り咲いた松井裕樹。まだまだ気は早いが、23歳という若さで139ものセーブを稼いでいる左腕には、前人未踏の記録と思われた“歴代セーブ数”の更新にも期待がかかる。

 その記録と言えば、岩瀬仁紀が打ち立てた「407」セーブ。歴代2位の記録が「286」というところを見ても、その数のとてつもなさがお分かりいただけるだろう。

 昨季限りでユニフォームを脱いだ伝説のストッパーだが、実は岩瀬が抑えに定着したのは30歳目前でのこと。大学・社会人を経由して24歳でプロ入りをして以降、5年目・29歳までに記録したセーブはわずか「5」だった。

 それを思えば、岩瀬がまだプロ入りもしていなかった23歳の時点で「139」ものセーブを記録している松井には、この伝説の記録超えにも当然期待がかかってくる。

 日本球界最強の守護神へ…。苦境を乗り越え、初めてのタイトルを掴んだ松井裕樹の今後がたのしみだ。


文=尾崎直也

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