ニュース 2019.11.03. 11:00

「どらドラパーク」「夜明け前」「モーモー」…いまこそ取り上げたい日本の“珍名”球場

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2014年に「どらパー」で行われた公式戦では、梵のサヨナラ弾で広島が勝利

「ペイペイ」が話題に…


 日本シリーズに続いてワールドシリーズも幕を閉じ、本格的なオフシーズンの訪れを感じはじめた今日この頃。今年はまもなく「プレミア12」が開幕することもあって、引き続き野球の試合が見られるという楽しみはあるものの、徐々に野球の話題が少なくなってくる時期になった。


 そんな中、意外なニュースが野球ファンの間で大きな話題を集めた。11月1日にソフトバンクから発表された、“本拠地の改称”である。

 ソフトバンクは本拠地である福岡ドームのネーミングライツ(命名権)をPayPay株式会社が新たに取得したことを発表。2020年1月からは「福岡PayPayドーム(略称:PayPayドーム)」という呼称になることを明らかにした。

 ダイエーホークス時代の1993年、本拠地として福岡の地にオープンした「福岡ドーム」。その後、2005年にヤフーが命名権を取得したことで「福岡 Yahoo!JAPANドーム(略称:ヤフードーム)」に名称が変更されると、2013年からは「福岡ヤフオク!ドーム(ヤフオクドーム)」に改称。今回が3度目の変更になる。

 この件に関してはネット上でも様々な意見や感想が飛び交い、ついには現役選手までもがTwitterで反応する事態となったが、近年はネーミングライツの導入が普及したこともあり、ユニークな名前の球場が日本全国に増えつつある。

 今回は、NPBの本拠地ではない地方球場のなかで、特に気になる名前や愛称になっている球場をピックアップ。その意味や経緯を調べてみた。


▼ 福岡ドームの呼称

⇒ Yahoo!JAPANドーム(ヤフードーム)
・企業名:ヤフー(情報・通信)
・期 間:2005年3月~2013年1月

⇒ 福岡 ヤフオク!ドーム(ヤフオクドーム)
・企業名:ヤフー(情報・通信)
・期 間:2013年2月~2019年12月

⇒ 福岡 PayPayドーム(PayPayドーム)
・企業名:ヤフー(情報・通信)
・期 間:2020年1月~


夜明け前スタジアム(岐阜県中津川市)


 岐阜県中津川市にある「中津川公園野球場」は、2008年に完成した比較的新しい球場。高校野球や大学野球、社会人野球といったアマチュア野球の試合で使用されているが、両翼100メートル・中堅122メートルと県内でもトップクラスの広さを誇り、バックストップも19.5メートルと、プロ野球にも対応できる本格的な仕様となっている。

 そんな中津川公園野球場には愛称がある。その名も『夜明け前スタジアム』──。公式HPにも記載されている、オフィシャルの愛称だ。

 なんともロマンチックな愛称だが、調べてみると球場がオープンする前年の2007年11月に決定している。一般公募により選ばれ、中津川市出身の小説家・島崎藤村が書いた長編小説「夜明け前」がその由来となったのだとか。

 地元出身の偉人の名前を冠した球場名と言うのはさほど珍しくはないものの、その人物の作品からというのは数少ない例。今後もどこかで同じ流れを汲む球場が誕生するかもしれない。


CHIKKIDOUANモーモースタジアム(三重県松阪市)


 三重県松阪市にある「松阪公園グラウンド」は、昭和24年に建設された歴史ある市営のグラウンド。硬式野球は不可となっているものの、両翼90メートル・中堅120メートルという広さを誇り、軟式野球のほかにもソフトボールやサッカーなどにも使われるという。

 そんなグラウンドの愛称というのが、『CHIKKIDOUANモーモースタジアム』。読みは「ちっきどうあん・もーもーすたじあむ」となる。

 松阪市は2012年からネーミングライツを取り入れており、現在の愛称は2018年の7月に変わったばかり。地元で喫茶・まちかど博物館「竹輝銅庵(ちっきどうあん)」を運営しているソフト開発・販売会社「情報システム・J・T株式会社」が3年間のネーミングライツを取得した。

 そこまでで“CHIKKIDOUAN”は理解できたのだが、引っかかるのは“モーモー”について。ここは市の公式HPでは触れられていなかったが、伊勢新聞から配信されていた愛称変更時のニュースを読んでみると、「松阪というと牛だからモーモー」という社長のコメントが掲載されている。なるほど。

 ちなみに、この1つ前の愛称は『513BAKERYスタジアム松阪』(こいさんべーかりー・すたじあむまつさか)。三重県津市に本社を置く飲食店経営の「株式会社コイサンズ」が権利を持っていて、同社オリジナルブランドの外食店「スペイン石窯パン 513BAKERY」から名前が付けられていた。ユニークな名前が連続している球場だけに、今後どのような変遷をたどっていくのか、注目だ。


どらドラパーク米子市民球場(鳥取県米子市)


 最後に紹介するのが、鳥取県米子市にある「米子市民球場」。現在、高校野球の秋季中国大会が開催されているメイン球場でもあり、最近では2014年にプロ野球の公式戦が2試合開催された。

 そんな球場の愛称というのが、『どらドラパーク米子市民球場』。略称としては「どらパー」、または「どらパー米子」となるのだが、この名前には様々な想いが込められている。

 事の発端は2008年、米子市が球場を含む「東山運動公園」の施設命名権の売却先を募集。そこで手を挙げたのが、市内に本社を置く菓子メーカーの「丸京製菓」(以下、丸京)だった。

 丸京の看板商品といえば「どら焼き」。同社の本社工場が単一工場として世界一のどら焼き生産量を誇っていることから、丸京は“どらやきのまち米子”と銘打った街おこしプロジェクトを推進。その一環として、市民の健康で健やかなスポーツライフを応援すべく、米子市東山運動公園のネーミングライツ取得へと乗り出した。

 そこで、市に提案した愛称が「どらやきドラマチックパーク米子」。これは丸京の看板である「どらやき」と、“市民に元気と夢と感動を与える公園”というコンセプトから「ドラマチック」を組み合わせたもので、これが無事に採用されて2008年から「東山運動公園」は『どらドラパーク米子』の愛称になる。

 とはいえ、当初は施設内の個別施設、野球場のほかにも体育館・水泳場・陸上競技場…などについてはネーミングライツの対象外となっていたものの、後に「さらに市民の皆さんが親しみやすい“愛称”にしていくため」という市の意向もあり、野球場の名前も『どらドラパーク米子市民球場(どらパー市民球場)』と公式に改称。高校野球のニュースや、プロ野球のテレビ・ラジオ中継でその名前が呼ばれることで、“どらやきのまち米子”のアピールに一役買っている。


 新球場の誕生や施設命名権の普及もあって、カタカナや横文字も珍しくなくなった球場の名前。もしかすると、あなたの住む街や生まれた町にも、意外な名前のついた野球場が存在しているかもしれません。


文=尾崎直也
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