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切り札か? レギュラーか? スペシャリストの行く末は…

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侍ジャパンでも「切り札」として活躍した周東佑京

スポットライトを浴びた走り屋


 2019年の秋、ひとりの韋駄天が脚光を浴びた。

 『プレミア12』で1打席も立たずに盗塁王を獲得――。

 ソフトバンクに所属する周東佑京は、侍ジャパンの一員として盗塁を4度成功させ、3度ホームベースを踏んだ。大会3得点は丸佳浩、吉田正尚、浅村栄斗ら、日本が誇るクラッチヒッターを上回る数字。まさに「得点」を挙げるスペシャリストの仕事ぶりが凝縮された成績だった。

 周東はシーズン中も試合終盤の切り札として活躍。プロ2年目の今季は育成登録でのスタートだったが、開幕直前に支配下登録を勝ち取り、4月6日に初めて一軍登録されてからは抹消なし。リーグ5位の25盗塁、39得点をマークした。

 “走り屋”といえば今季は佐野皓大(オリックス)、増田大輝(巨人)、植田海(阪神)など、両リーグで活躍した選手が多数。プロキャリアの年数は違えど、いずれも一軍での出場機会を得るための「代走」から、現在のポジションを見出した選手たちだった。


【規定打席未達選手の盗塁数トップ5】
▼ セ・リーグ
1位 15個 増田大輝(巨人)
2位 14個 重信慎之介(巨人)
2位 14個 野間峻祥(広島)
4位 12個 植田 海(阪神)
5位 11個 若林晃弘(巨人)

▼ パ・リーグ
1位 25個 周東佑京(ソフトバンク)
2位 16個 木村文紀(西武)
3位 13個 辰己涼介(楽天)
3位 13個 岡 大海(ロッテ)
5位 12個 中島卓也(日本ハム)
5位 12個 佐野皓大(オリックス)


記録とお金


 それでもプロ野球選手は成績を年俸金額で評価される厳しい社会。先発出場が少ないスペシャリストたちはレギュラー選手と比べると出場機会が限られるため、自ずと盗塁数も抑えられる。今季の盗塁王は両リーグともに攻守で輝きを放ち、チームのレギュラー選手として活躍した選手。当然、年俸の金額面でも彼らを上回ってきた。

 パ・リーグの盗塁王に輝いた金子侑司(西武)はアクロバティックなスーパーキャッチでもチームを幾度となく救い6300万円増の1億2000万円で更改。セ・リーグでは近本光司(阪神)が長嶋茂雄氏の持っていた新人年間安打記録を更新し、オールスターではサイクルヒットを記録してMVPも受賞。いきなり前年比300%の大幅アップを勝ち取り、5年目の植田海を上回る4500万円でサインした。

 もちろん周東も今オフの契約更改(400万⇒2000万)で活躍ぶりを十分に認められた選手のひとり。その更改の場で口にした目標は「盗塁王」。チームは外野にバレンティンを迎え入れ、三遊間は今宮と松田、二塁は牧原、明石、川島と実力者が並ぶ。周東は内外野を守れるユーティリティ性を持ち合わせているとはいえ、レギュラー奪取には高く分厚い壁が待っている。

 ただ、視点を変えれば、それほどの戦力の中でも一軍で戦い抜いたとも言える。現時点では打席に立つよりも、終盤の勝負所で自軍の選手に代わって塁上に立つ方が相手にとっては脅威。ベンチから送り出す工藤監督にとっても、周東が貴重な存在であることは確かだ。

 ポジションは異なるが、12月23日に契約更改した嘉弥真新也(ソフトバンク)が1億1000万円で自身初の大台を突破した。サイド転向をきっかけにプロで活きる道を見出した男は「僕がまさかこうなるとは思ってなかった」と口にしたという。元はと言えば対左のワンポイント投手。職人としての仕事が評価された。

 仮に代走の職人が1億円プレーヤーになる未来が来れば、それはそれで夢がある。主に“代走の切り札”として通算228盗塁を記録した鈴木尚広氏(元巨人)の最高年俸は6000万円。周東の活躍ぶりを見れば、もしかしたらという期待もあるが――。まずはレギュラーポジション奪取を目指し、その先にある「盗塁王」へ邁進したいところ。開幕前の熾烈なポジション争いにも注目だ。
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