館山は先発、畠山は“4番”代打で登場
今季限りで現役を引退するヤクルトの館山昌平投手(38)と畠山和洋選手(37)の引退試合が、21日の中日戦(神宮)で行われ、神宮球場に詰めかけた大勢のヤクルトファンは、2人の最後のプレーを目に焼き付けた。
プロ17年目の館山は“打者1人”だけの限定で、先発登板。中日の先頭打者・大島を二ゴロに抑え、マウンドを降りた。
現役生活で3度のトミー・ジョン手術を経験している右腕だが、「同じように怪我したい。怪我をしなければ見えなかったこともある。相手を抑えてアウトを取りたいということに対して、持てる力をすべて出し切ったというところが、一番心の中にある」と、過去の自分を振り返り話していた。
26日には「生活のためもあるし、もしかしたら何かの役に立てればいい」と、10度目の右肘手術を受ける予定だ。
引退試合に向けて「とにかく全力で振って敗れ去りたい」と話していたプロ19年目の畠山は、6回に4番・バレンティンの代打で登場。「今までで一番冷静に打席に入れた」という現役最終打席は、二塁手の後方へ上がった打球が右前に落ちる安打となった。
小川淳司監督は、館山と畠山の引退について「長い間ヤクルト一筋で頑張ってくれた選手なので、引退となるとしんみりしてしまう」と話し、畠山を起用した場面については「“4番・畠山”というアナウンスはないけれど、4番という打順で考えようかなと思った」と、2015年のリーグ優勝に貢献した主砲への最後の親心を見せた。
引退セレモニーでは涙も
試合後に行われた引退セレモニーでは2人とも涙を流し、神宮のファンに別れを告げた。そして、現役生活で大きな宝物を得て、ユニフォームを脱ぐ――。
畠山は「いまの若い選手は本当に有望な選手がたくさんいます。この若い世代の選手たちが近い将来、必ずスワローズを再びリーグ優勝へ導いてくれると確信しています」と後輩たちにメッセージ。
ともに戦ってきたファンには「スワローズの一員として、ファンの皆さんと19年間戦えたことは僕の誇りであり、宝物です」と力強く語った。
館山は、ともに投手陣の柱としてヤクルトを支えてきた石川雅規に対して、「プロ入り前から石川さんの背中を追いかけてきました。距離を縮めることすらできませんでしたが、石川さんがいなければ僕の成績はありません。これからも後輩たちの高い目標であり続けてください」と伝えると、石川も涙した。
そして「神宮球場で何度もヒーローインタビューを受けられたこと。ファンの皆さんの前で喜びの声を上げられたことが自分の宝物です」と、応援してくれたファンへ感謝の思いがあふれた。
2人はこの日グラウンドを去ったが、彼らが見せてくれた一つひとつのプレーはファンの胸に確かに刻まれ、その魂は次代の選手たちに必ずや引き継がれていくだろう。
取材・文=別府勉(べっぷつとむ)