ニュース 2019.11.22. 17:33

「ショートは何人いてもいい」?根尾にもコンバート案が浮上、プロ入り後に広がる可能性

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9月29日の阪神戦、7回に遊撃の守備に就きプロ初出場を果たした中日・根尾

「ショート一本」挑んだ金の卵


 “運命の一日”、ドラフト会議からあっという間に1カ月が経過。各球団が指名選手との交渉を進め、なかには早くも『新入団選手発表会』を開催するチームも出てきた。

 そんな中、1年前のこの時期は“目玉”の一人として大きな注目を浴びていた男が、はじめての契約更改を終えた。2018年のドラフト会議で4球団から1位指名を受け、中日に入団した根尾昂──。高校時代は大阪桐蔭“最強世代”の中心選手として、チームを甲子園・春夏連覇へと導いた立役者である。

 走攻守の3拍子のみならず、投手としての才能も持ち合わせていた男がプロで一体どんなキャリアを歩んでいくのか。前代未聞の“二刀流”に挑戦してメジャーへと旅立った大谷翔平という前例もあっただけに、より大きな注目を集めていたが、根尾は「ショート一本」で勝負することを宣言。新たな野球人生をスタートさせた。

 しかし、はじめてのキャンプを目前に控えた1月に肉離れを起こし、キャンプは二軍スタートが決定。開幕も二軍で迎えると、一軍出場はシーズン最終盤に2試合、2打席に立っていずれも三振という結果に。二軍では108試合に出場と多くの経験を積んだものの、打率は.210で本塁打も2本。自身も「悔しいシーズン」と振り返る。

 そんな中、契約更改のニュースの中には「来季から外野挑戦」の文字も。秋のキャンプから内野だけでなく外野の練習に入っていたことが伝えられていたが、自身の視野を広げるため、何より出場するチャンスを増やすため、1年目の戦いを終えたばかりのゴールデンルーキーは新たな挑戦を見据えている。


日本を代表する選手たちも…


 「遊撃手」は、二塁手とともに“センターライン”を支える内野の要。守備範囲の広さはもちろん、一塁までの距離から肩の強さも求められるだけに、基本的に運動能力の高い選手が任されることが多い。

 加えて、カットプレーやサインプレーといった考える場面も多く、状況判断の早さ・正確さも重要な要素。求められる資質が膨大な分、具体性に欠ける言葉ではあるが、上述した要素を含めた総合的な“野球センス”の高い選手が、必然的にショートというポジションに集まる、ということが推測できる。

 思えば、先日の『第2回 WBSC プレミア12』を初制覇した侍ジャパンのメンバーを見ても、最初の招集メンバー発表時には「二遊間ばかり」というコメントが多く挙がり、不安要素として指摘する声が少なくなかった。


【侍ジャパン・内野のメンバー】
山田哲人(ヤクルト)
源田壮亮(西武)
浅村栄斗(楽天)
菊池涼介(広島)
外崎修汰(西武)
坂本勇人(巨人)
松田宣浩(ソフトバンク) 
 

 改めて彼らの“本職”を見てみると、山田・浅村・菊池・外崎が「二塁」。源田・坂本は「遊撃」。7名中6名が二遊間の選手で、唯一の例外は三塁を本職としている松田だけだった。

 しかも、そんな彼らのキャリアをさかのぼって見ると、山田も履正社高は強打の遊撃手として鳴らし、プロデビュー戦となった2011年のクライマックスシリーズ第2戦も「1番・遊撃」での出場。浅村も大阪桐蔭高時代は大型ショートの代表格で、2008年夏は「1番・遊撃」で全試合に出場。打率.552、2本塁打の大暴れで全国制覇に大きく貢献している。

 また、誰もが認める二塁の名手・菊池も、中京学院大時代は遊撃手としてベストナインを5度受賞。二塁に回ったのはプロに入ってからのこと。外崎も弘前実業高時代は遊撃手で、大学でも遊撃と二塁がメイン。プロ初スタメンも「8番・遊撃」である。

 そして、今では球界屈指の三塁手として知られる松田も、実は高校までは遊撃手。三塁手になったのは、大学に進学してからのことだった。


「ショートは何人いてもいい」?


