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ラグビー選手に転身した元甲子園球児に聞いた、野球がラグビーから学べること(後編)

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日本中を熱狂させたラグビーワールドカップ2019。日本代表の快進撃と共に、多くの人たちから称賛を集めたのがラグビーのフェアプレー精神とノーサイドの心。そんなラグビーには野球も学べることがたくさんあると思います。そこで、今回は甲子園出場経験を持ち、慶應大学卒業後にラグビー選手に転身した松下克也さん(39)に、ラグビーの魅力と野球がラグビーから学べることなどを聞きました。




慶応大学野球部を引退し、会社員として社業に専念していた松下さんが32歳でラグビー部に入部。初心者で始めた競技にどっぷりとハマって、もう7年が経った。前編でラグビーは「全員でやっている感」が強いスポーツと話した松下さん。その点について、野球と比較して詳しく話してもらった。

「野球にも『全員野球』という言葉があります。安打が続いたり、(バントや進塁打など)しぶとくつないで点をもぎ取ったときにそれを実感しますが、ラグビーの持つ『誰かの犠牲があって勝ったぞ』という感覚とは違うように思います。野球って1対1が連続するスポーツ。僕はピッチングのとき間合いや、駆け引きを大切にしてきましたが、野球は個人競技の要素が大きいですよね。誰かすごいピッチャーが一人いれば野球は勝てますが、ラグビーは凄い選手が一人いてもトライは取れない。ダン・カーターが神戸製鋼に加入して劇的に強くなりましたが、周りの選手を生かすコミュニケーション力も長けていたんだと思います。ラグビーの試合に出て思ったのは、コミュニケーションの大切さ。常にしゃべってるチームは強いんです。監督の指示を聞く時間は、ハーフタイムのときくらいしかありませんからね」

ラグビーと野球。タイムスポーツとイニング制という競技の違い、それぞれの特長を話した松下さん。最速140キロながら「間合いや駆け引き」で打者を打ち取ってきた野球選手時代の経験を振り返り語った。

■ジャッジ(野球)とレフェリング(ラグビー)の違い


「ノーサイド」。日本ではラグビー用語で「試合終了」のことを意味する。試合が終わったあと、敵味方関係なく健闘を称えあう姿は「紳士のスポーツ」と呼ばれる所以だ。野球の場合は、高校野球の試合後に一例をし、握手をし合う様子が甲子園中継で映し出されることがあるが、定まった習慣と言うわけではない。このあたりについて松下さんに聞いた。

「相手へのリスペクトは、ラグビーでは当たり前のようにありますね。そういう文化として成立しているのでしょう。審判に対してもそう。ラグビーは試合中も、審判と対話ができるんです。『今のはどこがダメだったんですか?』とその場で聞ける。ライセンスを持った審判が試合をコントロールしているんです。ラグビーは審判を味方にして戦うけど、野球は審判も駆け引きの対象になる。そういう文化がありますよね。ジャッジ(野球)と、レフェリング(ラグビー)の違いだと思います。これは競技特性であるので、どちらがいいとは言えませんが、野球の試合後の握手はもっとあってもいいかなと思いますね。試合内容によっては、悔しくて仕方ない気持ちもわかりますが。どんな内容であれ、最後は握手で終わるのがラグビー。プロ野球でも取り入れたらいいのにと思いますね」

松下さんはさらに「ラグビーが瞬間的判断で戦うのに対して、野球は時間を使って『相手の裏をかこう』という、ポーカーのような心理戦要素で戦う競技だと思います」とわかりやすく説明してくれた。そこが競技特性であり、野球の面白さなのだろう。

「ぶつけてもいいからインコースに投げて、相手を威嚇しよう。そういう考えは高校時代にありました。そうでもしないと、強豪私学には勝てないですからね。フェアーじゃないことも戦術の一つ、というのが野球の面白さでしょう。野球もラグビーもどっちも大好きですよ。体が続く限りラグビーで体を張って、そのあとはまた野球をやるかもしれませんね」。
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