来季の三遊間は?
2019年シーズン、最下位に沈んだヤクルトがいち早く動いた。10月28日にアルバート・スアレス、スコット・マクガフの両外国人投手の残留を発表。その2日後となる10月30日には遊撃手候補としてアルシデス・エスコバーを獲得した。
エスコバーは2019年シーズンこそAAAでの出場のみに終わっているが、MLB通算では1437試合に出場し、通算1367安打を放っている実力者。ロイヤルズ在籍時の2015年にはアメリカン・リーグ遊撃手部門でゴールドグラブ賞を獲得している守備の名手でもある。現在32歳とまだまだ老け込む年齢ではなく、新天地での活躍に大きな期待がかけられている。
2019年シーズンのエスコバーは、マイナーで遊撃(49試合)と三塁(41試合)を守っており、ヤクルトでもこの2ポジションのどちらかを守ることが濃厚。その他の選手の状況を見て高津臣吾新監督が判断することになるだろう。
ヤクルトは2019年シーズンに三塁と遊撃の両ポジションを固定できなかった。三塁は村上宗隆が開幕スタメンを掴んだが、シーズン途中に一塁へと配置転換。その後は太田賢吾や広岡大志、大引啓次らが起用され、レギュラーと呼べる選手は不在だった。
遊撃手も一昨シーズンに定位置を掴んだ西浦直亨が故障で離脱したため、今季は太田や広岡、そして奥村展征といった若手がしのぎを削るポジションに。終盤戦で広岡が打撃でアピールし、一歩抜け出した感はあるが、今回はそのポジションを本職とするメジャーのタイトルホルダーを招へい。エスコバーが遊撃で起用されるようなら、広岡は来季も複数ポジションでの定位置争いに臨むことになる。
「内野4人、外野3人」枠に留まらないポジション争い
こうした内野のポジション争いは、必ずしも外野陣が傍観できる問題ではない。野球の試合でフィールドに立てるのは9人。仮に同ポジションで打撃が光る選手が複数いた場合は、適性のある選手をコンバートして出場機会を与えることになる。
山田哲人(二塁)、村上(一・三塁)、エスコバー(遊撃・三塁)が順当にポジションを掴むことになれば、内野陣では太田賢吾、広岡大志、西浦直亨、宮本丈、吉田大成らが一つのポジションを争うことになる。それぞれが打撃で存在感を示せば、いずれかの選手に外野コンバートの話が出てきてもおかしくはないだろう。
ヤクルトの2019年シーズンの外野を振り返ると、ウラディミール・バレンティン、青木宣親、雄平の3人でほぼ固定されていた。
しかし、バレンティンは現段階で残留契約に至っておらず、2020年シーズンの去就は未定。また、全員が35歳を超える高齢であり、1年間を通して働くことができるのかは定かではない。実績のある選手ばかりだが、先のことを考えると休養を与えながら、若い選手の出番を増やしていきたいところだ。
控え選手を見渡すと、山崎晃大朗や塩見泰隆、さらには2年目のシーズンを控える中山翔太と浜田太貴らがレギュラーの座を虎視眈々と狙っている。俊足巧打の山崎に走攻守揃った塩見。そしてスラッガータイプの中山に浜田と、各々の特長を武器にベテラン外野陣を切り崩そうと奮闘しているのが現状だ。
しかし、前述の通り、助っ人・エスコバーが無事に内野の一角を全うし、若手内野手の状況次第では“新たな外野手”がポジション争いに参戦してくる可能性すらある。秋季キャンプを経て、来年の春にどのような体制でシーズンに臨むのか――。助っ人の加入で激しさを増すヤクルト野手陣のポジション争いにも注目だ。