ニュース 2019.10.09. 18:00

阪神がCSファイナルまで勝ち進んだ理由

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【プロ野球CS1DeNA対阪神】阪神5年ぶりCS2進出 試合に勝利し、阪神・藤川球児とハイタッチする矢野燿大監督(左)=2019年10月7日 横浜スタジアム 写真提供:産経新聞社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、10月9日からセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)でファイナルステージに進出した3位・阪神と、迎え撃つ王者・巨人にまつわるエピソードを取り上げる。

「ジャイアンツの方が、普通に考えたら有利なことが多いんで。“当たって砕けろ”だと思います」(阪神・矢野監督)

いよいよ9日から開幕する、セ・リーグのCSファイナルステージ。優勝した巨人は、すべて本拠地・東京ドームで戦えますし、アドバンテージの1勝もあって、普通に考えれば、圧倒的に有利な立場です。

しかし……相手は、ファーストステージで2位・DeNAとフルセットの死闘を勝ち抜いて来た3位・阪神。

レギュラーシーズン終盤、5位転落の可能性もあった阪神ですが、最後の最後に6連勝。前年優勝の広島を抜いて奇跡的な3位滑り込みを果たし、さらに6点差を大逆転するなどDeNAも破って、ついに日本シリーズ進出に手が届くところまでやって来たのです。

2010年、パ・リーグ3位から日本一となり、「史上最大の下剋上」を果たしたロッテと雰囲気が似ているという声もあります。

前回リーグ優勝を果たした2014年、巨人はCSファイナルステージでまさかの4連敗を喫し、3年連続日本シリーズ進出を阻止されました。その相手は……そう、阪神。

しかも巨人は、リーグ優勝を決めた9月21日以来、真剣勝負から2週間以上も遠ざかっています。「絶対に負けられない戦い」に9月末からずっと勝ち続けて来た阪神の勢いを止めるのは、一筋縄では行きません。7年ぶりの日本一を目指す巨人にとっては、いちばん嫌な相手が出て来たと言えるでしょう。

もっとも、休養十分で、万全の態勢で決戦に臨める巨人に対し、阪神の選手はシーズン終盤からずっと激戦続き。満身創痍の選手もいます。

その代表が、42歳のベテラン・福留孝介です。ファーストステージでは、第2戦で右ヒジに、第3戦では左足の親指に連続で死球を受け、まさに満身創痍。右ヒジには大きなアザが残り、足の指も腫れたままで、本人も「かなり痛い」と告白しています。

レギュラーシーズン中であれば、大事を取って欠場するところですが、そんなことは言っていられません。福留はファイナルステージへの強行出場を決意したようです。

死球を受けたゲームは2試合とも、交代せずに最後までグラウンドに立ち続けた福留。大ベテランが体を張ってチームの勝利のために戦う姿は、チームメイトたちの士気を高め、ファーストステージ突破の要因になりました。

「これから成長するいい機会を、次のステージにもらった。楽しんでやれればいいですね」(福留)

ここで注目したいのは、福留の「楽しんでやれればいい」という言葉です。そういえば、ファイナルステージ進出を決めたDeNAとの第3戦、最後を締めくくった守護神・藤川球児は、勝負を心から楽しんでいるような表情で打者に向かって行き、チームを勝利に導きました。

この「野球を楽しむ姿勢」は、ファンを喜ばせることを目標に掲げている矢野監督が、自ら実践して来たことです。

ベンチでガッツポーズをして、選手とともに喜ぶ「矢野ガッツ」のパフォーマンスもその1つで、その精神がチームに浸透したことの表れと言えるでしょう。背景には、「野球はしんどいとか、厳しいというイメージを変えて行きたい。野球は楽しいスポーツなんだ、ということを子どもたちに見せたい」というポリシーがあるのです。

ピッチャーも総力戦です。チームの勝ち頭で、唯一の10勝を挙げた西勇輝が、ファーストステージ初戦で打球を左足親指の付近に当て、わずか12球で降板。球数を投げていないだけに、ファイナル初戦で先発……というプランもあったのですが、打球が当たった箇所が、ピッチャーが最後に全体重をかける親指だけに、ファイナルでの登板は難しい状況のようです。

そこで、急きょ初戦の先発に指名されたのが、高卒4年目、通算1勝しか挙げていない22歳の望月惇志です。しかも投げ合う相手は、今季最多勝・最多奪三振・最高勝率の投手3冠に輝いた山口俊。普通なら緊張で足が震えるところですが、望月はこう抱負を語りました。

「投げられることが嬉しいし、マウンドに立てることも幸せ。感謝して投げたい」

「チャレンジするじゃないですけど、3位からいい流れで勝っているので。その流れに僕も乗れたらいいですね」

これも、矢野監督の「野球を楽しむ姿勢」そのもの。

夫人の出産立ち合いで一時帰国していた中継ぎの柱・ジョンソンも週末には戻って来るようで、中継ぎに回ったガルシアも、状況によっては再び先発に回したりと、投打ともにスクランブル態勢で臨む阪神。ナインの心も、1つにまとまっています。

一方、巨人も負けてはいません。一時は腰痛でCS出場が難しいと思われていたエース・菅野智之が復帰を決断。第3戦で先発する見込みです。また今季限りで引退する阿部慎之助も「5番・一塁」で先発出場するという情報もある他、レギュラーシーズンで活躍できなかった選手を「CS用の秘密兵器」として起用する可能性も。こちらも総力戦、負けていられないのです。

セ・リーグ最後の決戦を制し、パ王者との日本シリーズに駒を進めるのはどちらなのか? ラグビーも熱いですが、プロ野球もまだまだ、これからが「クライマックス」です!
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