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“サイン盗み”のペナルティで注目 「ドラフト指名権剥奪」の重み

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カルロス・コレア

「ドラフト1巡目・2巡目」、どんな選手がいた?


 MLBは現地時間13日、電子機器を用いた組織的なサイン盗みを行っていたアストロズに対しての処分を発表。『監督とGMの職務停止』、『罰金500万ドル』に加え、今後2年間の『ドラフト1巡目・2巡目指名権の剥奪』を通達した。

 全米を揺るがす大事件…。今回発表されたペナルティについて、現地では賛否両論、様々な意見が出ている。なかでもドラフトの指名権剥奪に関しては、「海外も含めたFA補強で乗り切ることができるののでは」、「むしろ高額な契約金の削減になる」との意見も見受けられる。

 そこで、今回はメジャーリーグでいう「ドラフト1巡目・2巡目の選手」がどれほどの価値を持つ存在なのか、まずは今回処分を受けるアストロズ所属選手のドラフト順位を通して見てみたい。


【アストロズ所属のドラフト1・2巡目選手】

▼ 投手
L.マッカラーズJr.(12年1巡補/全体41位)
Z.グレインキー(02年1巡目/全体6位) ※KC入団
J.バーランダー(04年1巡目/全体2位) ※DET入団
B.テイラー(13年2巡目/全体51位) ※PIT入団

▼ 内野手
C.コレア(12年1巡目/全体1位)
A.ブレグマン(15年1巡目/全体2位)

▼ 外野手
G.スプリンガー(11年1巡目/全体11位)
K.タッカー(15年1巡目/全体5位)


 投手陣では、FA移籍の補完として全体41位で指名したマッカラーズJr.こそ自前の選手だが、グレインキーにバーランダーといったローテの中心を担うベテランたちは“移籍組”。昨季途中に加入したグレインキー獲得の際には、2017年の1巡目(全体15位)であるブクスカス投手をトレード要員に補強を進めた。

 一方、野手では常勝軍団の象徴ともいえる選手の名前が並ぶ。チームの顔であるスプリンガーとコレアに加えて、2015年には前年の全体1位指名選手との契約不成立の補償で得た指名権でブレグマンを獲得。同じく15年ドラフト1巡目で入団したタッカーは昨季22試合に出場した有望株で、野手の上位指名選手が現チームの核を担っているといっていい。


2019年は“全米1位右腕”が躍動


 では、アストロズからメジャーリーグ全体に目を向けてみるとどうか。昨季のタイトルホルダーのドラフト巡を調べた結果が下記の通り。

【2019年・MLBタイトルホルダー】
※(カッコ)内は入団方法、ドラフト年・指名巡・入団先
☆=ドラフト1・2巡目入団選手

▼ アメリカン・リーグ
☆打 率 T.アンダーソン(13年1巡目→CWS)
・本塁打 J.ソレール(12年アマFA→CHC)
・打 点 J.アブレイユ(13年アマFA→CWS)
・盗 塁 M.スミス(12年5巡目→ATL)
☆最多勝 J.バーランダー(04年1巡目→DET)
☆防御率 G.コール(11年1巡目→PIT)
☆奪三振 G.コール(11年1巡目→PIT)
・セーブ R.オスーナ(11年アマFA→TOR)

▼ ナショナル・リーグ
☆打 率 C.イェリチ(10年1巡目→MIA)
☆本塁打 P.アロンソ(16年2巡目→NYM)
☆打 点 A.レンドン(11年1巡目→WSH)
・盗 塁 R.アクーニャJr.(14年アマFA→ATL)
☆最多勝 S.ストラスバーグ(09年1巡目WSH)
・防御率 柳賢振(12年ポスティング→LAD)
・奪三振 J.デグロム(10年9巡目→NYM)
・セーブ K.イェーツ(09年アマFA→TB)


 両リーグ16部門のうち、実に8部門は1・2巡目指名でプロ入りした選手たちだった。

 このオフにヤンキースとの大型契約が話題になったゲリット・コールは、2011年全体1位でパイレーツに入団。メジャーデビューを果たしたプロ2年目にいきなり2ケタ勝利を挙げて“全米ナンバーワン”の実力を結果で示すと、2017年オフにアストロズへFA移籍。昨季は20勝5敗、326奪三振という驚異的な成績を挙げて投手二冠を達成している。


 ちなみに、ドラフト上位の活躍は昨年だけではない。2018年はバーランダーが最多奪三振。2011年の戦力均衡ドラフト1巡目(全体52位)でレイズ入りしたブレイク・スネルが最多勝と防御率の二冠に輝き、サイヤング賞も受賞。ナショナルリーグに至っては、イエリチ(打率)にアレナド(本塁打)、バエズ(打点)、ターナー(盗塁)と、主要打撃部門を1巡目、2巡目の上位入団選手たちで独占していた。


シーズンMVPは上位指名がずらり


 過去10年間のシーズンMVPをみると、上位指名の優勢はさらに顕著に。

 2012年に三冠王に輝いたミゲル・カブレラ、アストロズの“小さな大打者”ホセ・アルトゥーベというベネズエラ出身の2人はドラフト外入団ながら、ベリンジャー(13年4巡目)とベッツ(11年5巡目)を除く残りの15選手(複数回受賞含む)は全て1巡目か2巡目の選手。「メジャーの舞台で活躍するのは一握り」と言われる中でも、ドラフト上位の選手がスター候補筆頭であることは間違いなさそうだ。


【過去10年のメジャーリーグMVP】

▼ 2010年
ア:J.ハミルトン(99年1巡目/全体1位)
ナ:J.ボット―(02年2巡目/全体44位)

▼ 2011年
ア:J.バーランダー(04年1巡目/全体2位)
ナ:R.ブラウン(05年1巡目/全体5位)

▼ 2012年
ア:M.カブレラ(09年アマチュアFA)
ナ:B.ポージー(08年1巡目/全体5位)

▼ 2013年
ア:M.カブレラ(09年アマチュアFA)
ナ:A.マカッチェン(05年1巡目/全体11位)

▼ 2014年
ア:M.トラウト(09年1巡目/全体25位)
ナ:C.カーショウ(06年1巡目/全体7位)

▼ 2015年
ア:J.ドナルドソン(07年1巡目追補/全体48位)
ナ:B.ハーパー (10年1巡目/全体1位)

▼ 2016年
ア:M.トラウト(09年1巡目/全体25位)
ナ:K.ブライアント(13年1巡目/全体2位)

▼ 2017年
ア:J.アルトゥーベ(06年アマチュアFA)
ナ:G.スタントン(07年2巡目/全体76位)

▼ 2018年
ア:M.ベッツ(11年5巡目/全体172位)
ナ:C.イエリッチ(10年1巡目/全体23位)

▼ 2019年
ア:M.トラウト(09年1巡目/全体25位)
ナ:C.ベリンジャー(13年4巡目/全体124位)


 数年の低迷期を経て、中長期的なドラフト戦略で上位に躍進するチームが出てくるメジャーリーグ。

 現在ピークを迎え、再編期が近づいているとも言われているアストロズが、ここにきて規則違反のペナルティーでドラフト上位の指名権を剥奪された。当然、海外やアマチュアのFAを新戦力として耐えしのぐことも考えられるが、将来を担うであろうスター候補生を4人獲得できないことが球団にとって痛手となるのは間違いない。

 フライボール革命にドラフト戦略など、他球団から時代の先駆者として見られていたアストロズが、この窮地からどのような歩みを見せるのか、注目だ。

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