チーム全体で8勝
ロッテが近年課題のひとつになっているのが、左投手が不足していること。
成瀬善久がFA権移籍した2015年以降は、左腕全体で11勝(15年)、5勝(16年)、4勝(17年)、4勝(18年)、8勝(19年)と、この4年間は10勝にも届いていない。
左腕不足とはいっても、それを補うだけの右投手がいれば問題ないと言われればそれまでだが、チームバランスを考えれば左投手がいた方が選択肢も広がる。
【2015年】11勝
チェン・グァンユウ 5勝(先:4勝 リ:1勝)
古谷拓哉 3勝(先:3勝 リ:0勝)
藤岡貴裕 2勝(先:0勝 リ:2勝)
木村優太 1勝(先:1勝 リ:0勝)
【2016年】5勝
松永昂大 3勝(先:0勝 リ:3勝)
チェン・グァンユウ 1勝(先:1勝 リ:0勝)
藤岡貴裕 1勝(先:0勝 リ:1勝)
【2017年】4勝
チェン・グァンユウ 3勝(先:1勝 リ:2勝)
松永昂大 1勝(先:0勝 リ:1勝)
【2018年】4勝
松永昂大 2勝(先:0勝 リ:2勝)
土肥星也 2勝(先:2勝 リ:0勝)
【2019年】8勝
小島和哉 3勝(先:3勝 リ:0勝)
松永昂大 2勝(先:0勝 リ:2勝)
チェン・グァンユウ 1勝(先:0勝 リ:1勝)
土肥星也 1勝(先:1勝 リ:0勝)
中村稔弥 1勝(先:0勝 リ:1勝)
左腕が台頭
今季もチーム全体で左腕の勝利数は8勝だが、昨季までと違うところは、7年連続40登板以上を達成した松永昂大以外にも、左腕が台頭し始めているところ。
チェンはロングリリーフ、左のワンポイント、ビハインドなど様々な局面で投げ、シーズン自己最多の44試合に登板。特に今季は春季キャンプからインコースのストレートが素晴らしかった。本人も「ものすごく生命線だから。来年もインコースに攻めていきたいですね」と話す。シーズン終了後には、『WBSC 世界野球プレミア12』のチャイニーズ・タイペイ代表の一員として戦った。
ルーキーの小島和哉は、左腕チームトップの3勝をマーク。デビュー戦は苦しい投球となったが、降格後はファームで安定した投球を見せ、夏場以降は「1試合1試合が自分にとっても勝負の試合というか、今後の立ち位置が決まってくる。その1試合1試合を全力でやることを心がけてやっています」と強い気持ちで投げ一軍のローテーションに定着した。
同じくルーキーの中村稔弥は、フレッシュオールスターで優秀選手賞を受賞すると、シーズン後半からは一軍に定着。8月24日のソフトバンク戦ではリリーフで3回1/3を投げ、3失点でプロ初勝利を挙げた。「経験はできましたし、しっかり投げれば抑え込めたところはあった。そこは自信になりました」と来季に向けて手応えをつかんだ。
昨年の秋季キャンプで大隣憲司二軍投手コーチの助言で下半身主導の投球にし、制球が安定した土肥星也は1勝だったものの、ファームではチームトップの9勝。10月に『左肘の関節鏡視下クリーニング術』を受けたが、本人は「急いでも仕方がないので、キャンプでピッチングができるくらいに持ってこれればいいかな」と来年の春季キャンプでの復帰を目指している。
永野、成田、山本もいる!
その他にも、永野将司、成田翔、山本大貴が控えている。シーズン通して試行錯誤した永野は10月に行われたフェニックス・リーグで「ツーシームも40前後で空振りも取れたし、右バッターに投げた球は全部ゴロだったので、低めに集まれば使えるかなという感じですね」と課題にしていた速い変化球に手応え。
成田もフェニックス・リーグ中に、やや肘を下げた投球フォームに変更し、直球のスピードが上がった。捕手の柿沼友哉も「スピードも上がりましたし、そもそものボールの強さが変わりましたね」と太鼓判を押す。
山本もシーズン終盤から安定し、フェニックス・リーグでは打ち込まれる試合もあったが、打たれた次の登板でしっかりと抑えるなど精神面で成長した姿を見せた。小野二軍投手コーチは「自分のなかで修正ポイントを見つけられているから切り替えられているのかなと感じています」と分析した。
大隣コーチがみた左腕
チーム唯一のサウスポーの大隣二軍投手コーチは、マリーンズのサウスポーについてどう見ているのかーー。
「左がいないというのは本人達もわかっていると思う。左ってある程度重宝される部分がたくさんあると思うんですけど、まずは自分たちがそのチャンスを掴み取っていくか。がむしゃらになってやってほしいという気持ち」。
シーズン中に取材したときには、このように話してくれた大隣コーチ。チェン、土肥、小島、中村稔は今季一軍を経験し、さらには永野、成田、山本もいる。課題だった左投手も、来年以降の若手投手陣の頑張り次第で、チームのストロングポイントに変わる可能性も秘めている。
取材・文=岩下雄太