 アマチュア時代に名遊撃手として鳴らした選手も、プロの世界には各地でそう呼ばれていた選手たちが集まっている。しかし、ショートのポジションは1席だけ。レギュラーの選手からその座を奪い取るというのは、そうかんたんなことではない。

 ただし、その素材は足も速く、肩も強い。そんな運動能力に優れた選手たちが、プロの投手にも慣れて打撃でも結果を残し始めたら…?首脳陣が違うポジションで起用したいと思うのも当然の流れだろう。


 ここで、根尾と同じ昨年のドラフトで指名を受け、プロの世界へと入ってきた遊撃手を振り返ってみよう。


【2018年のドラフトで指名された遊撃手】

▼ 広島
1位 小園海斗(報徳学園高)
4位 中神拓都(市岐阜商高)
7位 羽月隆太郎(神村学園高)

▼ ヤクルト
8位 吉田大成(明治安田生命)

▼ 巨人
2位 増田 陸(明秀学園日立高)

▼ DeNA
6位 知野直人(BCリーグ・新潟)

▼ 中日
1位 根尾 昂(大阪桐蔭高)

▼ 阪神
2位 小幡竜平(延岡学園高)
3位 木浪聖也(ホンダ)

▼ オリックス
1位 太田 椋(天理高)
5位 宜保 翔(未来沖縄高)

▼ ロッテ
7位 松田 進(ホンダ)

▼ 楽天
6位 渡辺佳明(明治大)


 広島は昨年のドラフトで遊撃手を3名も獲得。小園は高卒1年目ながら、シーズン後半からは一軍に昇格。守備に就いた55試合はすべてショートでの出場だった。

 一方、ファームの遊撃手事情を見ると、守備に就いた数では途中で一軍に昇格した小園と、アカデミー出身のフアン・サンタナの49試合というのが最多出場で、中神はサード、羽月はセカンドが主戦場になっている。

 かつての菊池もそうだったが、ショートで獲ってから、その後は本人の適性やチーム事情も見極めながら、適したポジションで育てていく。これは近年の広島では珍しいことではない。

 「ショートは何人いてもいい」?

 誰かがそう言ったわけではないが、すでに一軍で出場している小園も含めて3人の遊撃手を獲得しながら、今年のドラフトでも花咲徳栄高の遊撃手・韮沢雄也を指名したあたりからも、そんな方針が垣間見える。


 今年のドラフトでも、ショートを主戦場としてアピールしてきた将来のスター候補たちが指名を受けた。

 しかし、この中の全員が「ショート一本」でプロのキャリアを進んでいくことができるかというと、それは限りなく不可能に近い。それでも、他のポジションに回って、日本を代表する選手へと成長する可能性は大いにある。

 根尾や、金の卵たちの将来は…?これからの戦いから目が離せない。


【2019年のドラフトで指名された遊撃手】

▼ DeNA
1位 森 敬斗(桐蔭学園高)
5位 田部隼人(開星高)

▼ 阪神
4位 遠藤 成(東海大相模高)

▼ 広島
4位 韮沢雄也(花咲徳栄高)

▼ ヤクルト
5位 長岡秀樹(八千代松陰高)
6位 武岡龍世(八戸学院光星高)

▼ 西武
4位 川野涼多(九州学院高)

▼ 楽天
1位 小深田大翔(大阪ガス)

▼ ロッテ
5位 福田光輝(法政大)

▼ 日本ハム
3位 上野響平(京都国際高)

▼ オリックス
2位 紅林弘太郎(駿河総合高)



文=尾崎直也
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