盛り上がりを見せる首都・ワシントン

◆ 初の世界一へ驀進中

 ナショナルリーグのリーグ優勝決定シリーズは第3戦まで終わり、ナショナルズが3連勝でワールドシリーズ進出に王手をかけた。

 このポストシーズンはワイルドカードゲームからのスタートとなったナショナルズ。まずは一発勝負で球界屈指のクローザーへと成長しつつあるジョシュ・ヘイダーを打ち砕き、見事な逆転勝ちで第一歩を踏み出すと、地区シリーズではリーグ最高勝率を誇ったドジャースも撃破。完全に勢いに乗った状態で迎えたリーグ優勝決定シリーズも、敵地で連勝発進を決めてから本拠地へと戻り、あっという間に王手をかけた。

 圧巻の強さで快進撃を続けているナショナルズだが、これまで「ワールドシリーズ出場経験がないチーム」であることは有名。マリナーズとともに、大舞台に縁がないチームとして知られている。

◆ ワシントンに歓喜を届けることができるか…

 1969年に、カナダのモントリオールを拠点に「エクスポズ」として誕生したのが、現在のナショナルズだ。

 このフランチャイズがカナダからアメリカの首都であるワシントンへと移ったのが2005年のこと。移転後はしばらく低迷が続いたが、2010年代に入るとドラフト戦略の成功などもあって、徐々に強豪チームへの仲間入りを果たす。

 2012年から2017年の6シーズンで実に4度の地区優勝を飾るまでになったが、それでもなかなか地区シリーズを勝ち抜くことはできなかった。短期決戦で弱いという印象もついてきたなか、今季はワイルドカードから一気に大舞台へと駆け上がろうとしている。

 エクスポズ/ナショナルズのフランチャイズにとって初めてのワールドシリーズ出場が目前に迫ってきているが、実は首都・ワシントンでは過去に3度ワールドシリーズが開催されている。

 1901年から1960年までワシントンに本拠地を置いていたセネタースは、1924年に初のワールドシリーズ出場。ニューヨーク・ジャイアンツを4勝3敗で下し、世界一にも輝いている。

 翌25年にもワールドシリーズに出場したが、この時はピッツバーグ・パイレーツに3勝4敗で敗戦。1933年には、ジャイアンツと再戦して1勝4敗で返り討ちになっている。その後、チームは1961年にミネソタへと移転。現在のツインズとなった。

 その1961年には、“2代目”となるセネタースが新たに誕生。1971年までの11シーズンに渡ってワシントンに本拠地を構えていたが、1972年にテキサスへと移転して現在のレンジャーズに。それから、エクスポズが移転してくる2004年までは、首都・ワシントンには30年以上もの間、球団がなかったことになる。
 

 もしも、今季ナショナルズがワールドシリーズ進出を決めれば、首都ワシントンにとっては1933年以来、実に86年ぶりにワールドシリーズが戻ってくることになる。

 ちなみに、既存の30チームでワシントンに次いでワールドシリーズ開催から遠ざかっている都市といえば、パイレーツが本拠地を構えるピッツバーグ(一度もワールドシリーズ出場がないシアトルは除く)。1979年にパイレーツがナ・リーグを制覇し、世界一に輝いたのが今からちょうど40年前である。

 ワシントンは空白の期間(1972年から2004年)が長かったとはいえ、ピッツバーグとの差は46年にもなる。悲願に王手をかけたナショナルズは、4連勝で86年ぶりの歓喜をワシントンに届けられるだろうか。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

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八木遊

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