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子どもに経験させたい、野球を楽しむための三つの要素「できる」「わかる」「かかわる」

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東京農業大学応用生物学部でスポーツ科学、発達科学、コーチングなどをテーマに研究を行っている勝亦陽一准教授。自身も早稲田大学の野球部でプレーしたものの、プロに多くの選手を輩出するようなレベルの中で、試合に出られない苦しさを味わったと前編では語ってくれました。
後編ではそのような状態から前向きな気持ちになれた理由、また少年野球の現場で諦めてしまう選手を作らないために重要なことなどについて聞きました。




——早稲田大学の野球部ではトップレベルの選手達の中でなかなか試合に出ることもできず、気持ちが切れてしまったこともあったとおっしゃいましたが、それでも辞めずに立ち直れたのはなぜですか?

勝亦「当時の野村(徹)監督は、補欠であっても必ずチャンスを与えてくれる方だったんですね。わずかでもチャンスがある、少しでも光があると思うと、そのためにまた頑張ろうと思えますよね。実際に3年間補欠だった選手が、4年生になって少ないチャンスで活躍して、その後ずっとリーグ戦に出続けていた例もありました。私の場合は「選手で活躍」から「研究者、指導者になる」ことに目標を切り替えました。監督も私の決断を後押ししてくださり、最終的には学生コーチとして「チームのために」グラウンドに立つことができるようになりました」

——そうやって立ち直れる選手と立ち直れない選手、言い方を変えると頑張れる選手と頑張れない選手が出てくるのは何が原因だと思われますか?

勝亦「一番大きいのは目標設定だと思います。今の自分の状況をまず理解して、次のステージに行くためにはどういうところを伸ばしていけば良いか。それがしっかりとできていれば、試合に出られない状況が続いたとしても、前向きに取り組んでステップアップしていけると思うんですよね。ただそこで例えば『試合に出る』といった、自分では決められないことを目標にしてしまうとなかなか難しいです。個人の目標に他人の評価が関係していると、それに対する行動も明確ではなくなりますから。そういう意味ではピッチャーの方が目標設定はやりやすいと思います。例えばボールのスピードという明確な基準を設定できますから。逆に野手は全てのプレーが対相手なので、なかなか難しいです。そんな中でもいかに一つ一つのプレーに対して自分ができているのか、できていないのか、客観的に評価することが重要になってきますね」

——先生は大学での経験ですが、小学校や中学校から人数が多くて、そういう経験をしてしまっている子どもも多いように思います。

勝亦「部員数が多いにも関わらず、勝ちたいからレギュラーメンバーを固定するチームがあります。例えば30打席立った選手と3打席しか立っていない選手がいます。その二人の能力や頑張りを客観的に比べることは難しいですよね。そもそも、打席に立てるかどうかを大人の曖昧な評価で決めているのですから。そうすると、試合に出られない子はいつまでたっても出られない。少なくとも小・中学生の間は、このような環境はお勧めできません。大人が勝手に決めた『頑張り』という曖昧な基準で、子どもの人生が変わってしまうことも往々にしてありますから」

——そうならないためにも指導者はどのようなことに気をつければ良いでしょうか?

勝亦「野球を楽しむための『できる』、『わかる』、『かかわる』という三つの要素を大事にしてもらいたいです。『できる』というのはプレーのことです。野球には打つ、投げる、捕る、走るなど様々な要素があります。打つことが苦手でも、投げることが上手な子どももいます。苦手な打つことも、繰り返しやっているうちにできるようになることもあります。そうやって何か一つでも『できる』ことがあれば野球は楽しくなります。『わかる』は野球のルールを理解すること、野球の面白さに気づくことがあります。よく言われる“アハ体験”のような気づくことも含まれます。「こうするとこうなる」という原因と結果の関係や上達のコツを理解することも楽しさに繋がります。最後は『かかわる』。野球は攻撃と守備が分かれています。打撃もそうですが、特に守備ではポジション別に役割があります。それぞれがどんな役割を果たすのか、どうやってチームメイトと協力するのか。チームメイトとの関わりから生まれる楽しさも重要ですよね。この三つのうち一つでも経験できればそれが頑張れる要素になると思います」
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