痛々しい赤あざを残しながら7回0封の快投劇
ナショナルズのワールドシリーズ(WS)初制覇で幕を閉じた今年のメジャーリーグ。スティーブン・ストラスバーグ投手が同シリーズMVPに輝いたが、シーズン中からともに投手陣を牽引してきたマックス・シャーザー投手も世界一に大きく貢献した。
シャーザーといえば3度のサイ・ヤング賞、さらに4度の最多勝、3度の奪三振王と、通算170勝(89敗)を誇るメジャー屈指の右腕。35歳となった今季は2度の離脱もあり投球回は172回1/3にとどまったが、それでも11年連続となる規定投球回クリアを果たし11勝7敗、防御率2.92の好成績。4月には史上3番目の速さで通算2500奪三振にも到達した。
驚かされたのが6月19日(日本時間20日)のフィリーズ戦。右腕は前日の試合前、バント練習中の自打球が顔面を直撃し鼻を骨折。さすがに翌日の先発は回避するかと思われたが、登板を直訴し痛々しい赤あざを残しながらもマウンドに上がった。試合が始まるといつも通りの投げっぷり。フィリーズ打線を7回無失点に封じ、6月は6戦6勝、防御率1.00の快進撃で月間MVPに選ばれた。
ポストシーズンでもリリーフ含め6試合に登板し、3勝0敗、防御率2.40をマーク。アストロズとのワールドシリーズでは予定されていた第5戦の先発を首痛により回避したが、それでも満身創痍のなか3勝3敗で迎えた第7戦に登場。第1戦先発に続き5回2失点と粘り、ワールドシリーズ初制覇への土台を作った。
『2010年代最高のFA契約』の1位に選出!
ダイヤモンドバックス時代に頭角を現し、タイガース時代は今年のワールドシリーズで敵となったジャスティン・バーランダーらとともに切磋琢磨。2013年に開幕13連勝を含むギャリア最多となる21勝(3敗)を挙げるなど、投手最高の栄誉、サイ・ヤング賞を初受賞した。
そして2015年1月、7年総額2億1000万ドル(約248億)の超大型契約でナショナルズへ移籍。これは当時、ドジャースと7年総額2億1500万ドル(約254億)で契約したクレイトン・カーショーに次ぐ、投手史上歴代2位の破格契約だった。すでに30代で、キャリア下り坂での大型契約を不安視する声もあったが、蓋を開けてみればナショナルズ加入後の5年間もほぼフル稼働。158試合登板で1050回2/3を消化し、79勝39敗、防御率2.74の好成績。ひとりで貯金40を作り出している。
ナショナルズとの契約はまだ2年残っているが、10月末にMLB公式サイトによる『2010年代最高のFA契約トップ10』との記事で堂々1位にランクイン。個人成績のみならずチームも初のワールドチャンピオンと、シャーザーの傑出した働きぶりは、今後もメジャー史に残る大型契約の成功例として語り継がれていくだろう。
今オフのFA市場にも、同僚のストラスバーグ(31歳/ナショナルズFA)、ゲリット・コール(29歳/アストロズFA)、マディソン・バムガーナー(30歳/ジャイアンツFA)、リュ・ヒョンジン(32歳/ドジャースFA)ら、多くの好投手がラインナップされている。彼らはシャーザーような大型契約を勝ち取れるのか、また、金額に見合った活躍に至るか注目したい。