ニュース 2019.12.24. 15:31

最近の『沢村賞』受賞者、移籍しがち…?残るは巨人・菅野智之だけ

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巨人・菅野(C)Kyodo News

涌井が2度目の移籍


 ロッテの涌井秀章が金銭トレードで楽天へ移籍した。これまでに3度も最多勝を獲得した経験を持ち、プロ15年のキャリアで通算133勝をマークするなど、その実績は球界屈指。日本プロ野球を代表する右腕の1人であることは誰しもが認めることだろう。

 新天地となる楽天は則本昂大、岸孝之といったエース格に次いで、今季は石橋良太、弓削隼人の若き両腕が台頭。さらにベテランの域に差し掛かる辛島航、塩見貴洋らに加え、クローザーの松井裕樹が先発転向を明言するなど、先発ローテ争いは激戦必至だ。

 涌井自身も「希望はもちろん先発ですけど、まずポジションを勝ち取らなきゃいけないので。キャンプでアピールして自分が投げるポジションを獲得したい」と、競争に臨む姿勢を示している。今季は主に中継ぎで起用されていた2013年シーズン以来、6年ぶりに規定投球回に届かなかったこともあって、2020年は新天地で復活を期すシーズンとなりそうだ。


 楽天の石井一久GMは、涌井の獲得について「実績があって長いイニングを投げられるピッチャーを探していた」とコメントしているが、この“実績”のひとつに先発投手最高の栄誉である『沢村賞』がある。涌井は西武時代の2009年に受賞しており、2013年のオフに国内FA権を行使してロッテに移籍。今回の2度目の移籍も、その“実績”が評価された。

 投手最高の栄誉としてお馴染みの沢村賞。その歴代受賞者を見てみると、あることに気が付く。受賞後、所属チームを変えている選手が少なくないということだ。そこで、今回は海外移籍のための「ポスティング制度」が整備された1998年以降に絞って、沢村賞受賞者の“その後のキャリア”に注目してみた。


75%が沢村賞受賞後に移籍


 1998年以降の沢村賞受賞者は計16人(21回)いる。そのなかで、受賞後にチームを変えなかった選手というと、外国人選手のクリス・ジョンソン(広島)。そして、斉藤和巳と攝津正のソフトバンク勢に、巨人の大黒柱・菅野智之の4人だけ。なんと、全体の75%にあたる12名は受賞後にチームを変えていた。


 外国人選手であるジョンソンはさておき、その他の日本人選手3人の所属が、このオフまでポスティング移籍を認めていなかったソフトバンクと巨人というのも興味深い。

 その移籍先を見ると、12人中8人がMLBに挑戦。FAでの移籍は上原浩治(巨人)、川上憲伸(中日)、岩隈久志(楽天)の3人。ポスティングシステムでの移籍は松坂大輔(西武)、井川慶(阪神)、ダルビッシュ有(日本ハム)、田中将大(楽天)、前田健太(広島)の5人となっている。

 また、国内FAで移籍したのが川崎憲次郎(ヤクルト)、杉内俊哉(ソフトバンク)と涌井秀章(西武)の3人。自由契約から所属を変えたのが金子千尋(オリックス)だ。


 『沢村賞』という評価を受けるほどの投手になれば、当然MLB球団からの視線も集まる。選手がよりハイレベルな舞台を求めて海を渡ることは自然の流れだろう。また、国内FA宣言からの移籍を果たした杉内と涌井も、移籍先でエースクラスの実績を残している。

 金子は自由契約からの移籍となっているが、2014年オフにはFA宣言をした後に残留。日本ハムへと移ったのは、その契約が満了した後のことだった。


 というわけで、2020年シーズンもNPBでプレーする沢村賞投手のなかで、移籍を経験していない日本人選手は菅野ただひとり、ということになる。

 ただし、このオフには山口俊が球団史上初めてポスティングシステムを利用。メジャー挑戦を実現させた。今回の“解禁”をきっかけに、菅野もMLB移籍を目指していくのか。今季は苦しいシーズンとなっただけに、余計に来季の戦いが注目を集めそうだ。

 沢村賞受賞投手は移籍する――。この流れは今後も継続するのだろうか。


近年の沢村賞受賞者まとめ

※1998年以降


▼ 1998年
川崎憲次郎(ヤクルト)
※00年にFAで中日へ移籍

▼ 1999年
上原浩治(巨人)
※08年にFAでオリオールズへ移籍

▼ 2000年
該当者なし

▼ 2001年
松坂大輔(西武)
※06年にポスティングでレッドソックスへ移籍

▼ 2002年
上原浩治(巨人)
※08年にFAでオリオールズへ移籍

▼ 2003年
井川 慶(阪神)
※06年にポスティングでヤンキースへ移籍

斉藤和巳(ダイエー)
※11年に自由契約・13年に引退表明

▼ 2004年
川上憲伸(中日)
※08年にFAでブレーブスへ移籍

▼ 2005年
杉内俊哉(ソフトバンク)
※11年にFAで巨人へ移籍

▼ 2006年
斉藤和巳(ソフトバンク) ☆移籍なし
※11年に自由契約・13年に引退表明

▼ 2007年
ダルビッシュ有(日本ハム)
※11年にポスティングでレンジャーズへ移籍

▼ 2008年
岩隈久志(楽天)
※11年にFAでマリナーズへ移籍

▼ 2009年
涌井秀章(西武)
※13年にFAでロッテへ移籍

▼ 2010年
前田健太(広島)
※15年にポスティングでドジャースへ移籍

▼ 2011年
田中将大(楽天)
※13年にポスティングでヤンキースへ移籍

▼ 2012年
攝津 正(ソフトバンク) ☆移籍なし
※18年に現役引退

▼ 2013年
田中将大(楽天)
※13年にポスティングでヤンキースへ移籍

▼ 2014年
金子千尋(オリックス)
※18年に自由契約から日本ハムへ移籍

▼ 2015年
前田健太(広島)
※15年にポスティングでドジャースへ移籍

▼ 2016年
クリス・ジョンソン(広島) ☆移籍なし

▼ 2017年
菅野智之(巨人) ☆移籍なし

▼ 2018年
菅野智之(巨人)

▼ 2019年
該当者なし


(所属は当時)

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