同一年度に複数のFA選手を獲得したのは過去15回
国内FA権を行使した選手たちの去就がすべて決まり、3日には楽天からロッテへFA移籍した美馬学投手が入団会見を行うなど、新天地での入団会見も続々と行われている。
内野をどこでも守れるユーティリティー性と強いリーダーシップを兼ね備えている鈴木大地(ロッテ)は楽天へ。先発ローテーションとして期待される美馬学(楽天)と俊足巧打の福田秀平(ソフトバンク)は揃ってロッテを新たな活躍の場に選んだ。
ロッテにとっては、仲田幸司(阪神/1995年)、大村三郎(巨人/2011年)、涌井秀章(西武/2013年)に続いてのFA選手獲得であり、球団史上初めて、同一年度に複数の選手をFAで獲得したことになる。
FAの歴史を振り返ってみると、同一年度に複数のFA宣言選手を獲得した例は15回。記憶に新しいところでは、昨オフに広島から丸佳浩を、西武から炭谷銀仁朗を獲得した巨人が挙がる。その巨人が最多の9回で、ソフトバンク(前身球団のダイエー含む)が3回、阪神、DeNA、ヤクルトが各1回ずつで続く。
戦力補強という点で、実績のある選手を獲得できるFAは、ドラフトや新外国人選手よりも即効性が期待できる補強のひとつと言えるだろう。同一年度にFA宣言選手を複数名獲得することは大きな戦力アップを促しそうだが、すべてがそう単純なものでもないところが興味深い。
15回中7回は翌年の成績に結びつかず!?
複数のFA宣言選手を獲得した球団の翌年のチーム成績を見ると、前年度より順位が上がったのは6回。一方で、下がったのも6回、変わらなかったものが3回となっている。ちなみに、順位に変動がなかった3回は、1位から1位が2回、6位から6位が1回だった。そういった観点から言うと、効果的だったのは8回、結果に反映できなかったことが7回ということになる。
複数獲得が最多の巨人と、それ以外の球団で比べてみても大きく数字は変わらない。巨人は9回の内3回は順位を下げており、その他の球団も6回中2回は順位を下げ、1回は最下位から浮上すらできなかった。チームの順位は様々な要素が絡み合った結果であり、それほど単純な話ではないが、半分ほどはチームの結果に結びついていないことになる。
FA制度ができて2年目の1994年シーズンオフ、巨人とダイエー(現ソフトバンク)の2球団が複数名の選手をFAで獲得した。翌年、巨人は1位から3位に、ダイエーも4位から5位へと2球団そろって順位を落としている。当然、FA選手だけの責任ではない。しかし、FA選手の獲得が必ずしも特効薬になるわけではないことも事実だ。
果たして、美馬と福田を獲得したロッテは、2020年にどのような順位でシーズンを終えるのだろうか――。FA選手の獲得が順位を上げること、ひいては優勝に結びつくことを期待したい。
同一年度にFA選手を複数獲得した球団の翌年順位
▼ 巨人
<94年1位 ⇒ 95年3位>
・川口和久(広島 ⇒ 巨人)
17試合(91.2回) 4勝6敗 防御率4.42
・広沢克己(ヤクルト ⇒ 巨人)
131試合 打率.240(446-107) 本20 打点72
<99年2位 ⇒ 00年1位>↓
・工藤公康(ダイエー ⇒ 巨人)
21試合(136回) 12勝5敗 防御率3.11
・江藤 智(広島 ⇒ 巨人)
127試合 打率.285(485-138) 本30 打点87
<05年5位 ⇒ 06年4位>↓
・野口茂樹(中日 ⇒ 巨人)
1試合(3回) 0勝0敗 防御率9.00
・豊田清(西武 ⇒ 巨人)
38試合(38回) 1勝4敗13S7H 防御率3.32
<06年4位 ⇒ 07年1位>↑
・門倉 健(横浜 ⇒ 巨人)
12試合(31.2回) 1勝5敗 防御率5.97
・小笠原道大(日本ハム ⇒ 巨人)
142試合 打率.313(566-177) 本31 打点88
<11年3位 ⇒ 22年1位>
・村田修一(横浜 ⇒ 巨人)
144試合 打率.252(516-130) 本12 打点58
・杉内俊哉(ソフトバンク ⇒ 巨人)
24試合(163回) 12勝4敗 防御率2.04
<13年1位 ⇒ 14年1位>
・片岡治大(西武 ⇒ 巨人)
126試合 打率.252(429-108) 本6 打点32
・大竹寛(広島 ⇒ 巨人)
22試合(129回) 9勝6敗 防御率3.98
<14年1位 ⇒ 15年2位>
・金城龍彦(DeNA ⇒ 巨人)
36試合 打率.233(90-21) 本1 打点10
・相川亮二(ヤクルト ⇒ 巨人)
40試合 打率.313(99-31) 本4 打点17
<16年2位 ⇒ 17年4位>
・森福允彦(ソフトバンク ⇒ 巨人)
30試合(20.2回) 1勝3敗 防御率3.05
・陽岱鋼(日本ハム ⇒ 巨人)
87試合 打率.264(330-87) 本9 打点33
・山口俊(DeNA ⇒ 巨人)
4試合(21回) 1勝1敗 防御率6.43
<18年3位 ⇒ 19年1位>
丸佳浩(広島 ⇒ 巨人)
143試合 打率.292(535-156) 本27 打点89
炭谷銀仁朗(西武 ⇒ 巨人)
58試合 打率.262(126-33) 本6 打点26
▼ ソフトバンク
<94年4位 ⇒ 95年5位>
・石毛宏典(西武 ⇒ ダイエー)
52試合 打率.200(120打数24安打) 本1 打点11
・工藤公康(西武 ⇒ ダイエー)
22試合(163回) 12勝5敗 防御率3.64
<10年1位 ⇒ 11年1位>
・細川亨(西武 ⇒ ソフトバンク)
97試合 打率.201(219-44) 本1 打点20
・内川聖一(横浜 ⇒ ソフトバンク)
114試合 打率.338(429-145) 本12 打点74
<13年4位 ⇒ 14年1位>
・中田賢一(中日 ⇒ ソフトバンク)
25試合(145回) 11勝7敗 防御率4.34
・鶴岡慎也(日本ハム ⇒ ソフトバンク)
98試合 打率.216(162-35) 本0 打点25
▼ 阪神
<10年2位 ⇒ 11年4位>
・小林宏之(ロッテ→阪神)
42試合(39回) 1勝5敗21H 防御率3.00
・藤井彰人(楽天 ⇒ 阪神)
99試合 打率.223(265-59) 本2 打点15
▼ DeNA
<11年6位 ⇒ 12年6位>
・鶴岡一成(巨人 ⇒ DeNA)
102試合 打率.189(201-38) 本1 打点15
小池正晃(中日 ⇒ DeNA)
88試合 打率.192(130-25) 本3 打点19
▼ ヤクルト
<14年6位 ⇒ 15年1位>
・大引啓次(日本ハム ⇒ ヤクルト)
96試合 打率.225(311-70) 本5 打点41
・成瀬善久(ロッテ ⇒ ヤクルト)
14試合(79.1回) 3勝8敗 防御率4.76
▼ ロッテ
<19年:4位 ⇒ 20年?位>
美馬学(楽天 ⇒ ロッテ)
福田秀平(ソフトバンク ⇒ ロッテ)