プロ10年目でキャリアハイ
「今回FAをせずに残留することを決めました」。
「10年間ロッテでお世話になって、いろんな怪我をしましたけど、ここまでユニフォームを着させてもらってまだまだ恩返しができていないと思っている。これからしっかり恩返しをしていきたいと思っています」。
ロッテの荻野貴司が31日、今季取得した国内FA権を行使せずに残留すると発表した。
毎年のように故障に泣かされてきた荻野だがプロ10年目の今季は、シーズン終盤に一軍登録抹消があったものの、大きな怪我もなく1年間を過ごすシーズンとなった。開幕直後こそ打撃に苦しみベンチを温めていたが、バットの長さを去年まで使っていた約85センチに戻し、バットを短く持つスタイルに変更してから調子を上げ、スタメンの座を掴んだ。打率はリーグ3位の.315、10本塁打、46打点、28盗塁はいずれもキャリアハイの成績だ。
今季キャリアハイを残した要因について「何かを変えたというのは特になくて、今までの積み重ねという感じなので、それをしっかりやっていきたいと思います」と話し、来季に向けては「より一層チームに貢献したいなと思います」と意気込んだ。
荻野を支えるファンの存在
荻野が活躍するうえで、「力になります」と支えのひとつになっているのがファンの存在だ。
故障から1年ぶりの一軍出場となった2012年6月13日の広島戦、延長10回に代走で登場すると、スタンドからは荻野の応援歌が流れた。普通であれば、打席に入ったときに選手の応援歌が流れるが、この時は代走で出場した荻野にファンが熱い声援を送った。
あの時の応援に「覚えていますね。なかなか代走で出て応援歌が流れることはないと思うので、すごく嬉しかったです。今でも印象に残っています」と感謝する。
来季は生え抜き最年長野手
今季限りで福浦和也が現役を引退し、来季は荻野と清田育宏が生え抜きの野手最年長となる。
「あまり口で引っ張っていけるタイプではないので、しっかり福浦さんのように野球に取り組む姿勢であったりというところで引っ張っていきたいと思います」。
荻野は常々「あまり引っ張っていけるタイプではない」と話し、この日も「僕は後輩からの信頼はありますかね?特に僕はなにも意識していないです」と話したが、今季自己最多の58試合に登板した東條大樹は投球テンポの良さを褒められ自信を掴み、昨季『右肩鏡視下手術、および右肘神経移行術』でリハビリ中だった原嵩も荻野から我慢の大切さを教わった。本人は謙遜するが、後輩からの信頼が厚い。
来年の10月で35歳とベテランと呼ばれる年齢に差し掛かってきたが、今季は自己最高のシーズンを送るなど体はまだまだ元気だ。「マリーンズで優勝したいと思います」。来年もZOZOマリンスタジアムでトップバッターとしてチームを牽引していく。
取材・文=岩下雄太