◆ 下半身を意識したキャッチボール
3月20日に開幕予定だったプロ野球は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が無期延期となった。本来であれば、プロ野球が開幕し、多くのファンが球場で熱戦を楽しんでいたことだろう。私たちも取材自粛となるなか、これまでの取材を振り返りつつ、マリーンズ投手陣のキャッチボールに注目していきたいと思う。
プロ野球の解説者の多くは、キャッチボールの重要性を説く。そのなかで現役のマリーンズ投手陣は、キャッチボールのときにどんなことを考え、意識して投げているのだろうかーー。
取材を進めていると、“下半身”を意識してキャッチボールに取り組む投手が多いように見える。昨季チームトップタイの8勝を挙げた種市は、キャッチボールのなかで「上半身の無駄な動きをなくすためと、下半身を使わないと。だから下半身主導のキャッチボールをしています」と上体を低くして、下半身を意識した練習を取り入れている。
18年秋季キャンプで大隣憲司二軍投手コーチから“下半身主導の投球”の重要性を教わった土肥星也も、「キャッチボールから意識している」と昨年2月の取材でこのように話していた。
◆ 体を大きく使ってキャッチボール
マリーンズ投手陣のキャッチボールを見ると、試合ではセットポジションから投球しているが、キャッチボールではワインドアップで投げたり、ノーワインドアップで投げている投手もいる。
1月のロッテ浦和球場で行った自主トレのキャッチボールで、ノーワインドアップで投げていた大谷智久に、今季はノーワインドアップで投げるんですかと質問すると、「そういうわけではないですよ。去年もずっとキャッチボールをやっていましたが、練習のバランスを考えています」と教えてくれた。
南昌輝もセットポジションで投げていた昨年8月のキャッチボールで、振りかぶって投げていたので聞いてみると、「リズムを確認しようと思って。小谷さんが投手コーチを務めていた時から調子がわるいときに、教わってきていて思い出してみようと思ってやろうと思います。試合に入ったときは逆に何も考えないようにしようと思っていて、練習のときとかは考えるようにしています」とのことだった。
二木康太も「体を大きく使おうと思って、たまにやっていますね」とキャッチボールの途中に、振りかぶって行うこともある。
その他、試合はセットポジションから投げる投手が、キャッチボールで振りかぶって投げている理由の多くに“体を大きく使う”と話す選手が多かった。
◆ 変化球を教わることも
キャッチボールでは自身の感覚を取り戻したり、キャッチボールパートナーの変化球を教わることもある。
昨年キャンプ、オープン戦でなかなか調子が上がらなかった岩下大輝は、「キャッチボールからしっかり指先の感覚、腕振る強さ、フォーム固めをしっかりできたのが良かったのではないかなと思います」と調子を取り戻し、春先の好調に繋げた。
何度も記しているが、種市は「有吉さんとキャッチボールをずっとしていて、スライダーが捕りにくいなと思ったし、ストレートっぽいなと聞いて、教えてもらいました」と当時のキャッチボールパートナーだった有吉優樹からスライダーの投げ方を教わった。
プロ野球が開幕を迎え、球場に足を運べる日が訪れたときには、試合前練習に臨む選手たちのキャッチボールに注目すると、いろいろなことが見えてくるかもしれない。
文=岩下雄太