経験豊富なベテランが加わる
「千葉ロッテマリーンズの一員となれることを嬉しく思います。今は感謝の気持ちしかありません。とにかくチームの優勝に少しでも貢献できるように精一杯、プレーをさせていただきます」(鳥谷敬)。
マリーンズに頼もしいベテランが加わった。
鳥谷は03年自由獲得枠で阪神に入団し、2004年9月6日のヤクルト戦から18年5月27日の巨人戦にかけて1939試合連続試合出場。17年には通算2000安打を達成するなど、阪神のみならず球界を代表する選手だ。縦縞からピンストライプにユニフォームを変えて、新しいプロ野球人生に挑む。
マリーンズの内野手事情は
マリーンズをみると、チーム最年長が今年の1月で40歳となった細川亨、次いで84年生まれの大谷智久(35)、ハーマン(35)、野手陣は85年世代の荻野貴司(34)、清田育宏(34)と続いていく。内野手のチーム最年長は、87年世代のレアード(32)と細谷圭(32)だ。
内野手事情は、昨季チームトップの32本塁打を放ったレアード、2年連続24本塁打を放った井上晴哉、将来の4番候補・安田尚憲、二遊間には中村奨吾、藤岡裕大、三木亮、平沢大河などがいる。
井口資仁監督は鳥谷に「内野を全部守ってもらいたいなと思っています」と、本職のショートだけでなく、セカンド、サード、ファーストなども守ってもらうことを示唆した。
若手はレギュラーを奪う好機も
若手に目を向ければ、オフにサードやファーストを守り、リーダーとしてチームを引っ張ってきた鈴木大地が楽天へ移籍し、若返りを進めるチームの中で、開幕一軍に向けたアピールだけでなく、レギュラーを奪う絶好の機会だった。
しかし、内野陣に限っていえば、突き抜けて活躍している選手が少ない状況。リーグ優勝を目指すために、そういったところも、今回の鳥谷の補強に繋がったのではないだろうか。
▼ 主な若手内野手の一軍練習試合、オープン戦成績
福田光輝:17試 率.241(54-13)本1 点7
安田尚憲:16試 率.191(47- 9)本1 点10
西巻賢二:16試 率.182(22- 4)本0 点0
香月一也:12試 率.182(22- 4)本1 点4
※3月7日時点
松本球団本部長は「キャンプ、練習試合、オープン戦と戦ってきまして、その中で内野のところの補強、厚みをもたせたいというのがひとつとして挙げられます」と鳥谷を獲得した経緯を説明する。
3月10日に獲得発表となったことについては、「トータル的なところで、このタイミングになりましたけど、1年を通して補強をしていくのがフロントの仕事だと思います。去年のオフから続けていくなかで、このタイミングが、一番ベストなのかなと思います」と話した。
球団は“練習姿勢”を評価
「(野球に取り組む姿勢については)みなさんご存知だと思いますけど、そういうところが若い選手に色々と見せていって欲しい」(松本球団本部長)
「若い頃から一緒に自主トレをやっていて、若手を引っ張っていく力はありますし、練習量はものすごい。現役のなかでも一番だと思っている。良いものを後輩に引き継いでいってもらえたらなと思います」(井口資仁監督)
松本球団本部長、井口監督は鳥谷の“野球に取り組む姿勢”を高く評価した。当然“戦力”として活躍するだけでなく、鳥谷にはこれまでプロ16年間で培ってきた経験を若手選手に練習や言葉で伝えていく役割も期待される。
FAで鈴木大地、トレードで涌井秀章が楽天へ移籍するなど、投手、野手ともに急激な若返りが進む中で、今年の6月で39歳を迎える鳥谷の補強。裏を返せば、若手内野陣の突き上げが少なかったということなのかもしれない。
若手内野陣には、鳥谷の練習姿勢などを学んでいくと同時に、今以上に覚悟を持って臨まなければならない。一方、鳥谷には、“若手”の壁になるような働きを見せてほしいところ。若手とベテランがレベルの高い争いを見せて、2005年以来のリーグ優勝、2010年以来の日本一を目指していく。
取材・文=岩下雄太