先発・リリーフにフル回転
「シーズン最初に1年間本当にフルでやって貢献したい気持ちがあった。それはなんとかできた。目標は達成したのかなという感じがします」。
ロッテの西野勇士は今季、先発にリリーフとフル回転した。開幕一軍を掴むと春先はビハインドゲームのリリーフを中心に安定した投球を見せ、一時はセットアッパーを担当。後半戦からは先発に配置転換し、9月7日のソフトバンク戦ではプロ11年目でプロ初完封を挙げるなど、6試合の先発で5試合クオリティ・スタート(6回3自責点)をマークした。
1年を通して安定した投球を披露できた要因について西野は「トレーニングもそうですし、ケアもそう。今年はこれをやろうと決めたこと、自分がやりたいことを最初から最後までやり続けられたのが良かったと思います」と説明した。
二軍でも腐らず取り組んだ姿勢
2014年から3年連続で20セーブ以上をマークし、抑えも担ってきたが、ここ数年は自身が納得のいく投球ができなかった。
それでもファームで過ごす時間が多かった17年や18年も腐ることなく、黙々とトレーニングをしている姿は印象的だった。「悔しい思いもありましたよ。僕も先輩なので見せないといけない。ある程度、僕の中での野球観じゃないけど、野球に対する取り組み方の姿勢がある。後輩たちが見て、こういう風に野球に取り組んでいくんだというのを見せられればいいかなと思います」。
一緒に汗を流してきたマリーンズの先輩たちの練習姿勢も、大きく関係しているという。特に今季限りで現役から引退した福浦和也から学ぶことが多かった。「本当に福浦さんの影響がスゴイあると思います。僕の中でも人として、凄い尊敬するというか、ああいう人になりたいと思うくらいスゴイ人。野球に対する姿勢や準備を学ばせてもらった。僕の野球に対する姿勢というのもそういうところからできあがっていると思う」と存在の大きさを強調した。
取り戻せない感覚
練習姿勢も大事だが、同時にプロの世界では「結果」が求められる。17年が5登板、昨季は14試合の登板で、防御率6.19と精彩を欠いた。
昨年の秋には「自分が良かったときの感覚を取り戻そうというわけではないけど、ある程度、自分の中で良い感覚があるなかで、そういう感覚を取り戻せていないところがある。正直それができていないというのは、今の結果がでていないことに繋がっている。今年(2018年)は本当に全然できていない。正直チームの戦力になれていない」と自身が思い描くピッチングができないこと、チームに貢献できていないことを悔しがっていた。
西野は良かった時の感覚を取り戻すことに取り組んでいたが、「アメリカでトレーニングをやって、良くない点とかもわかった。それを修正するじゃないですけど、もちろん2年も良い感覚がなかったら、前の感覚という話ではない」と、新しい感覚を手に入れようと試行錯誤してきた。
その結果、オープン戦の時には良かったときの感覚に「戻りつつあるけど、100ではない。ハマったときはそのときと変わらないくらいの球が投げられている。そうでないときもあるので、そこがもうちょっと埋まってくれればという感じ。7~8割はいい感じで来ています」と、自身の中で手応えを掴みつつあった。
新しい感覚
リリーフを務めていた5月下旬の段階では、「一進一退という感じ。良いときもあれば、悪いときもある」と話していたが、夏前には「みんな好不調の波があるように、その中で『これだ』っていうのをみんな掴むから1年間一軍に居続けられる。僕の中でもある程度、『こういうのかな』というのが1個あって、それは先発転向する直前から(良い)感覚が続いているのかな」と、“新しい感覚”をつかみ始めていた。
先発転向後の成績を見ても、6試合の登板で39回1/3を投げ、2勝2敗ではあるものの、防御率は2.52。冒頭にも述べたように、5試合でクオリティスタート(6回以上3失点以下)を達成するなど、結果にも好感触の成果が現れている。
投球スタイルを変えたわけでなく、投げている球種は良かったときとはほとんど変わらない。「本当に良いときに戻すという感覚はないけど、スタイルは変わらない。そこは変えちゃダメなのかなと思います」。試行錯誤をしながら、たどり着いた新たな感覚。悔しかった2年間というのは、決して無駄ではなかったのかもしれない。そんなことを思わせる今季の働きぶりであり、これを来年以降も継続できるかが本当に重要なことになってくる。
取材・文=岩下雄太