不動の4番への道
3月15日(日)をもって2020年の『春季非公式試合』、オープン戦の全日程が終了。本来であれば20日(金)から新シーズンの幕開けというところだったが、世界的に拡大している「新型コロナウイルス」の脅威から、今シーズンの開幕は延期となった。
2020年のオープン戦で首位打者に輝いたのが、阪神の大山悠輔。つくば秀英高から白鴎大を経て、2016年のドラフト1位で阪神に入団したプロ4年目の内野手だ。
入団時から将来の主砲として大きな期待を受け、プロ3年目の昨季は主に4番として143試合に出場。打率.258(538-139)・14本塁打・76打点という成績だけ見ると4番打者としては多少物足りなさを感じるところもあるが、得点圏打率は.318と上々の成績を残している。
これから不動の4番へ……という歩みに期待がかかるなか、今季はライバルが多数。オープン戦でも、4番に座ったのは新助っ人のジャスティン・ボーアが最多の8試合に、来日2年目のジェフリー・マルテが2試合。大山も4番スタメンが2試合あったが、いずれも助っ人が出場していない試合だった。
今季の阪神は、メジャーでシーズン20発以上を3度記録している左の大砲ボーアに、昨季韓国リーグで打点王に輝いたジェリー・サンズ、そして昨季からプレーしているマルテによる“MBS砲”が打線の顔。オープン戦でも、この3人がクリーンナップを占めるパターンを試しており、その時は大山はスタメンを外れている。
今季の大山は、そんなライバルたちに“打力”で勝負を挑み、自身の存在価値を示していかなければならないのだ。
厳しい環境が選手を育てる?
そんな中、大山はオープン戦で11試合に出場。規定打席に到達して打率.378(37-14)は12球団トップの成績だった。本塁打3も全体の3位タイ。出塁率と長打率をあわせたOPSは1.047と、チーム内のライバルたちをまとめて負かす堂々たる数字である。
“不動の4番”への道は、かんたんなものではない。宿敵・巨人の4番には23歳の岡本和真がどっしりと君臨しているが、怖いものなしでフルシーズンを走り抜いた「4番1年目」の2018年を経て、昨季は苦しみながら、一時は4番の座を明け渡しながらも最後は定位置を取り戻し、「4番3年目」になる今季は押しも押されもせぬ主砲として、原辰徳監督から全幅の信頼を寄せられている。
自らの立場を守るためには、継続して結果を残していくしかない。そして、のしかかるプレッシャーや責任が大きければ大きいほど、それを乗り越えた時のジャンプはより高くなるはずだ。
オープン戦・首位打者という勢いのままに、並みいるライバルたちを押しのけて「大山悠輔」の名がスターティング・ラインナップの4番目に定着した時、虎の背番号3はいよいよ“不動の4番”になる。
オープン戦の中継では、球団のレジェンドOBから苦言を呈される場面も多々あったが、それも期待の大きさがあってこそ。首脳陣、球団OB、そしてファンの想いに応え、自らの居場所を手中に収めることができるだろうか。
文=尾崎直也
近年のオープン戦・首位打者
▼ 2016年
.400 鈴木大地(ロッテ)
[シーズン成績] 143試 率.285(501-143) 本6 点61
▼ 2017年
.375 アウディ・シリアコ(DeNA)
[シーズン成績] 12試 率.074(27-2) 本0 点0
▼ 2018年
.386 内田靖人(楽天)
[シーズン成績] 58試 率.198(177-35) 本12 点25
▼ 2019年
.388 楠本泰史(DeNA)
[シーズン成績] 39試 率.208(72-15) 本1 点6
▼ 2020年
.378 大山悠輔(阪神)
[シーズン成績] ??