「ルーキー監督」、今年は3名
年が明けて2020年。プロ野球界も1月6日が仕事始めとなる球団が多く、一部では新入団選手の入寮もはじまるなど、これから徐々に新シーズンに向けた動きが慌ただしくなってくる。
球春到来、2月1日のキャンプインまであと1カ月を切った。長かったオフも残りわずかとなり、いよいよ新たな戦いがスタート。当然ながら昨年と同じメンバーということはなく、すべてのチームが何らかの変更を経て新シーズンへと臨むわけだが、なかでも大きな変化と言えば「監督」の交代だろう。
このオフは楽天・広島・ヤクルトの3球団が監督を交代した。登場順に三木肇・佐々岡真司・高津臣吾という3名が新監督となるが、二軍監督から昇格という形になるのが三木氏と高津氏で、佐々岡氏はコーチからの“配置転換”。いずれも前年までのチームを間近で見ていて、内情を理解している男たちが前監督からバトンを引き継いでいる。
現場の経験があって、よくチームを理解している、とは言ったものの、この3人は全員が一軍監督初経験。いわゆる「ルーキー監督」となる。『誰でも最初は1年生』──、歴史に名を残す名将たちにも、間違いなく就任初年度はあった。
ここでは、そんな過去のプロ野球における「監督1年目」の成績に注目。様々な角度からデータをとってみる。
半数近くがAクラス入りも、若干劣勢は否めず
今回のポイントは、「初めての一軍監督」かつ「監督就任1年目」。この2つの要素を大枠に置き、さらに以下の条件で絞っていく。
・期間:1950年から2019年シーズンまで(=2リーグ制以降)
(※1950年以前に監督経験のある人物は除く)
・就任したシーズン途中で解任された場合は集計から除外
・前監督がシーズン中に解任されて後を継いだ場合はそこを1年目とする
・監督代行は除く
1950年から昨年まで、一軍で監督を務めた人物は総勢162名(※代行は除く)。このうち、天知俊一と山本(鶴岡)一人、浜崎真二は1950年以前から監督を経験していたため、今回のリストからは除外。また、1975年に広島の監督に就任したジョー・ルーツと、1984年に日ハムの監督に就任した植村義信は、当時が初めての一軍監督就任であったが、シーズン中に解雇されたため、こちらも集計からは外すことにする。
ここで、残った157名の「はじめて一軍監督に就任した年」の成績を調べてみた。まずは順位の分布から。
▼ ルーキー監督・就任元年の順位まとめ
1位 16人(約10.2%)
2位 25人(約15.9%)
3位 29人(約18.5%)
4位 20人(約12.8%)
5位 34人(約21.6%)
6位 30人(約19.1%)
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※7位以下 3人(1.9%)
これまでの歴史上、一軍監督の就任元年にリーグ優勝を果たした監督は16名もいる。一軍監督になること自体が難しいなか、約10人にひとりの割合となった。
ただし、2位と3位を合わせて、いわゆるAクラスに入ったのは70人。割合で見ると44.6%となっており、半数以上は苦しい戦いを強いられたことが分かる。
しかし、冷静に考えてみれば、監督が変更となる最大の理由は「チームの不振」が真っ先に思い浮かぶ。ほとんどの場合、苦しんだチームを引き継ぐということになるため、その中で4割を超えるAクラス率というのはむしろ健闘しているとも考えられるだろう。
今回も、クライマックスシリーズに進出した楽天の監督変更はサプライズだったが、広島はリーグ3連覇から4位に転落したことを受けて佐々岡新監督の登板が決まり、ヤクルトもリーグ最下位に沈んだことを踏まえ、課題である投手陣再建の救世主として高津新監督を抜擢している。課題を抱えるチームを上位争いに導くことができるか、彼らの手腕にかかる期待は大きい。
三木監督は球団初の大仕事なるか
▼ 「就任1年目」に優勝した監督
1950年:湯浅禎夫(毎日)
1960年:西本幸雄(大毎)
1961年:川上哲治(巨人)
1975年:古葉竹織(広島)
1981年:藤田元司(巨人)
1986年:阿南準郎(広島)
1986年:森 祗晶(西武)
1998年:権藤 博(横浜)
2002年:原 辰徳(巨人)
2002年:伊原春樹(西武)
2004年:落合博満(中日)
2004年:伊東 勤(西武)
2008年:渡辺久信(西武)
2012年:栗山英樹(日本ハム)
2015年:真中 満(ヤクルト)
2015年:工藤公康(ソフトバンク)
つづいて、見事に「就任1年目」でリーグ制覇を果たした16名がコチラ。ちなみに、1975年の広島はシーズン途中でジョー・ルーツ監督が辞任し、古葉監督はその後任としてチームを優勝へと導いている。
特に目立つのは西武の強さで、2000年代に入ってから立て続けに3人が優勝を達成。現在チームを率いる辻発彦監督も初年度は2位でその後にリーグ連覇と、しっかりピンチをチャンスに変えている。
また、逆に1人もいないかったのが阪神・オリックス・楽天の3球団。それだけに、今季の三木監督の手腕には注目が集まりそうだ。
当然ながら、初心者だろうと優しくしてはもらえないのが勝負の世界。歴戦の猛者が集うプロ野球界を生き抜くうえで、必要なのは“結果”を残すこと。一軍の監督には何よりも“勝利”が求められる。
今季から新たに一軍監督となる3人は、この荒波を乗り越えて名将への道を歩むことができるだろうか。
文=中田ボンベ(@dcp)