「日本らしい、我々の勝ち方」
『第2回 WBSC プレミア12』もスーパーラウンド3日目。前日のアメリカ戦に敗れた日本は、ここまで今大会無敗を続けてきたメキシコ相手に3-1で勝利。オープニングラウンドから持ち越しの1勝を含めたスーパーラウンドの成績を3勝1敗とし、決勝進出に向けて一歩前進した。
試合後、会見に登場した侍ジャパンの稲葉篤紀監督は「今日は日本らしい、我々の勝ち方ができた」と晴れやかな表情で語る。
「まずは今永が強力・メキシコ打線を1安打。本当に素晴らしい投球だった。リリーフも被安打ゼロ。それぞれが本当に素晴らしい投球をしてくれた」と、まずは好投を見せた4人の投手に賛辞を送りつつ、「初回と2回に得点。まず先制点を取れたことがチームの流れになった」と、課題だった打線が序盤から繋がった点を大きなポイントに挙げた。
大幅な打順変更の意図は…?
ここまで苦戦が続く打線について、この日は相手先発が左腕だったこともあり、1番から5番までを右打者で固めるなどの大幅な変更を講じた稲葉監督。その狙いは以下のように説明している。
「まずは菊池(涼介)が出られない(=前日の守備時に負傷)というなかで、二塁はトノ(外崎修汰)にしようと。そこから入って(山田)哲人が一塁に行き、浅村(栄斗)は指名打者に。守備を決めてから打順を決めていきました。並びは昨晩ある程度決めていたんですが、今日のお昼過ぎくらいに『やっぱり浅村は3番に持ってきた方がいいのではないか』と。(坂本)勇人の2番は決めていたので、3番・5番をどうしようかというところで、浅村を先にしようと。この1~5の中で点が取れるような流れを作りたかった」
その結果、初回の攻撃は2番で起用した坂本が久々の安打で口火を切ると、頼れる4番・鈴木誠也の適時打で先制に成功。5番に据えた外崎が安打で続き、対左ということもあって6番に下げた近藤健介が追加点となる適時打。初対決の投手に手間取る姿が多々見られた打線が、初回から機能した。
「野球の神様が絶対に見ていてくれている」
そして2回も。先頭で死球を選んだ會澤翼を9番に下がった丸が送り、一死一・二塁として2番の坂本が適時打。これまでのうっぷんを晴らすかのような2打席連続の快音で、チームに大きな追加点をもたらした。
前日まで極度の不振に苦しみ、アメリカ戦も4打数無安打・3三振と良いところがなかった坂本。前夜の試合後会見でも名指しで質問が飛び、「これからしっかりと話し合う」としていた男を、ここに来て2番に持ってくるという決断の裏にはどんな経緯があったのか。指揮官は以下のように語っている。
「勇人は巨人でも2番を打っていました。ジャパンではたしか1試合しか試していなかったと思うんですが、今日のオーダーは守備から組んでいって、並べてみたときに2番が良いんじゃないかと。特別なアドバイスをしたわけではないですが、練習の中でも室内で打ってきたりだとか、“彼の練習”というものをいろいろとやっていた。沖縄から合流して彼の練習する姿を見てきて、台湾でも自分で考えていろいろなトレーニングをしながら、調整してきてくれていた姿をずっと見てきた。そういったことは必ず大事なところで活きてくるんだと。努力は野球の神様が絶対に見ていてくれていると。そういう想いも強かったので、そういった部分も含めて、今日は彼の2番に期待していました」
序盤で得点を挙げて以降は苦しい時間も長くなったものの、ここに来て指揮官が言う「日本らしい、我々の勝ち方」ができたこと。そして、試行錯誤を続けてきた中で、不振に苦しんだ選手たちのバットに光が差してきたことは今後に向けても非常に大きい。
「このチームで試合ができるのも韓国戦と、その先の決勝、あと2試合。悔いの残らないように、全員で結束力をもって戦っていく」。日本はこのあと2日空けて、16日(土)には宿命のライバル・韓国とのスーパーラウンド最終戦が待っている。
勝てば前回届かなかった決勝の舞台への道が開く。泣いても笑っても残すは2試合だけ。苦しみながらも全員で苦境を乗り越えてきた侍ジャパンは、“結束力”を武器に悲願のプレミア12制覇へと駆け上がることができるだろうか。
文=尾崎直也