2年間で87選手を招集
年が明けて2020年。いよいよ“オリンピックイヤー”の幕が開けた。
1月10日には『テレビ朝日ビッグスポーツ賞』の授賞式典が行われ、昨年11月に行われた『WBSCプレミア12』で初優勝を果たした野球の日本代表“侍ジャパン”が「スポーツ大賞」と「放送大賞」をダブル受賞。チームを代表して式典に出席した稲葉篤紀監督は「年が明けて、オリンピックに向かって皆さんの期待に応えられるようにやっていきたい」と意気込みを語った。
今夏の『東京五輪』で限定的に復活する野球競技。稲葉監督は「競技者人口が減っている野球界にとっては大きな大会。金メダルを獲ることが非常に大事になってくる」ともコメント。今年は、2017年の『WBC』終了後から稲葉篤紀監督の下で強化してきたチームで“悲願”の「金メダル」獲得を目指すことになる。
その五輪に向け、稲葉監督がどのような選手たちを招集するのかは、ペナントレースの行方と共に多くの野球ファンにとっての関心事のひとつと言えるだろう。
プレミアの選手が土台に
稲葉監督は『プレミア12』のメンバーについて「非常に気持ちの強い選手の集まりだった」と評し、精神面の強度やジャパンへの思いといった部分の重要性を強調。「当然プレミアの選手が土台になる」との考えを、あらためて示した。そういった部分を考慮すると、稲葉監督がこれまでに招集していない選手から選出する可能性は低いと言えるだろう。
ちなみに、指揮官就任後の約2年間で稲葉監督が招集した選手は、辞退した選手を含めて87名。今年は、近年の侍ジャパンを支え、稲葉監督も信頼を寄せてきた秋山翔吾選手と筒香嘉智選手に加え、昨秋の『プレミア12』で先発を務めた山口俊投手が活躍の場をMLBに移すため、今夏の東京五輪には出場できない。
果たして、五輪の招集メンバー24名に選ばれる可能性がありそうなのは――。ここでは、これまでに招集された選手たちをポジション別に振り返りながら、球春到来を前にした現状を見ていきたい。まずは投手から。
稲葉Jで招集歴のある主な投手
【】=2019年所属球団の主な役割
()=稲葉ジャパンの最終招集
※ =プレミア12での主な役割
<プレミア12出場投手>
【先】岸 孝之(プレミア12)※先発・中継ぎ
【先】山岡泰輔(プレミア12)※中継ぎ
【先】山口 俊(プレミア12)※先発
【先】今永昇太(プレミア12)※先発
【先】大野雄大(プレミア12)※中継ぎ
【先】高橋 礼(プレミア12)※先発
【先】山本由伸(プレミア12)※中継ぎ
【中】大竹 寛(プレミア12/追加)※中継ぎ
【中】甲斐野央(プレミア12/追加)※中継ぎ
【中】中川皓太(プレミア12)※中継ぎ
【中】嘉弥真新也(プレミア12/追加)※中継ぎ
【中】田口麗斗(プレミア12)※中継ぎ
【抑】山﨑康晃(プレミア12)※抑え
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【先】千賀滉大(プレミア12/辞退)
【中】森原康平(プレミア12/辞退)
【抑】松井裕樹(プレミア12/辞退)
【抑】森 唯斗(メキシコ戦=19年3月)
【先】大瀬良大地(日米野球=18年11月)
【先】菅野智之(日米野球/辞退)
【先】上沢直之(日米野球)
【先】濵口遥大(日米野球)
【中】石川柊太(日米野球/辞退)
【抑】石山泰稚(日米野球/辞退)
【先】則本昂大(豪州戦=18年3月)
【中】石崎 剛(豪州戦)
気になる実力者たちの状態
『プレミア12』では、エースとしての活躍が期待された千賀滉大(ソフトバンク)の出場辞退、岸孝之(楽天)の体調不良という事態にも見舞われながら、山口俊(巨人)、高橋礼(ソフトバンク)、今永昇太(DeNA)が予選ラウンド、スーパーラウンドで先発し、韓国との決勝では岸が先発のマウンドに上がった。
その先発陣は、プレミアを辞退した千賀滉大(ソフトバンク)に加え、稲葉監督の下ではほとんどプレーしていないものの、WBCでの経験もNPBでの実績もある菅野智之(巨人)、則本昂大(楽天)という両右腕もいる。コンディションが万全であれば、選考の対象となることは間違いないだろう。ここに、稲葉ジャパンで抜群の安定感を誇る左腕の今永が続く形が有力か――。
リリーフ陣では、追加招集されたルーキーの甲斐野央(ソフトバンク)、オリックスでは先発として活躍しながら、セットアッパーとしての経験を買われて8回の男を務めた山本由伸、稲葉ジャパンとなってから投手では唯一、全試合に招集されている“守護神”山﨑康晃(DeNA)で形成する“勝利の方程式”は、首脳陣からの信頼度も高く、コンディションを崩さない限りは選出される可能性は高そうだ。
その他にも、『プレミア12』は出場辞退となり来季から先発に転向するものの、所属チームでの守護神を務め、WBCにも選出されていた松井裕樹もいる。山本の例を考えれば、後ろでの実績があり、奪三振率も高く、尚且つ左腕でもある松井は、貴重な戦力になり得るだろう。もちろん、先発ローテに入ることになれば、複数のイニングを任せることも可能になる。
もちろん、先発が早い段階で崩れた場合を考慮すれば、ロングリリーフも可能な投手を入れておきたいところ。普段先発をしている投手が途中からマウンドに上がる難しさは『プレミア』でも随所に見られただけに、そういった意味では先発と中継ぎ、どちらの経験もあるソフトバンクの高橋礼、左腕では田口麗斗(巨人)といったところは首脳陣からの信頼も高く、重宝されそうだ。
WBCやプレミアといった国際試合のロースターは28名だが、五輪は24名と一気に枠が狭まる。プレミアでは13名が選出された投手陣も、五輪では11~12名程度になるだろう。前述したように、ロングもショートもこなせる投手が選出される割合は高まりそうだ。もちろん過去の実績に加えて、直前の状態が重要になってくることは間違いない。
稲葉監督も「オリンピックというよりも、まずはシーズン。今年は3月20日という早めの開幕なので、しっかりと調整して開幕から波に乗っていけるというところが選手としては大事になってくる」とコメント。「まずはそこに向かってしっかりやってくれたら」とエールを送っているだけに、例年以上に各投手の仕上がり具合が注目を集めることになりそうだ。
▼ 稲葉J招集歴のある全投手