西武との「202」の差
総得点544(リーグ6位)、チーム打率.242(同6位)、出塁率.309(同6位)、長打率.353(同6位)、OPS.662(同6位)。チーム本塁打102(同5位)、得点圏打率.257(同5位)。
いま列挙したのは、昨季のオリックスにおける、攻撃面の成績とリーグ内の順位である。
昨季は61勝75敗7分でリーグ最下位。投手陣では山岡泰輔が最高勝率、山本由伸が最優秀防御率のタイトルを獲得するなど、若き両輪が頼れる先発として一本立ち。秋には侍ジャパンの一員として、プレミア12制覇に貢献。打者でも吉田正尚が2年連続でベストナインに輝く活躍を見せ、こちらも世界一の一員に。投打に球界を代表する選手を擁しながら、チームが苦しい成績に終わった背景には、冒頭で列挙した“打線の弱さ”が最大の要因に挙げられる。
単純に比較はできないとはいえ、リーグ連覇を果たした西武の総得点は756。同じ試合数を戦いながら、「202」もの差が出た。いくらディフェンス陣が頑張っていても、点が取れなければ勝利はないというのはどのスポーツも同じだ。
ただし、昨季は最下位に沈んだ一方、投手陣に楽しみな若手が次々と台頭。今季もニュースターが誕生しそうな気配が漂っているだけに、求められるのは打線の強化。逆にもしこれが噛み合えば、一気の上位進出というのも見えてくる。
吉田・ジョーンズを支える男は?
そんな中、弱点解消の目玉として獲得したのがアダム・ジョーンズ。メジャー通算1939安打、282本塁打を誇る超大物助っ人で、西村徳文監督は「3番・吉田正尚、4番・ジョーンズ」のコンビを中軸に据えることを早くから明言。オープン戦初戦となった2月23日のソフトバンク戦で、早速その打順を披露している。
この試合ではともに無安打と期待に応えることはできなかったが、実績のある両者だけに首脳陣からの信頼は不変。その直後、ジョーンズがコンディション不良から二軍に合流するというアクシデントもあったが、すでに打撃練習を再開しているという情報もあり、近くに一軍復帰できる見込みとの報道も出ている。
ただし、長いシーズンにこういったアクシデントはつきもの。今季のオリックスを象徴する新コンビは他球団にとって大きな脅威になるとはいえ、ジョーンズひとりで得点力が大幅に上がるかというと、そんなにかんたんなことでもない。課題解消のためには、彼らの周りの選手たちの“底上げ”が必要不可欠だ。
逆襲のカギを握るのは…?今季のオリックスにおけるキーマンとして注目したいのが、プロ15年目を迎えるベテラン・T-岡田である。
15年目の逆襲へ…
履正社高から2005年の高校生ドラフト1巡目でオリックスに指名された男は、早くから“浪速のゴジラ”として大きな注目を集め、将来の左の大砲候補として大きな期待をかけられていた。
プロ入り直後はやや苦しむ姿も見られたものの、2009年に43試合に出場してプロ初アーチを含む7本塁打をマークすると、その経験を糧に眠っていた才能が一気に開花。翌2010年は129試合の出場を果たすと打率.284・33本塁打・96打点の大ブレイクを見せ、プロ5年目にして本塁打王のタイトルも獲得する。
この年シーズン30本塁打を放ったのはパ・リーグで唯一で、22歳のシーズンでの本塁打王獲得はあの王貞治氏以来で48年ぶりという快挙。誰もが球界を代表するスラッガーへと成長していく未来を期待したが、以降は好不調の激しさが目に付く不安定なシーズンが続く。
故障や度重なるフォーム変更によって本塁打を減らしていった一方、2014年には24本塁打、2017年には31本塁打を放って自身7年ぶりのシーズン30発越えを達成。数年に一度は復活の兆しを見せる一方、昨季は20試合の出場に留まりわずか1本塁打と大スランプ。そのパワーは誰もが認めるものを持ちながら、活躍を続けることができない。
昨オフにはFAの動向に注目が集まったが、大幅な減俸を受け入れての残留を決断。その裏には、残留を強く望むファンの声があったことも明かしている。
どんな時も自分の活躍を信じ、待ってくれているファンの期待に応えるために復活したい…。そんな想いの強さから、オフには異例のウインターリーグに参戦。プエルトリコの地で自らと向き合い、リーグ2位タイとなる4本塁打を放つなど、トンネル脱出への手ごたえを掴んだ。
今春のキャンプでも一軍スタートを勝ち取り、2月の実戦から本塁打を放つなど、順調な仕上がりぶりをアピール。2月29日に行われた日本ハムとのオープン戦でも、開幕投手に内定しているエースの有原航平から完ぺきな一発をライトスタンドへ叩き込んでおり、好調をキープしている。
登録こそ外野手となっているものの、29日の試合も一塁でのスタメンとなっているように、一塁か指名打者での起用が濃厚。となると2年目の助っ人スティーブン・モヤや、新助っ人のアデルリン・ロドリゲスといった打撃自慢の外国人選手との戦いは避けられず、やはり“打ち勝つ”しかない。
ここに来てロドリゲスが故障で離脱、開幕も微妙な状況となってきているなか、T-岡田が調子の良さを発揮しているのはチームにとって心強いことだろう。どうかこの好調を維持したまま開幕を迎えてもらいたいところだ。
残留を後押しした「ファンの声」に“結果”で応える──。T-岡田の“15年目の逆襲”に注目だ。
文=尾崎直也